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4〜6月期GDP、年率1.46%−「保護主義」がリスク首位に−

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2018年6月・8月調査の株価の四半期別予測を訂正しました(2018年8月14日)
■2018年8月調査を公表しました(2018年8月8日)


 民間エコノミストが見込む18年4〜6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、前月調査の1.67%から1.46%に下方修正された。これは、民需の下方修正が主因だ。18、19年度の実質成長はそれぞれ1.05%、0.81%成長とほぼ前月調査並みだった。消費者物価は19年度にかけて0.9%程度(消費税除く)上昇と変わらない。
米国と各国の貿易摩擦についてきいたところ、約6割が2019年4月以降も続くと回答した。景気のリスクとしては、「保護主義の高まり」がトップとなった。
その他、7月31日の日銀の政策修正を踏まえた長期金利誘導目標と実勢金利、中国の景気を調査した。

@ 4〜6月期は内需減で小幅下方修正
 

 18年4〜6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、前月調査の1.67%から1.46%に下方修正された。成長率は低下したものの、1〜3月期の前期比マイナス成長からプラスへの回復予想は変わらない。下方修正の主因は、消費・設備投資など民需にある(図表1)。輸出は0.61ポイント下方修正されたものの輸入がそれ以上に下方修正されたため、外需増加寄与度(対実質GDP)は0.3%程度と前月調査とほぼ変わらない。
4〜6月期のその他需要項目では、政府消費が増加するとみているフォーキャスターが多かった。一方、住宅投資と公共投資は減少するとの見方が多かった。



 7〜9月期以降についてフォーキャスターはどのようにみているだろうか。8月調査における四半期でみた実質GDP成長率と主要需要項目の動きを図表2に描いた。今後1年間の動きに注目すると、消費は0.3%程度、設備投資は0.7%程度、輸出は0.8%程度の増加が続く。その結果、実質GDP成長率は、4〜6月期の1.46%から19年4〜6月期の1.38%まで増勢を保つ。


 設備投資については、日銀短観(6月調査)で投資水準が同時期の調査として過去最高を記録したことや、日本政策投資銀行が実施した設備投資計画調査(8月1日発表)の好調ぶりから、今後の動向が注目される。輸出は、本調査で景気のリスクとして自動車関税引き上げ等を挙げるフォーキャスターが増えてきており、貿易摩擦の今後の動向によっては下振れの可能性もあろう。

A 18、19年度成長は実質1.05%、0.81%とほぼ前月調査並み
 18、19年度の実質GDP成長率は1.05%、0.81%と、前月調査(各々1.08%、0.80%)比、ほぼ変わらない。
 8月調査結果の主要項目について、半年前の2月調査と比較してみた(図表3)。19年度にかけて成長が減速していく姿は変わらないが18年度について家計部門を中心に下方修正された。18年度の消費は、2月調査比0.24%下方修正され0.66%となった。これまで成長を押し上げてきた輸出と設備投資は、わずかながら下方修正された。海外経済についてみると、米国景気は18〜19年ともに上方修正された。



 消費者物価(消費増税の影響を除く)は、18〜19年度ともに2月調査比0.04ポイント下方修正された。図表4では2017年5月以降の本調査の見通しを日本銀行の見通しと比較している。日銀は7月に物価見通しを下げたものの、19年度において本調査の予測よりなお0.6〜0.7ポイント高い水準だ。

  B 景気のリスクとして自動車関税引き上げも
 半年から1年先にかけて景気を反転させる可能性のある要因について3つまで挙げてもらい、その理由も可能であれば書いてもらった(図表5)。
 2018 年に入ってからトップは「円高」が続いていたが、それが久しぶりに入れ替わった。第1位は「保護主義の高まり」、第2位に「中国景気の悪化」、第3位が「円高」という順になった。「保護主義」が増加した背景として、トランプ米大統領の交渉術や米中の技術覇権をかけた争いが中長期的に続く可能性から、貿易の減少を通じて世界経済が減速して日本の輸出は減少、企業のコンフィデンスの悪化から設備投資も抑制されるとみるフォーキャスターが増加した。具体的に自動車関税引き上げ発動に対する懸念も6名が挙げた。
 中国景気については、対米通商摩擦による景気下振れリスクの指摘が多い。その他に、債務問題の表面化や資本流出の加速、既に循環的な減速に入っているという回答もあった。中国経済の減速により世界経済が低迷し、日本も輸出の減少や企業収益の悪化、株安などの影響を受けると懸念されている。
 「円高」は、前回の6月調査よりも挙げたフォーキャスター数は減ったものの、なお半数以上がリスクととらえている。その理由は、不確実性が増大しリスク回避姿勢が強まること、米国からのドル高是正要請、米国の利上げペースが予想外に速まること、欧州情勢の混乱など様々である。円高により、企業収益の悪化、設備投資の抑制、輸出の減少などが懸念される。


C 長期金利、誘導目標は現状のまま実勢は10bpプラスが大勢
 7月31日、日本銀行は、消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえて、当分の間、現在の長短金利の水準を維持するというフォワードガイダンスを発表した。また、黒田総裁は記者会見で、長期金利の現状の誘導目標は当面維持するものの、変動許容幅を従来の2倍の上下0.2%幅とすることを表明した。
本調査の回答期間は7月25日〜8月1日で日銀の上記の発表前の回答者と発表後の回答者が混在したため、長期金利の誘導目標と実勢金利について、8月2日〜3日に追加調査を実施した。そのうち誘導目標についての結果を図表6に示した(追加調査への未回答者3名については8月1日締め切りの当初調査結果を用いた)。


7月調査と比較すると、今回の回答では18年末予想はほとんど変わっていないものの、19年末の誘導目標の見通しは「0.0%以上〜0.1%未満」の現状並みとの回答が19人から31人に増えた。実勢金利は、18年末、19年末とも「0.1%以上〜0.2%未満」の回答が多い。

D 自動車関税引き上げで9割が日本の成長低まると回答
 8月調査では、米国発の貿易戦争について調査した。まず、米国と各国の貿易摩擦はいつまで続くかについて、最も多かったのは2019年4月以降も続くというものだ(図表7)。「その他」を選択した回答(「2020年の大統領選まで」「中間選挙前にいったん収束も20年大統領選前に再燃」)も含めると回答の6割を占める。一方、4分の1のフォーキャスターは中間選挙までとみている。 
 次に、米国の通商政策はどこまで保護主義的になるかを複数回答で尋ねた。「中国の知的財産権侵害に対する制裁関税の追加(最大2千億ドル)」(回答者の81.6%)と「鉄鋼・アルミニウムの輸入制限と340億ドルの中国製品への高関税(現行)」(同76.3%)が多かった(図表8)。「自動車関税の引き上げ」も4割近くが挙げたが、交渉によって日本への自動車関税は回避されると予想しているフォーキャスターもいた。
 最後に、現行の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限と340億ドルの中国製品への高関税のほか自動車関税の10〜25%の引き上げが追加された場合、日本経済の成長率への影響とその理由を質問した。回答者の9割以上が「低くなる」で、その理由として輸出や企業収益、設備投資の減少、株価の下落などが挙げられた(図表9)。輸出は減少する一方、生産拠点が調整されるために成長率への影響は「変わらない」と挙げたフォーキャスターもいた。




E 中国PMIは5月から上方修正
 中国製造業PMI(購買担当者予測指数)の動向は、5月調査と同じく、前回調査よりも全体的に上方修正された。図表10は、製造業PMIの見通しについて「上昇」「横ばい」「下降」のいずれかで答えてもらい、「上昇」には100、「横ばい」には50、「下降」には0を与えて回答数で加重平均した数値を示している。2018年7〜9月期の85.7から19年7〜9月期の60.0まで低下が続き、10〜12月期は横ばいで推移する。


(門多治・伊藤由樹子)

調査結果

2016年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定
2018年09月調査 09月19日
2018年10月調査 10月10日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。