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深尾光洋の金融経済を読み解く

2007年9月1日 通貨発行益とは何か

 中央銀行は銀行券を発行している。これは、普通の人からみれば夢のような業務である。なぜならば、銀行券を印刷して発行さえすれば、無限の利益を出すことができるからだ。

 中央銀行は通貨発行益をどのように計算しているのだろうか。ナイーブに考えれば、毎年発行する銀行券の残高増加分が通貨発行益に当たると感じられるのではないだろうか。銀行券を偽造する人からみれば、本物そっくりに印刷された日銀券を使って宝石を買ったり高級レストランで飲食したりすれば、使った偽札の金額が利益に相当するからだ。

 実は私も日銀に就職する前の学生時代には、銀行券の増発額が利益になると思っていたので、日銀の口頭試問で間違いを指摘されて冷や汗をかいた覚えがある。そこで本稿では、中央銀行の利益について考えてみよう。

 細かい点を捨象してみれば、日銀は保有資産の運用益から経費を差し引いて利益を計算している。日銀が銀行券を増発するときには、国債などの金融資産を民間から買い入れ、その代金として銀行券を民間に引き渡す形で供給する。これが買いオペである。日銀が銀行券を発行して購入した国債などの金融資産からの金利受け取りが、日銀の通貨発行益になる。通貨発行に必要な銀行券の印刷費、人件費などの経費を無視して単純化していえば、次の式のようになる。

(通貨発行益)=(金利)×(日銀保有国債)(1)

 この通貨発行益の計算方式であれば、日銀保有国債が増加するほど、また金利が高いほど、通貨発行益は大きくなる。これに対して前述したように、日銀による利益の計上方法として、毎年発行する銀行券の残高の増加を使うことも考えられる。

(通貨発行益)=(期末の銀行券発行高)−(期首の銀行券発行高)(2)

 この計算方式であれば、銀行券を増発すればするほど、通貨発行益は増大する。実はこの2つの通貨発行益の計算方法には、密接な関係がある。
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(日本経済研究センター理事長)

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