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「英離脱」 GDPを0.2%押し下げ―円高、短期で4円強、長期では収束へ

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2016年7月調査を公表しました。

 英国のEU(欧州連合)離脱決定で経済にはどのような影響が及ぶのか。6月末から7月4日まで実施した本調査で43人(機関)のエコノミストに尋ねたところ、日本の実質GDP(国内総生産)を、短期(1年以内)、長期(5年後)とも0.2%押し下げるとの回答が平均値だった。為替については、短期では4円強の円高効果を見込む一方、長期では収束方向に向かうとの予想だった。

@円高で輸出にブレーキ――17年のユーロ圏、0.2ポイント減速へ
 「英離脱」の影響を2つの角度から探ってみよう。
 1つは、予測数値からの読み取りだ。前月調査との差を、ひとまず「英離脱」によるものと見立ててみよう。前月調査の後、見通しを動かす可能性があった主な統計は、@1〜3月期のGDP2次速報(前期比+0.4%から+0.5%へ上方修正)、A5月の米雇用統計(市場予想+15万人程度に対し+3.8万人と低調)――ぐらい。@はプラス方向へのわずかな改定、Aは今月の米GDP予測を見る限り、フォーキャスターの見方にあまり響いていない。見通しの変化はほぼ「英離脱」騒動によるものと言えるだろう。
 前月調査に比べ、実質成長率は2016年度、17年度とも0.1ポイント低下した(図表1)。押し下げたのは輸出だ。両年度とも0.6ポイント下がった。円相場予測が約6円円高に振れたのに加え、ユーロ圏成長率が16年(暦年)は0.1ポイント、17年(同)は0.2ポイント低下した。輸出減速で16年度の鉱工業生産は▲0.1%と、前年割れの予想となった。


A円高は収まる方向――GDPには▲0.2%の影響残る
 もう1つ、今回は「英EU離脱が採択されたこと」の影響を直接問う質問を用意した。尋ねたのは、円相場(対ドル)と、実質GDPへの影響だ。それぞれ、短期(1年以内)と長期(5年後)の「水準」への影響を答えてもらった(図表2)。短期は、主として離脱決定による市場混乱の影響、長期は本当に離脱した後の影響とも言えるだろう。
 読み取れるのは、以下の2点だ。第1は、円相場は長い目でみると中立方向に戻りそうという点。フォーキャスターが例えば「5〜10円の円高」のように答えた回答を、レンジの中心値7.5円に置き換えて平均値をとると、短期では4.3円の円高、長期では1.6円の円高となった。足元では不安心理から安全通貨として円が買われているとしても、長い目でみると円高は収まる方向と読んでいる。
 第2はGDPへの影響だ。こちらは1年以内、5年後のGDPとも平均で▲0.2%という回答だった。長期では円高一服を見込んでいるが、GDPには影響が残る形になった。
 回答からにじんでいる点がもう1つある。プロのエコノミスト達も長期の影響を読みあぐねていることだ。長期では「どちらとも言えない」の回答が目立った。グローバル化の後退や、英国や欧州に進出していた企業に再配置の費用がかかるなどの負の側面が考えられる半面、「離脱」の内容が見通しづらいことや、離脱を受け新たな政策対応がとられる可能性などが考えられるためだろう。


B4〜6月成長率は0.12%で変わらず――輸出・輸入ともに鈍化
 16年4〜6月期の実質成長率予測は前期比年率0.12%と前月調査と同水準となった。輸出・民需は悪化した。輸出は、英国のEU離脱を予想して進展した円高の影響で下方修正されてマイナスに転じた。消費もマイナス幅を小幅拡大、設備投資も増勢が鈍化した。これを輸入の減少で相殺したが、全体的にモノの動きは鈍化方向にある。
 モノの動きを端的に示すのが、鉱工業生産指数だ。同指数の16年度予測は今回▲0.05%とマイナスに転じた。16年度も減少すると3年連続のマイナスとなる。


C7月に集中する追加緩和予測
 「金融政策の変更」を聞いた設問でこれほどまでもフォーキャスターの回答がそろったことはかつてなかった。
 7月調査では回答した42名のうち、実に36名が7月追加緩和と答えた。今年の1月4日、円相場119円、日経平均18,451円でスタートしたマーケットは、6月30日には103円、15,576円まで円高・株安が進んでいる。マーケットをウオッチしているフォーキャスターのフラストレーションが「7月追加緩和」予測に爆発した格好だ。追加緩和の中身を聞いていないのでフォーキャスターが想定している具体策は明らかではない。
 だが、今月の予測にヒントはある。
 国債流通利回りの16年度は6月調査の▲0.10%が今月は▲0.14%になっている。17年度予測は先月の▲0.04%から今月は▲0.11%へとマイナス幅が深くなっている。
 17年末のマネタリーベースは先月の518.1兆円が今月は519.4兆円でそれほど大きく膨らんではいない。だが、高位8機関平均を見ると、先月の536.9兆円が今月は545.0兆円へと8兆円程度増えている。
 マイナス金利の深堀りとマネタリーベースの追加を核にした量的緩和の拡大の両面作戦と考えているのではないか。


D公共投資、じわり上昇修正
 実質公共投資の予測はこのところ上方修正傾向を続けている
 16年度の実質公共投資予測は昨年の秋口くらいまではマイナス2.5%からマイナス3%で推移していた。それ以降、じりじりと上方修正の動きを続けてきた。今年1月予測の▲1.9%が6月調査で0.7%にジャンプ、7月予測は0.4%とちょっと後退したが、プラスを堅持している。
 上方修正の動きは17年度の方がはっきり表れている。予測を始めた今年1月では▲0.2%。7月調査ではプラスの0.8%だった。


 このところの上方修正には2つの要因がある。
 1つは4月初めに安倍首相が16年度予算の思い切った前倒し執行を指示したこと。9月末までの半年間に10兆円規模の前倒しを求めた。これだけ前倒しすると下期に穴が開き、当然穴埋めが連想される。
 2つ目は年初からのマーケットの不調に追い打ちをかけた英国のEUからの離脱決定。円相場は一時99円台の円高まで進み、政府・与党内に大型補正予算への期待が高まった。自民党の二階俊博総務会長は6月末、20兆円の景気対策を求める提言を安倍首相に提出した。
 財源をにらんでどこまで規模を膨らませることができるのか、難しい判断を迫られる。

E後退する米国の利上げ見通し――「年内あと1回」が大勢
 英離脱の余波は、米金融政策にも及んでいる。6月半ばに開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)では、年内に2回の利上げを見込む意見が多数だった(図表6)。しかし、英離脱により、新たなかく乱要因となる利上げには動きにくくなった。
 今回の調査で大勢を占めたのは「0.5%〜0.75%」で年内にあと1回の予測だ。その下の「0.25〜0.5%」と利上げなしを見込むフォーキャスターも11人いる。
 年内のFOMCは7月、9月、11月、12月とあと4回ある。米景気判断のカギになる雇用は、5月の足踏みから6月は予想を大きく超える前月比30万人に近い増加と、振れが大きい。ひとまず腰折れ懸念は遠のいたが、景気の見極めには時間がかかり、7月の利上げは難しそうだ。利上げはできても年内に「あと1回」がせいぜいというところだろう。


(担当:門多治・猿山純夫・池田吉紀)

調査結果

2014年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定
2016年 8月調査 8月09日
2016年 9月調査 9月07日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。