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1〜3月期は年率1.71%成長見込む−「完全雇用」は失業率2.7%−

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2017年5月調査を公表しました(2017年5月15日)


 民間エコノミストが見込む1〜3月期国内総生産(GDP)の伸びは年率1.71%となった。世界経済の復調を受けて輸出が伸び、2017年度の実質成長率予測も1.4%と、7カ月続けて上方修正された。雇用逼迫が強まり、日本経済は「完全雇用」に達している可能性もある。完全雇用に相当する失業率を聞いたところ、最も多かったのは「2%台後半」で、全フォーキャスターの平均を概算すると2.7%だった。これは予測の最終期である19年1〜3月の予想水準2.72%と一致しており、低下の余地が小さいとみているフォーキャスターが多い。

@1〜3月期の輸出、増勢に広がり――IMF世界経済見通しも上方修正
 17年1〜3月期の実質GDP成長率予測は、前月の1.36%から1.71%(年率)に上向いた(図表1)。成長の主たるドライバーは輸出だ。1〜3月期は4月調査の前期比0.9%増から、1.7%増に勢いがついた。中国を含むアジア向け輸出が昨秋以降上向き、さらに年明け以降EU向けも加わった。IMF(国際通貨基金)の17年世界経済見通しも4月、3.5%増に上方修正された。民需では、個人消費は小幅ながら0.2%増から0.4%増に上方修正される一方で、設備投資は機械受注が足踏みしており、減少に転じた。ただ、4月の日銀短観での17年度計画は、例年と比較してやや高く、企業が弱気に転じている様子は乏しい。


A17年度は企業部門主導で1.4%――弾みのつかない物価
 17年度予測も輸出主導で7カ月連続の上方修正となった(図表2)。3カ月前と比較すると、実質GDPは1.2%から1.4%へ0.2%だけ伸びが高くなった。内訳をみると、輸出が3.4%増から5.1%増に、また、設備投資も2.1%増から2.6%増へ上向くなど、企業部門主導の成長が一段と鮮明になった。前述のように、短観の17年度設備投資計画も、4月調査がここ2〜3年は前年比マイナスが通例だったが、今年はプラスとなっており、この時期としては強い。一方、民間消費は1%を下回る予測が続いており、住宅投資も微減と見込まれるなど家計部門への波及は弱くなっている。また、公共投資は3.3%増から2.2%増に下方修正された。人手不足や資材価格の高騰が工事の進捗率を引き下げる可能性を考慮したものだろう。

 このような企業部門を中心とする実体経済の上振れの下でも、物価上昇見通しには弾みがついていない。消費者物価(生鮮食品を除く総合)上昇率は、足元プラスに転じたあと、17年度予想は0.8%程度と、1年前、3カ月前とほぼ同水準である(図表3)。




 背景には、春季賃上げの伸び悩みと、それを背景とする家計所得、家計需要への波及力の弱さなどがあろう。

B足元でほぼ完全雇用に――失業率の低下余地少なく
 景気が良いと喜んでばかりいられないのが、現在の雇用情勢だ。3月の有効求人倍率はバブル期以来の26年ぶりの高水準に達した。人が採りたくても採れない状態になっている。職種のミスマッチや転職時の離職を除いて、働きたいと思っている人が全員働いているのが「完全雇用」だ。日本経済は既にその領域に達しているのだろうか。

 今回の調査では、完全雇用に相当する失業率はどの程度か、フォーキャスターに尋ねた。回答で最も多かったのは「2%台後半」で18名だった(図表4)。少し具体的な数値で表すため、「2%台後半」を2.75%、「2%台半ば」を2.5%のように0.25%刻みの数値に置き換えて平均をとると、コンセンサスは2.7%になった。

 失業率は2月、3月と2カ月続けて2.8%だったから、ほぼ完全雇用に達したとの見方もできそうだ。より正確には、「2%台後半」より上のレンジを答えた28人(全体の3分の2)は既に完全雇用に達したか、かなり接近しているとみており、残りの3分の1は、「まだ」と見ていることになる。

 この状態でさらに景気の上昇が続くとどうなるのだろう。1つ考えられるのが、失業率はもう下がらない可能性だ。今回の失業率予測が下図の右だ。毎年1〜3月期の値をプロットしてある。2年後の19年1〜3月期でも2.72%までしか下がらない見通しになっている。低下余地が少ないと見ているフォーキャスターが多いことは確かだ。

 もう1つの可能性は、賃金が上昇して、現状では失業を選んでいる人を就労に踏み切らせることだ。この場合、まだ失業率は下がる可能性がある。非正規雇用を中心に賃金上昇が広がりつつあり、これがより明確な動きになることも考えられる。この場合、物価への波及や、その結果として金融政策の判断にも影響を与えるかもしれない。


 

C人手不足対策は就労促進から
 人手不足に対して政策対応が必要か、あわせて尋ねた。必要と答えたのが36名、不要が6名だった(図表5)。

 必要と答えた回答者に、どんな政策が必要かを聞いたところ、多かったのは、「ミスマッチ解消のため学ぶ機会や職業訓練を増やす」「税制や福祉の見直しで労働市場への参入を増やす」だった。次に多かったのが、「ロボット化や自動化を支援する」や「外国人材を受け入れる」。まずは、国内での就労促進策をとり、省力化も進めた上で、次に外国人材の受け入れ、というのが平均的なフォーキャスターが描く優先順位のようだ。選択肢には、「財政政策を引き締め的にする」「金融政策を引き締め的にする」という項目も入れたが、選んだフォーキャスターはほとんどいなかった。


Dトランプ政策、「影響少ない」がじわり
 トランプ米大統領の経済政策の影響をどう見るか、2カ月ぶりに聞いた。従来の政策が続いていた場合を基準に、3〜4年先の実質成長率が高まるか尋ねたところ、高まるが15名、低くなるが13名だった(図表6)。楽観派と慎重派に分かれる構図は以前と同じだ。その中で、微妙な変化が2つある。

 第1は、「影響は少ない」と見るフォーキャスターがじわりと増えている点だ。「変わらない」の回答が3月調査から2名増えた。これに「どちらとも言えない」を加えると、10名から14名への増加になる。オバマケアの見直し難航に見られるように、トランプ大統領がもくろむ政策の実現が遠のいたとの見方が増えていることが考えられる。

 第2は、「低くなる」派がわずかに減り、差し引きでは「高まる」とみる楽観派がわずかに優勢になったことだ。低くなる理由の上位にあった「保護主義で貿易が鈍化する」「移民排斥で人材不足になる」がいずれも回答を減らしている。それに対して、高まる方の「インフラ投資が増える」「法人税などが引き下げられる」「規制緩和が進む」はほとんど変わっていない。保護貿易や移民排斥は、「米国優先」を目指しているが、長い目でみると米国の利益にならない可能性が大きい。トランプ政策の中でも、こうした手荒な政策が難しくなったとの見立てが増えている模様だ。


E中国景気判断――足元楽観、先行き慎重
 中国経済予測の一環として製造業PMI(購買担当者景気指数)の四半期見通しを聞いた。今回の3カ月ぶりの調査では、全体に明るさは増してはいるものの、昨年11月調査以降の「足元楽観、先行き慎重」のパターンが続いている。

 中国の製造業PMIは50超が「上昇」、50が「保ち合い」、50未満が「下降」を示す。グラフ(図表7)では、フォーキャスターの「上昇」との回答を100、「保ち合い」を50、「下降」を0にして平均したものを示している。昨年8月調査までは直近2四半期について「下降」が「上昇」を上回っていた。それが、昨年11月調査以降は直近が50超となった。今回は17年7〜9月まで「上昇」が「下降」をかなり上回るものの、秋以降はやや上昇度合いが弱まる予測になっている。

 この予測結果が正しいとすると、中国景気は改善に踏み出してはいるものの、まだ先行きは安心できないということになる。


(門多治・猿山純夫)

調査結果

2015年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定
2017年6月調査 6月16日
2017年7月調査 7月10日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。