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17年度実質成長率は1.1% −「名目」が突出する政府見通し−

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2017年1月調査を公表しました(2017年1月17日)

 円安傾向を背景に輸出や生産が回復、昨年決めた経済対策の効果で公共投資も景気底上げに寄与−−。フォーキャスターが描く17年度経済の姿だ。企業・政府部門が景気を押し上げる半面、住宅投資の一服など家計部門は伸び悩むため、実質成長率は1.1%と、2016年度見込み1.2%と同程度になる見込みだ。今春の賃上げ率は、17年度の所定内給与の予測から割り出すと、昨年比微増にとどまりそうだ。
 こうした民間予想に対し、政府経済見通しで目に付くのは「名目」成長率の突出だ。本調査の1.4%に対し、2.5%を見込む。アベノミクスは、物価2%や2020年度までの名目GDP(国内総生産)600兆円達成を目指しており、高めの目標設定が必要になっている。

@企業部門に明るさ――住宅投資は一服
 まもなく米大統領にはトランプ氏が就任、アベノミクスは5年目を迎える。17年度はどんな年になるのか、フォーキャスターの見通しから探ってみよう。今月から調査対象に加わった18年度を含めて見通しを描いた(図表1)。読み取れるのは以下の4点だ。


 第1は海外環境が比較的良好とみられることだ。米国は、実質成長率が16年の1.6%(見込み)から17年には2.3%に上向く。積極財政を打ち出しているトランプ政策への期待もあるが、FRB(米連邦準備理事会)が12月に1年ぶりの利上げに踏み切るなど、景気の足取りがしっかりしてきた。円相場は、1ドル115円と円安傾向での推移を見込んでいる。ただ、トランプ氏の政策には大きな不確実性があり、ある程度の波乱は覚悟しておくべきだろう。
 第2に国内では輸出や生産が回復することだ。海外景気や円相場の安定から、輸出が持ち直し、それに連れて生産や設備投資も伸びを高める見通しだ。特に、強気派である高位平均見通しを見ると、生産や設備投資でかなり高めの伸びを見込んでいる。
 第3は公共投資が伸びることだ。政府は昨年8月に大型の経済対策を決めた。対策は16年度の第2次補正予算(10月に成立)と、17年度予算に組み込まれるため、事業執行は17年度が主体になる見込みだ。ただ、18年度になると、対策が一巡し反動減が現れそうだ。
 第4は家計部門が伸び悩むことだ。企業部門が明るさを増すものの、賃金への還元は相変わらず期待薄のようだ。足元で増加している住宅投資も来年度には減速する見込み。個人消費は緩やかに伸びるものの、景気押し上げ役としては力不足だ。

A政府見通しとの差、「名目」でくっきり
 今回の調査結果と、12月に政府が公表した新年度の見通しを比べてみよう。成長率予測で目につくのが、「名目」の差だ。政府は実質、名目とも高めだが、特に名目は2.5%と、民間予測を1.1ポイントも上回る(図表2右)。


 なぜ、名目が突出し2.5%にもなるのか。1つは、アベノミクスでは実質より名目が重みを増していることだ。日銀が物価上昇率2%を目指す一方、政府は20年度に名目GDP(国内総生産)を600兆円にすることを目標にしている。実質だけ高めても、公約を果たしたことにならない。「2.5%」という高い目標を置くのは、15年度のGDP532.2兆円を起点にすると、20年度に600兆円になるためには、年率2.4%の伸びが必要になるためだ。実質は「予測」かもしれないが、名目は「目標」と読むべきだろう。
 名目GDPは期待どおり伸びるだろうか。15年度に2.8%という例があり、政府は予測をほぼ的中させた。しかし、この年は「神風」が吹いた。原油安だ。原油価格が暴落して輸入が減少、名目GDPを押し上げた。しかし、次の16年度には原油安効果が一巡、円高も加わって、政府が期待した名目3%成長は吹き飛んだ。2.5%は高いハードルだ。

B賃上げは微増か
 物価押し上げ、景気浮揚のカギとして期待されているのが賃金の引き上げだ。本調査では不定期に所定内給与の上昇率を尋ねている。政府が経営者団体に賃上げを要請するなど、一時は賃金増への期待が高まった。17年度予測を昨年3月から追うと、次第に賃上げ期待が後退、今回は0.5%増にとどまった。特に高位平均が落ちている。
  では、今年の賃上げ率はどのくらいになるか。順番としては、先に春闘があり、それを見ながら、各企業が所定内給与を設定するので、フォーキャスターの予測に織り込まれているであろう賃上げ率を割り出す作業だ。
 厚生労働省の「主要企業春季賃上げ率」と所定内給与の相関関係からみると、17年度の賃上げ率は昨年を0.1ポイント上回る2.2%程度になる。家計にはまだ春が遠いようだ。同賃上げ率は定期昇給分を含むのに対し、所定内給与は非正規雇用などを含む賃金全体をとらえるため、伸び率には2%近い差がある。


C円安ならやっぱり輸出は伸びる
 13年4月の量的質的金融緩和が始まって以降、円安でも輸出が伸びないと言われてきた。だが、フォーキャスターの頭の中では「円安なら輸出は伸びる」という法則が生きているようだ。
 まず、フォーキャスターごとの実質輸出と円相場の17年度予測値をプロットしてみた。明確な右上がりではないが、円安になるほど輸出の伸びは高まる傾向が見てとれる(図表4A)。


 時系列に並べると、輸出と円相場の予測が驚くほど重なっている(図表5)。フォーキャスターが円相場と輸出を関連づけて予測しているのがわかる。波乱に明け暮れた16年度から17年度は一転、輸出回復の年になりそうだ。。


D生産見通し、5カ月続けて改善
 輸出が伸びれば、生産にも好影響が出る。フォーキャスターの予測分布も、輸出と生産は緩やかな正の相関を示す(前掲図表4B)。実際の指標の動きを過去から振り返っても、生産と実質輸出は連動関係が強い(図表6)。
 11月の鉱工業生産速報では、政府は久々に生産の判断を「持ち直しの動き」に引き上げた。熊本の震災影響から脱し、在庫調整もかなり進んで、情報通信、電子部品・デバイス、電気機械、はん用・生産用・業務用機械などを中心に、製造業生産予測指数も12月、1月ともに2%程度の増加を見込んでいる。本調査でも、生産指数の見通しは16年度が4カ月、17年度は5カ月続けて上方修正になった。16年度後半から17年度は、前向きの在庫積み増し局面に入ることも期待できるかもしれない。


E7の付く年―2007年と2017年

 17年冒頭での挨拶、多くの人が「7の付く年は波乱の年」と言って油断を戒めた。1987年はブラック・マンデーでニューヨークの株価は大暴落した。1997年はアジア危機、その後我が国では金融の大型倒産に見舞われた。「そして2007年、世界は米国のサブプライムローンの破綻を機に金融恐慌に巻き込まれていった」と続く。
 07年と17年、日・米・欧・中4カ国・地域の実質成長率レーダー・チャートを描いてみた。点線が07年、実線が17年だ。実線の菱形が中に来ている。「エッ、今年の方が07年よりひどいのか」と思われる人が多いのではないだろうか。中国の成長率が大きいのでこういう図を描くと近年の方が中に来るのだ。


 07年は決して悪い年ではなかった。4カ国・地域の実質成長率は前後の年に比べて低かったわけではない。特に中国の14.2%は高度成長最後の年と言っても良い高い水準だ。日本も小泉景気のピークの年、悪くなるのは08年からだ。すでに米国のサブプライムローン危機が表面化してきていたから、大きな波乱の芽をはらんでいたことは確かだ。
 17年はどうだろう。確かに波乱の芽は随所にある。英国のブレクジットの影響はこれからだ。トランプ政策も期待先行で世界の株価を押し上げてはいるが、ドル高修正となると通貨高の重荷が見舞うリスクはある。国際政治への対応も未知数だ。加えて欧州の不透明な選挙の行方が気がかりだ。それでも予測数値を見る限り、悪い年にはならないのではないか。

(門多治・猿山純夫・池田吉紀)

調査結果

2015年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定


*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。