トップ » ESPフォーキャスト

ESPフォーキャスト調査

トランプ就任で日本経済は−−円高は収束を予想 景気への不安残る

  • Tweet this articl
2016年11月調査を公表しました(2016年11月10日)。

 今回の11月調査では定例の日本経済予測に加え、トランプ氏の大統領就任に伴う影響を民間エコノミストに聞いた。1年以内に予想される影響は、円相場が5円程度の円高、日本の実質国内総生産(GDP)には▲0.1%程度のマイナスが平均値だった。円高は徐々に収束する予想が多かったが、3年後にかけてもGDPには負の影響が残ると見るフォーキャスターが半数程度を占めた。

@円高は徐々に収束へ――GDPにはわずかにマイナス
 今回の調査は11月2日に定例の調査を一度締め切った後、トランプ氏の大統領就任が有力になったのを受け、9日(日本時間)午後に緊急の追加調査を実施した。米国の政策や円相場、日本のGDPへの影響をフォーキャスターに聞いた。回答があったのは28人。
 まず米国の貿易政策がオバマ政権と比べてどう変わるかを聞いたところ、「やや」を含めて全員が「保護主義化する」と回答した。
 円相場と日本のGDPへの影響も聞いた。円相場については、短期(1年以内)では「円高になる」が大勢で、選択肢では「5〜10円の円高」が最も多かった。これに対し、3年後を念頭に置いた長期では、円高は収束に向かうとの予想が増え、「ほぼゼロ」としたフォーキャスターが半数近くを占めた。フォーキャスターが「5〜10円の円高」のように答えた回答を、レンジの中心値7.5円に置き換えて平均値をとると、短期では5円、長期では2円程度の円高予想となった。
 日本のGDPへの影響は、短期では「0%〜▲0.25%」が最も多かった。長期では、「▲0.25%〜▲0.5%」と「ほぼゼロ」が同程度で意見が分かれた。平均値では、短期が▲0.1%、長期は▲0.2%だった。円高の収束を予想する一方、GDPのマイナスを見込んでいるのは、貿易政策をはじめ不透明な部分が多いとの判断からだろう。


■以下は11月2日までの回答に基づく集計、42人が回答した

A日銀政策、「長期戦」予想増える――金利「現状維持」が優勢に
 国内で1カ月前と変わったのは、日銀の金融政策の見通し。現状維持の長期化を予想するフォーキャスターが増えた。次の政策変更がいつ、どんな内容になるかを聞いたところ、10月調査では12月か来年1月には次の緩和があるとの回答が多かった。それが今回の調査では、同予想が減り、代わりに来年秋以降の緩和予想が最も多くなった。緩和にも引き締めにも当たらない枠組み変更などを指す中立型の予想も増えている。


 同じことは日銀の金利目標の予測からもうかがえる。増えたのは「現状維持」予想だ。2017年末まで現状を維持するとの予想が、短期金利では10月調査の16人から23人に、長期金利では22人から30人に増えた。
 日銀は10月末の決定会合で、物価目標2%の達成時期を「18年度ごろ」まで先送りした。物価上昇を阻む要因として、根強いデフレ心理を挙げており、異次元緩和の限界をある程度認めた格好だ。9月の総括検証では、マイナス金利による金融機関収益への影響も認めており、フォーキャスターらは、マイナス金利の深掘りを急ぐ理由がなくなったと見ている模様だ。


 日銀が期待する18年度での物価目標達成は可能か。本調査では18年度見通しの平均値が0.9%、上位8機関平均でも1.4%にとどまる。日銀が四半期ごとに示す「展望リポート」では、17年度の1.5%上昇を経て、18年度に1.7%に至るパスを描いているが、本調査では17年度の上昇率は0.6%にとどまる。物価目標の達成は依然厳しい。


B16年度成長率、2カ月続けて改善――輸出がプラスに、消費は勢い欠く
 消費増税再延期が決まって以降、一進一退を続けていた16年度の実質成長率は2カ月続けて改善、0.79%となった。前月は水面下だった輸出が0.01%とプラスに転じたのが主因だ。消費が勢いを欠くものの、公共投資や住宅投資も増勢を保っているほか、鉱工業生産も0.31%に上方修正された。
 7〜9月期の実質成長率見通しも前月の0.76%から0.85%(共に年率)に上方修正された。輸出が0.54%から1.30%に、設備投資も0.22%から0.29%に引き上げられたことが寄与している。
 輸出見通し改善の背景には、輸出先として約3分の1を占める中国・ユーロ圏の見通し好転がある。16年の成長率予測は、中国が6.61%(8月6.52%)、ユーロ圏は1.50%(同1.44%)と3カ月前に比べて上向いた。中国の製造業PMI(購買担当者景気指数)も16年10〜12月には上昇が23(8月調査7)、17年1〜3月が12(同10)と持ち直している。
 17年度の実質成長率は0.96%と4カ月連続で上方修正され、1%台が見えてきた。住宅投資の反動減の一方で、公共投資(3.57%)、設備投資(1.74%)に加えて、輸出が2.37%と伸びたことが寄与している。ただ、17年の米国成長率が小幅だが下方修正されていること(8月の2.23%から2.20%に低下)や、17年に入って以降は中国PMIが足踏みになる見込みで、海外環境には不安が残る。


C中国景気、足元で好転――本格回復には疑問符
 11月1日に発表された10月の中国製造業PMIは51.2となり、3カ月連続で景気判断の分かれ目となる50を上回った。11月調査では、3カ月ぶりに同指数の見通しを聞いた。
 50超を「上昇」、50を「保ち合い」、50未満を「下降」とする単純な3段階での予測だが、10〜12月見通しを「上昇」と答えたフォーキャスターは23人にのぼり、保ち合いが13名、下降はゼロだった。全体として3月前の前回調査とは様変わりで改善している。
 ただ、1〜3月以降は、前回調査とほぼ同じで、改善を見込むフォーキャスターの数は10〜14人と少数派にとどまる。巨額の債務や過剰設備を抱える中国経済の本格回復には依然疑問符が付くようだ。


D賃金が上がれば物価は上がる
 各フォーキャスターの賃金・物価17年度予測を1枚の紙に描いてみた。
 横軸に賃金上昇率の予測、縦軸に消費者物価上昇率の予測を割り当ててある。フォーキャスター毎の予測が青いドットに表れている。
 全体の平均値(コンセンサス)で見た17年度の賃金・物価は所定内定期給与でみた賃金上昇率が0.5%、消費者物価上昇率は0.6%になっている。グラフは平均をとる前のフォーキャスターごとの予測だ。賃金は0.0%から1.5%、消費者物価は▲0.3%から1.2%と、フォーキャスターによってかなり差がある。


 ばらつきはあるが、じっと見ていると左下から右上に向かって1本の線が引ける。予測値は違っても、フォーキャスターの頭の中では賃金が上がれば物価は上がるという法則が共有されているようにみえる。
 インフレ目標政策の根本は2%の消費者物価上昇率を安定的に実現することだ。アベノミクスはスタート時点でこれを量的質的金融緩和という異次元の金融政策で達成しようと計った。これが行き詰まっているからといってインフレ目標政策そのものをあきらめてしまうというのは早計だろう。望ましい賃金上昇率に誘導する逆所得政策も含めてもう一度根本から見直してみる必要がありそうだ。

E民間設備投資の覚醒を期待
 16年度の実質民間設備投資の聞き取りを始めたのは15年1月。最初の予測値は3.51%だった。2010年代の最初の5年間の平均増加率は2.2%だから、消費増税による停滞景気を打ち破るのは設備投資、との強い期待が込められていた。
 今年の4月予測までは3%台予測が続いた。変調が表れたのは5月調査からだ。5月調査で2.63%と2%台に落ちる。さらに翌6月調査で1.39%と一気に1%台になってしまった。
 9月調査で0.41%と、信じられないような低い伸びになっている。10月は0.60%といくぶん回復したが、今月調査では0.59%とわずかだがまた後ずさりしている。
 アベノミクス景気が始まってしばらくすると円安を背景にした製造業の“Uターン”が話題になった。新興国の旺盛な製品需要増と工場進出先への部品供給にこのUターンが加われば、かつての成長牽引役としての“4番バッター”が戻ってくるのではないかとの期待があった。
 少子高齢化が民間設備投資にブレーキをかけている、といわれる。だが、人類は100億人に向かってばく進している。グローバルに活動を展開する企業にとっては設備投資の手抜きは許されない。停滞ムードを打破する上で一時も早い民間設備投資の覚醒が待たれる。


(門多治・猿山純夫・池田吉紀)

調査結果

2014年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

「ESPフォーキャスト調査」サービスのご案内 △このページのトップへ


調査結果の公表予定
2016年12月調査 12月19日
2017年01月調査 01月17日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。