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物価上昇率 17年度も0.65%どまり―金融政策は“弾力化”濃厚

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2016年9月調査を公表しました。

 物価見通しの下振れが続いている。民間エコノミストが見込む消費者物価指数(CPI)の上昇率は、円高や原油安の影響を受ける2016年度は▲0.15%、その影響が薄れる17年度でも0.65%となった。「物価2%」は遠のくばかりだ。打てる手も次第に狭まりつつある。日銀が今月予定する「総括的な検証」にあわせ、金融政策の軌道修正はあるのか。エコノミストの大勢は、国債の買い入れ額と物価目標の達成時期に幅を持たせる「弾力化」が濃厚と読んでいる。

@押すのか引くのか――「次も緩和」が4分の3
 目論見通りに物価が上がらない。ならば、もっと緩和を強めるのか、あるいはこれまでの路線を見直すのか。押すか引くか、2つの見方が交錯している。
 今回の調査では、まずフォーキャスターに、次の日銀の政策変更がどちらの方向に向かうのか、緩和・引き締め・中立の3つから選んでもらった。中立は、目標の見直しや国債購入の弾力化など、緩和・引き締めには分類しにくい変更を指す。
 結果は、次も緩和とみるフォーキャスターが40人中30人を占めた。変更の時期もあわせて答えてもらったが、9月はまず「地ならし」で実際の変更は後になるとみる場合もあり、ここでは最長来年1月までに変更ありとした回答をもとに集計した。


A「国債」と「時期」は弾力化 ―― 一段の緩和は「他の資産」で
 では日銀はどんな手を打つのか。緩和予想派と中立予想派に分けて集計した(図表2)。
 読み取れるのは2点だ。第1は、国債買い入れと物価目標の達成時期に幅をもたせる「弾力化」が緩和派・中立派を問わず多数を占めたことだ。国債をこのまま年80兆円といったペースで買い上げれば、いずれ日銀がほとんどの国債を飲み込んでしまう。物価も4月以降の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で謳っている「17年度中に2%」を達成するのは本調査の物価予測からみても、事実上無理だ。国債購入を中心にインフレ目標の早期達成を目指す枠組みは、練り直しが避けられなくなっている。中立派が考える修正点は、ほぼこの2つに尽きている。
 第2は、一段の緩和を進める具体策として「他の資産購入の増額」が最も有力視されていることだ。緩和と読む30人のうち22人がこれを挙げた。上場投資信託(ETF)などの買い入れ増額を想定しているとみられる。賛否がぶつかるマイナス金利の深掘りも30人中16人が挙げた。マイナス金利の縮小(金利引き上げ)を見込むフォーキャスターはいなかった。


B消費者物価の下方修正が続く
 「物価2%」はどのくらい高いハードルなのか。16年度の消費者物価指数(CPI)予測は、円高や原油価格の値下がりなどを映し、8月調査で初めてマイナスに転落、9月は▲0.15%まで下がった。円相場は15年度の1ドル約120円(実績、年平均)から16年度は104円前後、原油価格は15年の48.8ドル/バレル(同)から、16年に43.6ドル/バレルへと約1割の下落が予想されている。
 17年度になると、円高・原油安の影響は薄れるが、物価は0.65%の上昇にとどまる見通しだ。日銀は13年春の黒田東彦総裁着任以来、インフレ目標の達成期限を徐々に後ずれさせてきた。本調査によれば、18年度でもインフレ率は0.92%止まりで、「17年度中」はおろか、さらに1年の猶予をみても2%との落差は埋まらない。やはり、守れない約束は取り下げ、「弾力化」するなどの見直しが順当のように見える。


C7〜9月期成長率 やや改善
 16年7〜9月期の実質成長率予測は、前期比年率0.94%増と、8月の同0.87%増から上向いた。需要項目別にみると、6月調査以降増勢が鈍化していた民間消費が、4カ月ぶりに持ち直した。設備投資が微増を維持するほか、輸出も4〜6月期(実績、速報値)の1.5%減から0.6%増と増勢に転ずる。


D住宅投資急増は朗報か――対策の「真水」は17年度に厚く
 9月調査で目立った項目が2つある。1つは民間住宅投資だ。16年度の見通しは3カ月連続で上昇、9月は一気に2.8ポイントも高まった(図表5)。
 これをどうみるか。住宅投資は長らく景気の先行指標とされてきた。マイナス金利の効果で先兵たる住宅が動き出したとみれば、金融緩和の先行きに希望を灯す1つの好材料だ。
 ただ、今回伸びているのは主に貸家。金利引き下げの効果とともに指摘されているのは、相続税の節税目的としての貸家建設だ。16年度から控除が大幅に圧縮され、都市部を中心に相続税を軽減する目的での建設が急増している模様だ。
 フォーキャスターは16年度こそ住宅を強気に見ているものの、17年度は逆に下方修正と、住宅ブームの持続性には懐疑的だ。貸家建設にはもう1つの留意点がある。供給の増加には家賃を押し下げる効果がある点だ。家賃はCPIの中でウエートが大きく、これは物価目標の達成には逆風となる。仮にマイナス金利が住宅投資を刺激しているとしても、浮かれてばかりはいられない。


 もう1つ9月調査で動いたのが、公共投資だ。前回8月調査で政府の経済対策を織り込んでいたのは29人だったが、今回は41人に増えた。公共投資の伸びが16年度、17年度とも高まったのはそのためだ。
 フォーキャスターが見込む経済対策の「真水」を推計すると、16、17年度累計で3.3兆円となった(図表6)。8月調査に比べると16年度が微減、17年度が微増となり、支出配分は17年度寄りに修正される形となった。


E失業率見通しの低下が続く――17年度後半には2%台も
 「雇用過熱 さえぬ消費」
 8月30日付けの日経夕刊のカットだ。総務省が30日に発表した7月の完全失業率、実質消費支出はくっきりと明暗を描いた。くしくもアベノミクス景気の現局面を如実に物語っている。
 3%の消費増税があった14年4月以降、当ESPフォーキャスト調査は成長率の下方修正の連続だった。その中で、完全失業率予測だけは堅調に推移している。9月調査では予測値に初めて2%台が顔を出した。17年10〜12月が2.99%になっている。予測最終四半期の18年1〜3月も2.98%と3%を切っている。
 労働の過不足状況判断DIはリーマン・ショックから立ち直って間もない11年半ば頃から不足シグナルが目立つようになった。今年前半は40。かつてない労働不足状態になっている。 モノやサービスの需給が緩み、物価が下がる状態で、労働だけが逼迫する姿はどうみてもまともな経済とは思えない。


F円高か円安か、分かれる予測
 フォーキャスターごとの円相場予測を1枚の紙に描いてみた。
 横軸に2016年度予測、縦軸に17年度予測を割り当ててある。フォーキャスターごとの予測がドットで示してある。かなりばらつきが大きい。
 16年度から17年度に向けての変化方向という意味では、左下から右上に伸びる45度線を挟んで、左上は円安予測、右下は円高予測になる。16、17両年度の予測を答えた41人の内、27名が円安、12名が円高、2人が同水準だった。
 アベノミクス景気がスタートした12年12月末は86円だった。15年7月に124円まで円安が進んだ後、基調としては円高局面が続いている。その中で17年度が円安になるのか円高になるかは景気・物価の行方を占うキー変数といえる。


G米利上げは年内1回、来年2回がコンセンサス
 米国の金利引き上げは今後どこまで進むだろうか。日米欧の中でいち早く2015年12月にゼロ金利から抜け出したのが米国だ。
 本調査ではその翌月から、16年末のFF(フェデラル・ファンド)レート予想を聞いている。1月の平均値(コンセンサス)は1.1%で、ほぼ3回の利上げを見込んでいた。ところが、今になっても追加利上げは実現していない。
 16年の米国GDP(国内総生産)成長率予測を横軸に、縦軸に16年末のFF金利予測値をプロットしてみると、米国が期待ほど成長せず、金利予想もどんどん下がってきたことがわかる(図表9)。9月調査では、現在の誘導水準0.25〜0.5%から、ほぼ1回分0.25%の利上げを見込む0.62%がコンセンサスだ(グラフの◆)。
 今回、17年末の予想値を質問に加えた。コンセンサスは1.1%(グラフの●)。年内に1回の利上げをした後、来年は2回引き上げる予想になっている。16年の経験から占えば、順調に実体経済が復調することが条件だ。現在、17年実質成長率の予想は2.2%。フォーキャスターの米GDP予測も要注目だ。


(門多治・猿山純夫・池田吉紀)

調査結果

2014年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定
2016年10月調査 10月11日
2016年11月調査 11月09日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。