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経済対策 16・17年度成長率を0.2%押し上げ―4〜6月期は年率0.5%増見込む

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2016年8月調査を公表しました。

 政府が決めた大型の経済対策は、どの程度景気浮揚に効果があるのか。「対策を織り込んだ」と回答したフォーキャスター29人の予測を集計したところ、平均で2016年度・17年度の実質成長率をともに約0.2ポイント押し上げるとの結果になった。対策の事業費のうち、GDP(国内総生産)拡大に寄与する「真水」は、両年度合わせて約3兆円、GDP比0.6%とみている計算だ。同1.3%の効果があるとする政府の見方を大幅に下回った。

@大型経済対策でも浮上しない日本経済――民需押し上げには限界
 フォーキャスターには2016年度・17年度の見通しを尋ねるとともに、経済対策を織り込んだ回答者には、それがなかった場合の成長率を答えてもらった。両方を突き合わせてみると、対策による実質成長率への押し上げ効果は16年度が0.19ポイント、17年度が0.23ポイントとなった(図表1左)。


 前月からの予測の改定幅では、16年度は前月を0.1ポイント上回ったが、17年度は変わらなかった(同図表右)。前月予測でも、対策をある程度織り込んでいたことがわかる。政府がテコ入れを狙っていた民間消費は、16年度見通しが前月比0.1ポイントの上方修正となった。給付金などによる効果を見込んでいるとみられる。ただ、17年度は変わらず、持続的な加速は見込めない。両年度とも伸びが高まっているのは公共投資で、民需押し上げには限界があると言える。

A「真水」3兆円程度と見込む――16・17年度の配分は1対2
 政府は対策による実質GDP押し上げ効果を1.3%と弾いている。民間エコノミストの見積もりはどうか。成長率から真水の規模を逆算してみよう。成長率の0.2ポイントをGDPに換算すると約1兆円。1年目はこれで問題ない。2年目は幾分ややこしくなる。2年目も「成長率」が0.2ポイント高まるということは、1年目の約2倍、2.1兆円の需要追加を見込んでいることになる(図表2左)。2年間をあわせた真水は3.1兆円で、16・17年度の配分は1対2というのが平均的なエコノミストの想定だ。
 ただこれは平均値で、同じ計算を個々のフォーキャスターについてしてみると、2年間の真水合計の分布は、0.5兆円から6兆円の間に広がる(同右)。見方にばらつきが生まれたのは、回答を締め切ったのが8月1日時点で、事前に流れていた報道を基に内容を判断していた点があるかもしれない。加えて、対策の中には来年度以降の予算に組み入れるものが含まれており、それを「上積み」とみるかどうかも、フォーキャスターの見方を左右したとみられる。


 17年度の真水が2兆円だとすると、心配になるのは18年度だ。同年度に持ち越される事業も一部あるかもしれないが、仮にそれがゼロだと18年度成長率を0.4%押し下げる。それを織り込んだのか、18年度見通しを引き下げたフォーキャスターが29人中6人を数えた。出口戦略が必要なのは金融政策に限らない。政府は2年後に逆風に直面する可能性がある。

B4〜6月期実質成長率は0.54%に上方修正
 16年4〜6月期の実質成長率予測は、前期比年率0.54%増と、7月の同0.12%増から8カ月ぶりに上向いた。需要項目別にみると、消費が6〜7月調査の前期比マイナスから微増に浮上した。設備投資は0.13%と増勢を保っているものの、輸出は7月調査同様0.30%減少している。もう1つ、成長率反転に効いているのが輸入の下方修正だ。円高の下で生じている輸入の減少は、内需の低迷を映している可能性が大きく、手放しでは喜べない内容だ。


 一方、好転の兆しが見えるのは生産だ。熊本大震災に見舞われたものの、立ち直りは早く、秋需を見込んだ増産で4〜6月期(実績)は前期比横ばいを確保した。7〜9月予測も7月調査の0.68%から0.84%増に上方修正された。16年度予測も、7月調査で▲0.08%とマイナスに転じたものが、8月調査では0.11%増とプラスに回復した。

C日銀展望リポートとの落差広がる
 経済対策で成長率見通しはわずかに好転したが、物価は弱含みが続いている。消費者物価指数(CPI)予測は、円高や原油価格の値下がりなどを映し、16年度見通しが初めてマイナスに転落した。原油価格は、15年(暦年)実績の48.8ドル/バレルから、16年に43.8ドル/バレルと約1割下落する予想となっている。
 さらに注目したいのは17年度予測である。日銀は引き続き17年度中に2%上昇を達成する目標を掲げているが、フォーキャスターの平均は0.7%まで低下し、日銀展望リポートとの落差が広がっている。物価に関しては、このところ慎重派の見通しが当たる傾向にある。慎重派を代表する低位8機関平均をみると、今月は0.2%程度まで下がった。日銀が「2年」としていた2%目標の達成は遠のきつつある。


D転機を迎える金融政策
 7月末の金融政策決定会合を苦い思いで見守ったフォーキャスターが多かったのではなかろうか。7月調査では「金融政策の変更」を聞いた設問で回答した42名の内、実に36名が7月追加緩和と答えた。確かにマスコミの第1報は「追加緩和」だった。だが、その内容はETF(上場投資信託)をほぼ倍増の6兆円に増やす、というだけで、「それで追加緩和と言えるのか」と疑問視する声が聞かれた。
 7月調査でフォーキャスターが念頭に置いたのは@マイナス金利の深掘りAマネタリーベースの上乗せ、という現在日銀が行っている量・質・金利という日銀版“3本の矢”の深化だった。だが、ETFを倍にしてもマネタリーベースを増やしたわけではない。あやしげな「追加緩和」だった。
 今月の「金融政策の変更」調査で目立つのは9月に中立的な変更、との回答だ。回答者39名の内7名がそう答えている。
 回答者が念頭に置いているのは量・質・金利のフレームは維持したまま、2%インフレ・ターゲット目標の達成時期に幅を持たせる類いのフォーワード・ガイダンスの変更なのではないだろうか。その場合、例えばマネタリーベースを20兆円上乗せして年間100兆円増目標に切り替える、といった変更があれば、中立的ではなくれっきとした追加緩和になる。実際16名が「9月追加緩和」と答えている。
いずれにしても9月は13年4月4日にスタートした新金融政策の再構築になるわけで、日銀にとっては暑く長い夏になる。


E中国景気、再び警戒モードに
 3カ月ぶりに中国製造業PMI(購買担当者景気指数)の四半期予測を実施した。
 50超を「上昇」、50を「保ち合い」、50未満を「下降」とする単純な3段階での予測だが、7〜9月見通しを「上昇」と答えたフォーキャスターは4人にとどまった。これを大幅に上回る9名は「下降」と判断した。残りの22名は「保ち合い」だが、全体として3カ月前の前回調査とは様変わりの様相を呈している。


 5月調査の同じ7〜9月の予測では「上昇」が15名で「下降」は9名だった。このときは「上昇」が優位だったが、今回は打って変わって「下降」が優位を占めている。3カ月前までの楽観が後退し景気の先行きに対し警戒ムードが強まってきていることをうかがわせる。
 8月1日に発表のあった7月の製造業PMIは49.9で5カ月ぶりに景気判断の分かれ目となる50を下回った。輸出に伴う新規受注指数が49.0と50を大きく下回ったのが目を引く。人民元が緩やかに下落する中で輸出が不振を続けているのは気がかりな材料だ。
中国共産党が7月26日に決めた今年後半の経済運営方針でも民間投資のテコ入れを大きな課題とみている。
 中国全体での債務は2,700兆円、これをGDPで割った債務比率は249%にも達するといわれる。この解消には思い切った供給サイドの改革が必要で、この負担を考えると「L字型回復」にならざるをえないということかもしれない。

(門多治・猿山純夫・池田吉紀)

調査結果

2014年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定
2016年 9月調査 9月07日
2016年10月調査 10月11日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。