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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【73】 2016年1月発行

終身年金バイアスと公的年金満足度・金融資産保有への態度終身年金バイアスと公的年金満足度・金融資産保有への態度
データ概容データ概容
北村 智紀  中嶋 邦夫

年金商品選択に対する独自の行動バイアスとして終身年金(回避)バイアスを定義し、厚生年金対象者を対象に退職準備に関する態度を分析した。このバイアスは、現金を終身年金化する主観的割引率と、終身年金を現金とする主観的割引率との差であり、公的年金に対する満足度、退職時までに準備する金融資産額等との関連性を分析した。その結果、このバイアスが高い者は公的年金への満足度が低く、退職までに準備する金融資産が多くなる傾向が確認された。これは終身年金を選好せず金融資産保有を選好するというアニュイティー・パズルと整合的である。

現在の幸福度と将来への希望―幸福度指標の政策的活用現在の幸福度と将来への希望―幸福度指標の政策的活用
データ概容データ概容
松島 みどり  立福 家徳  伊角 彩  山内 直人

近年、多くの国々で幸福度について政策当局の関心が高まっている。本研究では日本で実施された「第1回生活の質に関する調査」を用いて、現在の幸福度、および将来の予想幸福度の経済社会的要因を実証分析した。分析の結果、現在の幸福度と主観的健康感、世帯収入、婚姻状態(既婚)、就業状態が正の相関を示していた。また、5年後の将来の幸福度が現在より向上すると感じていることと主観的健康感の高さ、世帯収入の高さ、そして子どもの数が多いことが相関している一方で、将来の幸福度が低下すると感じていることと、加齢、最終学歴が高卒であること、学生であることとが相関していた。

需給ひっ迫時における需要抑制策の評価―2012年夏季の需給調整契約が産業用電力需要に与えた影響需給ひっ迫時における需要抑制策の評価―2012年夏季の需給調整契約が産業用電力需要に与えた影響
データ概容データ概容
五十川 大也  大橋 弘  中村 豪  西川 浩平  花田 真一

本稿は、2012年夏季に電力会社から提供された需給調整契約が産業用電力需要に与えた影響を定量的に評価することを目的にする。東京電力・関西電力管内に工場を持つ企業を対象に行ったアンケート調査を基にしてパネル回帰分析を行ったところ、個別需要家への影響として、以下の3つの点が明らかになった。(1)需要家が支払う電力料金は需給調整契約に加入することで平均11%程度下落した。(2)需給調整契約は最大需要(ピーク)電力以上に使用電力量を減らす効果の方が大きく、工場レベルでは負荷平準化への貢献は限定的だった。(3)需給調整契約に加入することから得られる料金低減率は需要家の規模が大きくなるほど拡大するが、個別需要家のピーク電力削減率には大きな変化は見られなかった。今後のわが国の電力システムにおける小売部門でのネガワット取引の効果を考える上での示唆を与える。

仮想評価法を用いた博物館の実証的研究仮想評価法を用いた博物館の実証的研究
データ概容データ概容
林 勇貴

本稿の目的は仮想評価法を用いて非市場価値を含めた芸術・文化資本の経済的価値を定量的に評価することを試みることである。そのため神戸市立博物館を取り上げ、来館者調査(二段階二項選択法)を実施し、支払い意志額(WTP)をランダム効用モデルによって推定するとともに、決定要因を検証した。その結果、@WTPの中央値は4,920円であり、直接利用に加えて遺贈価値、代位価値がWTPを大きくしていること、A芸術・文化資本の評価を高めるためには単なる展示場ではなく、施設それ自体の魅力を高めるべきこと、B神戸市立博物館の便益・費用比率は1.193から1.784であり、芸術・文化資本としての投資に耐えうることが明らかとなった。

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