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ESPフォーキャスト調査

17年度 実質1.26%成長に高まる−設備・輸出さらに上振れー

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2017年3月調査を公表しました(2017年3月17日)

 民間エコノミストが見込む2017年度の実質成長率は平均で1.26%となった。昨年11月から5カ月連続で上方修正となった。特に、民間設備投資や輸出、生産の予測が月を追うごとに強気になっており、企業部門に明るさが増している。17年の春季労使交渉で自動車や電機大手のベースアップ回答は前年を下回ったが、フォーキャスターは17年度の所定内給与の伸びを微増とみている。年度中の景気上昇によって、賃金に好影響が及ぶ可能性がありそうだ。

@17年度、企業部門上向く――公共投資の見方は慎重に
 17年度経済の予測を3カ月前の12月調査と並べて描いてみた(図表1)。実質国内総生産(GDP)予測は、12月には1.09%だったのが、今回3月調査では1.26%まで上昇した。
 その他の項目に目を転じると、読み取れることが3つある。第1に、主に設備投資と輸出見通しの好転が成長率の上方修正につながったことだ。それにつれて、生産の伸びも高まっており、企業部門の見通しが改善している。為替相場が円安気味で推移していることも、こうした流れを後押しした。


 第2に、見通しの好転が他の部門に及んでいないことだ。民間消費はやや下方修正となり、住宅投資は貸家建設の増加で16年度に伸びた後、17年度に反動減が現れるという見方が変わっていない。公共投資の見方はむしろ慎重になっている。昨年8月に決まった経済対策で17年度に投資額が膨らむものの、盛り上がりへの期待は前より控え目になっている。
 第3に、18年度になると、設備投資や輸出の伸びは一服するとみており、17年度の景気上昇を循環的・一時的なものとしてとらえている点だ。消費は18年度にかけて緩やかに伸びを高めるが、それ以外の主要な項目は18年度に伸びを落とすか、ゼロ付近にとどまる。公共投資には経済対策の反動が出てくる。

A17年度賃金 わずかに好転も――期中の景気効果に期待
 企業部門を中心とした景気上昇が、消費など家計部門にもバトンタッチするのか、そのカギを握るのが賃金の行方だ。不定期に聞いている所定内給与の予測を11月調査と比べると、16年度、17年度とも全く変化がない(図表1)。春季労使交渉の先陣を切って自動車や電機大手が回答した17年度のベースアップも前年に届かなかった。
 ただ、所定内給与の伸び率が16年度に比べてやや高まるというフォーキャスターの予測には希望も見える。非製造業を含めた17年3月期の純利益は最高益を更新する見通しで(上場企業、日本経済新聞社調べ)、全産業の賃上げ率には明るさがにじむ可能性がある。人手不足が深刻な中小企業や非正規雇用では、賃金上昇圧力がより高まっていることも考えられる。
 個々のフォーキャスターの名目GDP成長率と所定内給与上昇率見通しとをプロットしてみると、右上がりの関係がうかがえる。17年度の名目GDPは1.6%増と、前年比0.3ポイント高まる見通しだ。景気上昇の恩恵が賃金にも及ぶ希望は残っている。


B「次は引き締め」が多数に――時期は最短で秋以降
 今回も日銀の金融政策の次の一手を尋ねた。昨年10月時点では大半を占めていた「次は緩和」が退潮となり、前回は中立(緩和・引き締めに分類できない枠組み変更など)が優位に、今回はついに次は引き締めとみるフォーキャスターが多数派になった。
 政策変更の時期に注目すると、引き締め、中立、緩和とも、18年2月以降を挙げた回答が大部分を占めた。どの策をとるとしても、当面日銀は動かないとの読みが共通項とも言える。
 引き締め予想は最短で9月(3名)か10月(1名)で、引き締めへの転換があるとしても秋以降と言えそうだ。逆に7月までに絞ると、緩和、中立がそれぞれ3名で、目先日銀が動く場合は、一段の緩和か、枠組み変更が有力のようだ。


 

C名目成長率でみればデフレ脱却も
 まだ政府の「デフレ脱却宣言」は出ていない。本当は消費者物価上昇率の2%を確認して15年中にも出すはずだった。それが、14年夏から原油価格が暴落、とたんに消費者物価目標の達成がおぼつかなくなり、デフレ脱却宣言どころではなくなってしまった。
 今月調査でみた消費者物価上昇率は16年度でマイナス0.23%だ。17年度予測はプラスに転じるものの、0.85%にとどまっている。だが、名目GDPでみると、違った景色が浮かび上がってくる。
 アベノミクス景気の起点となった12年10〜12月期から16年10〜12月期まで16四半期の瞬間風速(季調済み前期比年率)は2.3%に上る。16年度から3年間の予測はそれまでの3年間に比べると見劣りがする。だが、着実に成長率は高まっていく。名目成長率でみれば、すでにデフレから脱却しているとみてもいいのかもしれない。


D「いざなぎ」超えを目指すアベノミクス景気
 アベノミクス景気の上昇期間は3月、80年代後半の平成景気(別名「バブル景気」)を超えて52カ月になる。3月調査の「景気基準日付」に回答したフォーキャスター37名の内、現在後退局面にある、との判断を示したのは3名にとどまっている。
 景気動向指数の先行きを聞いた質問に対する回答は、予測最終四半期の18年4〜6月まで景気拡張を示す85〜96で推移している。ということは、今回の調査で見る限りアベノミクス景気の上昇期間は18年4〜6月までは続くと判断していることになる。


戦後の日本の景気循環をたどると、直近の「谷」である12年11月まで15の循環が刻まれている。アベノミクス景気が今年の2月に並び3月で抜いた平成景気は上から数えて3番目の長さになっている。
 アベノミクス景気が次に目指すのは第2の「いざなぎ景気」だ。「神武」「岩戸」と合わせて昭和の“3大景気”といわれている。65年10月、「戦後最大の不況」といわれた昭和40年不況から立ち上がり、70年7月に山を迎えるまで57カ月も上昇を続けた。
 アベノミクス景気の上昇期間がいざなぎ景気に並ぶのは今年の8月。9月も上昇が続いていたとすれば、9月には「いざなぎ」を超える。その後に待っているのは02年から始まった「小泉景気」の73カ月だけだ。12年11月の谷を起点に数えた73カ月目は18年12月。果たしてそれまでアベノミクス景気が続くかどうか、エコノミストにとっては目の離せない関心事には違いない。

Eトランプ政策の評価、まだ定まらず
 前月に続き米トランプ大統領の経済政策をどうみるかを尋ねた。任期後半の3〜4年先に向けて、米国経済の成長率は高まると思うかを聞いたところ、「やや」を含めて高まると答えたのが14人、低くなると答えたのが16人だった。分布は前月から大きな変化がなかった。


 高まるとみる理由では、「インフラ投資が増える」「法人税などの引き下げ」「規制緩和が進む」を挙げたフォーキャスターが12〜13名で肩を並べた(複数回答)。今回から選択肢に加えた「株高が家計需要を押し上げ」も5名が挙げた。
 低くなる理由で最も多かったのは、「保護主義で貿易が鈍化」で13名、次いで「移民排斥で人材の不足や流出が起きる」「インフレや金利高が進む」がそれぞれ9名、7名で続いた。今回選択肢に加えた「政治の混乱で民間の経済活動が萎縮する」も7名が選んだ。
 2月末の議会演説では一方的な攻撃的姿勢を封印し、落ち着いた態度を示したため、市場では安心感が高まり、米株価は最高値を更新した。しかし、世界共通の貿易ルールを定めるWTO(世界貿易機関)の枠組みより、米国に不利益があるなら国内法を優先するといった、米国第一主義を撤回した訳ではない。トランプ政策の評価はまだ定まらず、見極めに苦労する状況が続きそうだ。

(門多治・猿山純夫・池田吉紀)  

調査結果

2015年12月調査まではどなたでもご覧になれます。

調査参考資料(PDF形式)・関連資料はこちら

■「ESPフォーキャスト調査」とは
 経済企画協会が2004年から実施してきた「ESPフォーキャスト調査」事業を2012年4月より日本経済研究センターが引き継ぎました。
 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。

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調査結果の公表予定
2017年4月調査 4月10日
2017年5月調査 5月15日
いずれも15:00頃を予定

*上記の予定は現時点での予定であり変更する可能性があります。