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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【59】 2008年7月発行

第59号のポイント第59号のポイント
『日本経済研究』編集委員会

 『日本経済研究』の読みどころをやさしく紹介。

資本のヴィンテージ、研究開発と生産性―複数資本財の場合の投資スパイク分析  資本のヴィンテージ、研究開発と生産性―複数資本財の場合の投資スパイク分
徳井丞次   乾 友彦   落合 勝昭

企業にとって大型の設備投資を実施した際に最新の技術の導入がなされるという想定のもと、企業の財務データから作成したパネル・データから、複数の資本財について大型投資の時期(投資スパイク)を定義し選び出した。こうした企業ごとの 複数の資本財についての投資スパイクのデータから経年ダミーを作成し、新技術導入後の生産性効果を計測する変数として用いた。この結果、投資スパイク後から生産性効果が逓減していることが分かった。このことは、資本に体化された形で実現する技術進歩も無視できないこと、また少なくともその一部は大型投資に伴って企業に導入されることを支持するものである。また、経年ダミーによって捉えられる生産性効果の逓減は、必ずしも企業に導入された設備の年々の老朽化に伴って一定のペースで発生するのではなく、経過年数3年目頃までは急速に起こるが、その後は生産性低下に歯止めがかかることが観察された。これは、資本の老朽化による生産性押し下げ効果を捉える際に、従来用いられている資本の平均ヴィンテージを使うことの限界を示唆した結果と考えられる。.

Malmquist 指数を用いた地方空港の生産性変化の計測Malmquist 指数を用いた地方空港の生産性変化の計測
尾関 淳哉

本稿では、航空会社に路線自由化が認められた2000 年の航空法改正前後の期間における地方空港の生産性変化を計測し、航空法改正の影響を検証するとともに、地方空港の生産性変化に影響を及ぼす要因を分析した。計測の結果、地方空港は年平均1%の生産性低下を示しており、その要因が技術効率性低下の影響を反映したものであることが明らかになった。また、要因分析を行い、分析期間中に羽田空港への便数を増加させた空港が生産性を上昇させ、便数を減らした空港が生産性を低下させていることが明らかになった。この結果は、航空需要が羽田に集中するという現状の下では、発着枠規制が設けられている羽田空港の発着枠を拡大し、地方空港において羽田便を増加させることが、地方空港の生産性水準上昇に資することを裏付けるものとなった。 .

日本企業の完全子会社化に関する実証研究日本企業の完全子会社化に関する実証研究
使用データの概要使用データの概要
大坪 稔   三好祐輔

本研究は、日本企業がなぜ子会社を対象とした完全子会社化を実施しつつあるのかという問題について特に上場子会社に焦点をあてた実証分析を実施した。上場子会社に関連した先行研究をもとに、完全子会社化実施の動機として情報の非対称性仮説、リストラクチャリング仮説、低成長仮説、利害対立仮説、敵対的M&A仮説、の5 つの仮説を提示し、これらに関する実証分析を行った。分析の結果、情報の非対称性仮説、低成長仮説、敵対的M&A仮説については支持する結果を得ることができなかったのに対し、リストラクチャリング仮説、利害対立仮説については一部支持する結果が得られた。さらに、これらの仮説のうち、親会社の株主価値を高める可能性があるのはリストラクチャリング仮説のみであることについても明らかになった。 .

日本の教育の不平等―教育ジニ係数による計測日本の教育の不平等―教育ジニ係数による計測
北條雅一

本稿の目的は、我が国における教育の不平等を数量的に把握し、その近年の傾向を検証することである。1950年代以降、中等・高等教育進学率は上昇を続け、国民1人当たりの平均就学年数は増加したが、高学歴化が進展する中で教育の分配が平等化したのか否かという点に関する分析はこれまでおこなわれてこなかった。本稿では、国勢調査の集計結果から就学年数のジニ計数を算出して教育の不平等度を計測し、その時系列の変化の要因および男女間、年齢階層間、都道府県間の比較をおこなった。その結果、(1)我が国の教育分配の不平等度は全体としては低下傾向にあるが、一律に教育の平等化が進展しているわけではない、(2)女性は男性に比べて教育の分配が平等である、(3)平均就学年数と教育ジニ係数の間には逆U字型の関係がある、の3点が明らかとなった。 .

若年就業者の非正規化とその背景:1994−2003年若年就業者の非正規化とその背景:1994−2003年
使用データの概要使用データの概要
周 燕飛

本稿は個票データを用いて、若者が非正社員になる理由、非正社員になる若者の属性、および近年の非正社員増加の要因について分析を行った。その結果、まず、「不本意」に非正社員になった若者が近年増えていることや、同一年齢階層でも、就職時期が後になればなるほど非正規就業率が高いことなどがわかった。さらに、若者非正規就業率が上昇する要因を分解した結果、マクロ的な景気変動や労働需要の変化と考えられる共通変動要因が、若年非正規就業率の増加 に大きな影響を及ぼしている可能性があることが分かった。それ以外では、労働力供給側における女性や未婚者の増加も目立った原因の1つである。 .

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