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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【62】 2010年1月発行

第62号のポイント第62号のポイント
『日本経済研究』編集委員会

『日本経済研究』の読みどころをやさしく紹介。

使用データについてのガイドライン使用データについてのガイドライン
『日本経済研究』編集委員会

 当編集委員会では、一般への公開が難しい個票データを用いた論文を受け付ける際、新たなガイドラインを設けることとした。投稿者に「データの概要」について一定の開示を求めることが柱である。背景には、(1)個票データを用いた投稿論文が増加している、(2)それらのデータには往々にして利用制限があり、結果の再現性が審査過程で十分吟味しにくい、(3)査読学術誌としては、一定のルールを設けることにより、論文間で不公平のない対応をとるべきである――などの点がある。
 本ガイドライン策定にあたっては、海外のトップ・ジャーナルにおける対応例を参考にしつつ、日本におけるデータ利用環境も考慮に入れ、実情に即した枠組みをつくる点を重視した。ここでは、同ガイドラインの内容と、策定に至った背景・考え方を紹介する。.

ISO14001 認証取得の決定要因とトルエン排出量削減効果に関する実証研究ISO14001 認証取得の決定要因とトルエン排出量削減効果に関する実証研究
データの概要データの概要
岩田 和之  有村 俊秀  日引 聡

 環境に対する企業の自主的取組みを促進する政策手段の1 つとして自主的アプローチが大きな関心を集めている。自主的アプローチの一例として、ISO14001 認証制度がある。これは、企業や事業所内に環境マネジメントシステムを構築することによって、排出される環境負荷を低減させることを狙っており、日本を始めとして多くの国で導入されている。本稿では、この制度を対象に、ISO 取得決定式とトルエン排出決定式を推計することによって、事業所のISO 認証取得に影響を及ぼす要因を明らかにし、トルエンを対象に、その有効性を検証した。その結果、規模の大きい事業所や上場している企業に属する事業所ほどISO の認証取得のインセンティブが強いことが明らかとなった。また、ISO 認証取得している企業ほどトルエン排出量が少ないことが明らかとなった。このことから、日本においてISO はトルエンの排出量の削減に有効に機能しているといえる。.

動学的租税競争と公的資本形成 ――非対称的な公的資本の生産力効果を考慮した2地域世代重複モデルによるシミュレーション分析動学的租税競争と公的資本形成 ――非対称的な公的資本の生産力効果を考慮した2地域世代重複モデルによるシミュレーション分析
田中 宏樹  日高 政浩

 本稿では、Zodrow and Mieszkowski(1986)およびWilson(1986)等で示された対称小地域における静学的租税競争モデルを、公的資本の生産力効果における地域間の非対称性と資本蓄積の存在を組み入れた非対称大地域における動学的租税競争モデルに拡張し、課税政策の選択が非対称均衡に及ぼす影響について、2 地域世代重複モデルを用いたシミュレーション分析により検証する。生産要素として寄与する公的資本は、地方政府の資本税および中央政府の定額税をもとに形成されるものとする。
 生産性の非対称性と資本蓄積の動学過程を考慮した結果、定額税を老年期のみに課税する場合には、先行研究と同様に最適資本税率がゼロになるが、定額税を若年期と老年期とに均等課税する場合には、最適資本税率が正となる場合があることが確認された。さらに、非対称均衡において、最適解(社会的厚生最大化点)よりも2 地域いずれか一方の厚生を高める複数の協力解が存在しうることが示された。.

有担保融資と無担保融資が産出物市場に与える影響 ――企業の資金調達行動を通じて有担保融資と無担保融資が産出物市場に与える影響 ――企業の資金調達行動を通じて
友田 康信  岡村 誠

 本稿は、産出物市場において独占的に行動する企業を考える。有担保融資と無担保融資による借入契約が、借り手である企業の費用最小化行動を通じて、企業の費用関数の形状を決定することを示す。さらに、企業の借入契約の選択が産出物市場の均衡と経済厚生に与える影響を分析する。自己資金の少ない企業が金融機関から有担保融資により借り入れを行うと、担保の範囲内でしか信用を受けられないという借入制約に直面する。企業が生産要素である資本財を担保にする時、生産要素投入比率にゆがみが生ずる。一方、企業が金利の高い無担保融資により融資を受けると限界費用が上昇する。企業は、自己の利潤を最大化する借入契約を選択する。しかしながら、そのような企業の借入契約の選択が消費者と経済全体にとって望ましいものであるとは限らず、経済厚生を損なう可能性がある。.

最適課税論からみたガソリン税率 ――日米英比較最適課税論からみたガソリン税率 ――日米英比較
川瀬 晃弘

 ガソリン税の税率の水準については、外部性も考慮して望ましい税率のあり方を検討すべきである。本稿では、外部費用を負担する環境税の観点から、Parry and Small(2005)の枠組みと金本(2007)で使用された外部費用のパラメータを用いて、我が国における望ましいガソリン税の税率を模索する。具体的には、税目としてガソリン税と労働所得税のみが存在する世界を想定し、税収一定のもとで経済厚生を最大にするようなガソリン税および労働所得税の税率を求める。分析の結果、得られた最適なガソリン税率は、ファーストベストでは118.3 円/ℓ、労働所得税が存在するセカンドベストでは142.4 円/ℓ となり、現行の53.8 円/ℓ と比較すると約2.2〜2.6 倍の水準であることがわかった。外部費用の推計値など不確定な要素が大きいため推定値はかなりの幅をもって解釈する必要があるが、外部費用負担の観点からは揮発油税などの暫定税率を廃止してガソリン税の税率を引き下げるという政策を正当化できないことが明らかになった。.

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