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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【51】 2005年3月発行

垂直的産業内貿易と直接投資―日本の電機産業を中心とした実証分析垂直的産業内貿易と直接投資―日本の電機産業を中心とした実証分析
石戸光   伊藤恵子   深尾京司   吉池喜政

経済統合が進展するに伴い、東アジア域内貿易のパターンは複雑な様相を呈しつつある。すなわち従来型の産業間貿易が依然主流であるものの、比率においては近年低下しており、代わって水平的および垂直的な産業内貿易が重要度を増している。本稿ではまず東アジア域内貿易における垂直的産業内貿易の動向を欧州域内貿易のケースと比較し、東アジアにおいては垂直的産業内貿易の増加傾向が顕著であることを示す。特に日本の電気機械産業を例として詳細に分析したところ、日本と東アジア諸国との垂直的産業内貿易の増加は、当該地域における日系多国籍企業の活動の拡大と強い相関があるのではないかと推測された。そして、計量経済分析を行い、東アジアにおける近年の垂直的直接投資の活発化が垂直的産業内貿易の拡大に寄与しているとの結果を得た。 .

地方債元利償還金の交付税措置の実証分析―元利補給は公共事業を誘導したか地方債元利償還金の交付税措置の実証分析―元利補給は公共事業を誘導したか
土居丈朗   別所俊一郎

地方債の償還に際して中央政府から行われる明示的な元利補給の規模と、それが地方政府の行動に与える効果について検討する。地方債の元利償還金は地方交付税交付金額算出の基礎となる基準財政需要額の算定に影響を与え、地方交付税を通じた異時点間・地域間の所得再分配が明示的に行われている。本稿の目的は、元利償還への補給の規模を明らかにするとともに、このような措置が地方政府の行動に与えた効果について計量的に分析することにある。地方債は、基本的には公共投資をはじめとする適債事業に用いられる特定財源であるから、地方政府の行う公共投資に焦点を絞る。そのために、これまで利用されることの少なかった基準財政需要額の内訳のデータを用いた分析を行った。地方交付税交付金を通じた明示的な地方債の元利補給については、その規模が近年では交付税交付金の30%、公債費支出の40%をこえる規模に達していることが示された。また、このような元利補給が、公共投資を増加させていることが示唆された。 .

交付税ジニ係数の悪化要因―GAによる論理的外れ値の捕捉交付税ジニ係数の悪化要因―GAによる論理的外れ値の捕捉
高橋朋一

近年の地方分権の潮流に従い、地方交付税に耳目が集まっている。従来から地方交付税の財政調整効果については多くの研究がある。本稿でもジニ係数を用いた財政調整効果の分析を行い、時系列として比較した。その結果、1993年以降、地方交付税は地域間の財政力を不均等にする方向に作用していることが分かった。  そこで本稿ではジニ係数悪化の原因を探るため、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた新たな検証方法を提示する。まず2000年のデータを用いてジニ係数を基準として、データの持つ全体特性をGAによって導出する。次にその特性から外れる可能性の高いデータを「論理的外れ値」と定義する。最後に論理的外れ値を除去したデータにおけるジニ係数を検討する。  以上の検証の結果、地方交付税のジニ係数を逆転させている要因となっているのは3250団体のうち149団体に過ぎないことが判明する。この結果、地方交付税の財政調整は均等化の方向であるが、少数の団体に対する交付税がゆがみを持っている可能性があることが分かった。 .

育児資源の利用可能性が出生力および女性の就業に与える影響育児資源の利用可能性が出生力および女性の就業に与える影響
吉田浩   水落正明

女性が出産・育児と就業を両立させるためには、女性自身に加えて他の代替的な育児資源の利用が必要となる。そこで本稿では、育児資源のうち認可保育所と夫婦の母親による援助に注目し、これらの利用可能性が出生力と女性の就業に与える影響を明らかにした。その際、特に何人目の出産かという出産段階ごとに推定を行った。インターネットを通じて独自に収集した個票に基づいて実証分析を行った結果、以下の知見が得られた。  夫婦の母親の同居または近隣居住は、各出産段階での出産を促進する。その一方、認可保育所定員の多さは、第1子と第3子の出産には影響を与えないが、第2子の出産を促進することが示され、出産段階によって異なる影響力を持つことが明らかになった。近年、第2子の出産が減少していることからも、認可保育所定員の増加は、限定的ではあるが有効な少子化対策のひとつであることを、本稿の分析結果は示している。また、夫婦の母親の同居または近隣居住は、各出産段階でおおむね女性の就業を促進するが、認可保育所定員が女性の就業に与える影響は確認されなかった。 .

1927年昭和金融恐慌下の銀行休業要因1927年昭和金融恐慌下の銀行休業要因
横山和輝

本稿は1927年昭和金融恐慌下の銀行パニックにおける銀行の休業要因を分析した。銀行の休業要因には銀行のファンダメンタルズ悪化によるものと突発的な流動性不足によるものと2つに大別できるが、本稿ではそれぞれを裏づける実証結果を得た。前者の要因については、非都市部に本店を置く銀行、もしくは預金規模で下位グループに属する銀行を対象とした分析で収益性指標が休業確率に有意に効いていたことから確認できる。都市部において特定の事業会社に固定的な貸出を行う銀行の淘汰が銀行パニックを通じて進行していたことを示唆する結果も得ている。この点では昭和金融恐慌下の銀行パニックを市場規律としてとらえる先行研究の把握はそれなりの妥当性をもつものと考えられる。ただし、預金規模で上位グループに属する銀行の中には収益性指標に関わりなく流動性不足により休業に追いやられたものも存在していた。.

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