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ESPフォーキャスト調査

1〜3月期は年率1.36%成長を予測 −「いずれ長期金利引き上げ」半数超に−

2017年4月調査を公表しました(2017年4月10日)


 輸出が伸び成長率見通しが好転――。昨年後半からの流れが今月の調査でも続いた。1〜3月期の実質成長率は、平均で年率1.36%と、前月調査比0.22ポイント改善、輸出の押し上げが上方修正につながった。2017年度の成長率予測も6カ月連続で上昇し、1.3%になった。景気見通しが改善するにつれ、変化しているのが、金融政策の読みだ。さらに緩和すると見るフォーキャスターが減り、いずれ引き締めか枠組みの変更など軌道修正があるとの見立てが増えている。特に現在ゼロ%程度に抑えている長期金利目標の引き上げが必要になるとの回答が半数を上回った。

@1〜3月期、年率1.36%を予測――輸出が押し上げ
 1〜3月期の実質成長率見通しは、1.36%(前期比年率)と3月調査から0.22%ポイントの上方修正になった(図表1)。内訳を見ると、輸出が前期比0.54%から0.90%に改訂されたのが主因だ。中国・NIESを中心とするアジア向け輸出が増加している。一方、国内総生産(GDP)の半分以上を占める民間消費(0.21%増)と設備投資(0.24%増)は、伸びは前月とほぼ変わらず、増勢は緩やかだ。



 もう1つ、1〜3月期の押し上げ役となりそうなのが公共投資だ。16年度の第2次補正予算の執行が本格化するためだ。四半期ベースの公共投資は質問していないが、GDPから消費、設備、輸出、輸入を差し引いた「その他」(政府消費や住宅、在庫変動も含む)の寄与度を弾くと、10〜12月期の0.24%減(前期比)から1〜3月期には0.14%増に転じる(図表2)。輸出に加え、政府部門が17年度経済の下支え役になりそうだ。


A17年度GDPは1.3%増――輸出・生産の上振れ続く
 輸出主導の景気上昇という構図は、17年度も同じだ。実質成長率予測は1.30%と、3月調査比0.04ポイント上向いた。上方修正は昨年11月から6カ月連続だ。3カ月前との比較では、0.19ポイント上昇した(図表3)。



 17年度見通しの3カ月前と比べた変化は、輸出(3.0%→4.5%)の伸びを受けて生産も上方修正され(2.5%→3.5%)、つれて設備投資(1.9%→2.9%)の見通しが上向いた。逆に、民間消費は0.82%から0.77%に、民間住宅投資も0.9%減から1.1%減に低下し、家計部門は足踏みが続く。引き続き企業部門中心の成長だ。一方、人出不足の懸念や進捗面への不安からか、公共投資は4.0%から3.1%に引き下げられた。

 前月(3月)との比較では、明確に上向いたのは輸出(前月比+0.31ポイント)で、消費(同+0.01ポイント)、設備投資(同+0.01ポイント)はほぼ横ばいだった。鉱工業生産は前月比+0.57ポイント改善した。

B金融政策、軌道修正派が8割以上に
 金融政策の軌道修正を織り込むフォーキャスターが増えている。次の政策変更は一層の緩和か、引き締めか、あるいは中立(政策の枠組み変更など)かを聞く質問に対し、「引き締め」の回答が38名中19名と半数に達した。「中立」が13名、「緩和」が6名で、「中立」も現行政策の修正を念頭に置いていると考えれば、軌道修正派は8割以上とも言える。半年前(16年10月調査)はこれが逆で、「一層の緩和」が8割だった。

 軌道修正予想が増えている背景は、おそらく3つある。

 1つは内外の景気回復と、それを背景にした海外金利の上昇だ。輸出伸長が示しているのは世界経済の回復だ。米国では、トランプ大統領の登場で、積極財政が金利上昇につながるとの予想も加わり、米長期金利(30年国債利回り)は半年前に比べ0.5%以上高くなった。海外金利が高くなると、国内金利も上昇しやすい。長期金利をゼロ%程度に誘導する現行政策は苦しくなる。
 第2は、緩和策の限界だ。従来の年間80兆円といった国債買い入れはどこかで手仕舞いする必要がある。昨年9月以降は、目標が「量」から「金利」に移っており、政策の整理も必要だ。


 

 第3は、1年後に来る黒田東彦総裁の任期だ。異次元緩和は株価押し上げや円高修正には効いたが、物価を高める効果には限界があった。新体制発足にあわせ、何らかの方針変更があっても不思議ではない。上図は、動くとしたらいつかの回答を示している(図表4)。大方は、18年3月以降との回答だ。任期切れ直前に大きな政策変更をすることはないと考えれば、4月以降と同じになる。

Cいずれは長期金利引き上げ――国債購入は目標から除外も
 引き締めや枠組み変更として、どんな具体策があり得るのか。金利や量的目標、物価目標の設定などの側面から尋ねた(図表5、複数回答)。

 まず最も多かったのは、長期金利の誘導目標引き上げだ。本設問に答えた37名中、22名がこれを挙げた。そのうち「次は引き締め」と答えたフォーキャスターが16名と大半を占めた。「次は中立」と見る回答者も5名が選んでいる。

 2番目に多かったのは、「国債買い入れ金額を目標から外す」で11名だった。政策の主眼が金利に移っているため、金額についてのコミットメント(約束)を除外するのが自然という判断だろう。以上の2つは、次は引き締め、次は中立の両派が選んでおり、国債や長期金利関連は修正が必要と考えるフォーキャスターが多いことがわかる。



 「次も緩和」と読むフォーキャスターはどうか。6名中5名が「他の資産購入を増額」を挙げた。国債買い入れには限界があっても、他の証券にはまだ買い入れ余地が残っていると見ている模様だ。「短期金利引き下げ」は3名だった。

 図表4を見ると、緩和時期として3名が7月を挙げており、緩和があるなら比較的早いうちと考える回答者が多い。これに対し、引き締めや中立は「18年3月以降」が多く、「いずれ」というニュアンスだ。

D雇用逼迫でも物価鈍く−−賃金抑制の壁破れるか
 22年ぶり、25年ぶり――。統計で相次ぐ雇用逼迫の表現だ。2月の失業率は2.8%と22年ぶり低水準。3月の日銀短観では、雇用人員判断DIでみた人手不足感が25年ぶりの高い水準になった。どんな尺度でみても、雇用面からみた需給ギャップがゼロに近いのは間違いない。それでも物価の足取りは鈍い。

 物価上昇の可能性はないのか。フィリップス曲線を描いてみた。横軸に失業率、縦軸に消費者物価指数(CPI)上昇率をとる(図表6:A)。失業が減るほど(図で左寄りになるほど)、物価が上昇するという関係だ。アベノミクスの起点になった12年度以降を、濃い色のマーカーで示している。今回の本調査によれば、18年度はCPI上昇率が1%で失業率は2.8%になる見通しだ。これは25年前の93年度とほぼ同じ位置にあたる。90年代は、失業率が2%に接近するにつれ、物価上昇が加速する関係があった。曲線が昔と同じなら、18年度は難しいとしても、19年度以降に物価に「点火」する可能性がありそうに見える。



 しかし、もう1つの右側の曲線(B)を見ると楽観論は描けない。縦軸を所定内給与に代えた賃金版フィリップス曲線だ。物価版より相関関係が安定している。所定内給与の見通しは、18年度でも0.7%増。賃金版曲線は、90年代と比べて、1〜1.5%下を走っているように見える。物価版と違い、25年ぶりの93年度がまだ遠い。

 物価より賃金上昇が起きにくい。そう見える。昔と違うのは、非正規雇用の増加だ。93年度の非正規比率は20%、16年は37%に上昇した(労働力調査)。12年のアベノミクス開始直前から16年までの雇用者増加218万人のうち正規雇用は15万人に過ぎず、9割以上が非正規雇用だった。

 物価ほどに賃金が上がらなければ、実質賃金は低下する。消費意欲は高まらず、物価上昇が加速しにくい。日経センター中期予測によれば、2000〜15年度まで実質賃金が減少していた。同予測によれば、日本で賃金が増えにくいのは、(1)賃金決定が企業単位で、企業の賃金コスト抑制が優先されやすい、(2)労働組合が事実上企業側の資源に依存しており交渉力が弱い――などの理由があるという。

 ヤマト運輸が宅配便の配送量を削減、介護事業を運営するベネッセホールディングスの子会社が15%の賃上げなど、四半世紀ぶりの人手不足がついに企業の行動を変え始めた兆しも見える。予測どおり、小幅の賃金上昇に終わるのか、あるいは賃金抑制の壁を破って90年代の再現が起きるのか、雇用と賃金は要注目だ。

(門多治・猿山純夫)

調査結果

2015年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定
2017年5月調査 5月15日
2017年6月調査 6月16日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。