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毎週初めに日本経済研究センターの、愛宕伸康主任研究員ら、景気および金融証券マーケットのウオッチャーが、焦点、勘どころを解説します。

もし東京がひとつの国だったら・・・−−14年2月3日

主任研究員 愛宕伸康
 愛宕伸康
【人を引き寄せる大都市「東京」】

 今回は忙中閑話、都知事選挙も近いことだし、大都市「東京」について語ってみたい。筆者はスターバックスにも見放された鳥取という田舎の出で、さすがにもう電車のことを汽車とは言わなくなったが、長らく東京に暮らしながらいまだに「いやあ、東京は住むとこじゃないね」などとつい呟いてしまう根っからの田舎者だ。最近になってようやく「銀ブラ」のブラがブラジルコーヒーのブラだということを知った。はずかしい。ちなみに、日本銀行旧館を上空から見ると「円」に見える。消防庁のビルの高さは119メートル。東京人になるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 日本は人口減少で大変だが、東京にいるとそんなことはまるで感じない。鳥取とは別の国のようだ。東京都の人口は一貫して増加を続け(下図)、現在約1300万人、実に日本の1割、鳥取県の約23倍の人が住んでいる。国内で比較してもそのすごさはピンとこないが、例えばオーストラリア2300万人、オランダ1700万人、ギリシャ1200万人、ベルギー1100万人、ポルトガル1100万人、スウェーデン1000万人、スイス800万人、香港700万人、デンマーク600万人、ノルウェー500万人などと比較すれば、東京がいかに他の国並みに大きいかよく分かる。
 愛宕伸康
【東京の一人当たりGDPは世界トップクラス】

 経済規模も然り。まずは予算。一般会計に特別会計と公営企業会計を合わせた都全体の2013年度予算は12兆838億円で、ドル換算するとスウェーデンの国家予算とほぼ同じ。しかも、一般会計のプライマリーバランスは10年以上プラスを維持しているから立派だ。また、都内総生産(名目GDP)をドル換算すると1兆1687億ドルで、都庁のホームページには、主要国の中でメキシコ(1兆1552億ドル)や韓国(1兆1162億ドル)を上回り第14位に相当するとある。「いや待て、異常な円高で数字が過大評価されているのでは」といぶかる向きもあろう。否、仮に1ドル100円で計算しても9239億ドルで、韓国に次ぐ第16位ということになる。

 一人当たりで見るともっとすごい。昨年12月下旬、GDPの12月確報とあわせて公表された内閣府の資料には、「我が国の一人当たりの名目GDPは、平成24(2012)暦年には4万6537ドルとなり、OECD加盟国の中で第10位となった」と誇らしげに書いてある。同じことを東京都の11年度都内総生産で計算すると、なんと約8万9000ドル。ルクセンブルク(11万4000ドル)、ノルウェー(9万9000ドル)に続く第3位に相当するのだ(両国は11年の数字)。1ドル100円で計算しても7万ドルだから、スイス(8万3000ドル)に次ぎ第4位である。東京恐るべし。生産性も半端ない。

【東京が日本を長期停滞から脱出させる】

 人口減少問題を解消するヒントはアメリカでもない、フランスでもない、灯台下暗し、実は東京にあるのではないか。東京には周囲から人を引き寄せる磁力がある。筆者のような田舎者だけではない。訪日する外国人も多くが東京に来たがる。なぜそれほどまでに東京を目指すのか。「地方にいては仕事がないから」という消極的な理由だけではないだろう。そこを解明すれば、わが国が長期停滞から脱するカギが見つかるかもしれない。

 それともう一つ、ルクセンブルクは金融センター、ノルウェーは産油国である。わが国もこれからノルウェーのような資源国になるか。もちろん資源開発も重要なのだが、いかんせん時間がかかる。いっそ鳥取県と同じ60万人足らずの人口でダントツ1位の一人当たりGDPをたたき出す、ルクセンブルクのような金融センターを作ってはどうか。東京都のどこかの区をまるごとそうすれば良い。憧れの大都市「東京」にルクセンブルクのような最強の金融センターがあれば、それこそ鬼に金棒だ。

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