トップ » お知らせ

お知らせ

日本経済研究センターからのお知らせです

米発株安の影響は軽微〜18年も成長維持

「アジア・コンセンサス」セミナー、アセアンのエコノミストが討論

 日本経済研究センターは2月6日、アジア・コンセンサス調査特別セミナーを開催した。同セミナーは東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドのタイムリーな経済情勢を探るため、年4回実施している「JCER/日経 アジア・コンセンサス」調査の回答者を招き、各国の現状や持続的成長のための課題などを話し合うもので、今回が2回目。ウマール・ジュオロCIDES (情報開発研究所)会長(インドネシア)、ワン・スハイミ・ケナンガ・インベストメントバンク経済部長(マレーシア)、 ソムプラウィン・マンプラサート・アユタヤ銀行調査部門長兼チーフ・エコノミスト(タイ)の3人が登壇して、「ASEAN経済2018:展望とリスク〜現地エコノミストが語る国内情勢、世界への視点」というテーマで議論した。モデレーターは佐藤百合・日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所理事。
 


■米国金利動向に敏感〜経済成長は続く見通し

 セミナーでは、3氏が自国の経済状況を説明したほか、共通のテーマを巡ってパネル討論の形式でそれぞれ意見を述べた。

 インドネシアは5日に2017年の国内総生産(GDP)の対前年比伸び率がほぼ前年並みの5.07%にとどまったと発表したばかり。ジュオロ氏は「17年は消費の力が弱く、相対的に経済は好調とは言えなかったが、あくまで一時的なもの。物価や雇用は安定していることから、消費は今後盛り返す。18年の成長率は5.4〜5.6%、19年もほぼ同じペースとなるだろう」と説明した。

 マレーシア経済について、ワン・スハイミ氏は「輸出が好調で昨年7〜9月期に6.2%成長となったが、それをピークに10〜12月期以降は徐々に減速している。17年は通年では5.8%、18年は米国の利上げなど不安定要素が多く、5.1%にまで低下する見通しだが、5%台は維持する」とした。タイのソムプラウィン氏は17年の成長率は前年より0.8ポイント高い4.0%、18年も同水準になるとの予想を示すとともに、プラユット暫定首相が策定した36年までの国家戦略20カ年計画に言及し「タイ経済は政変の影響を受け続けてきたが、この計画の遂行で政権が変わっても継続的な経済運営が期待できる」と、今後の安定した経済成長の可能性を示した。

■マハティール氏の復活は難しい?

 今年はマレーシアとタイで総選挙、インドネシアでも統一地方選がそれぞれ予定されている。政権交代など政治リスクが経済に及ぼす影響も懸念されるが、3人はいずれも「大勢に変化は無い」との楽観的な見方だった。

 マレーシアでは92歳の元首相、マハティール氏が野党連合の首相候補として総選挙に出馬する予定。ただ、ワン・スハイミ氏は「野党連合は選挙で議席を伸ばすだろうが、マハティール氏が首相となる可能性は極めて低い」と見る。インドネシアでは昨年4月に行われたジャカルタ知事選でジョコ政権から野党にくら替えしたアニス・バスウェダン前教育・文化相が当選。保守的なイスラム団体の支持を受けたことから、地方選でもイスラム勢力など野党の台頭も噂されるが、ジュオロ氏は「野党はまだ勢力を固め切れていない。ジャカルタの夢を再び、ということにはならないだろう」としている。

■株安の当面の影響は小さい

 2月に入って、米国で金利の急上昇と株式の急落が起こり、世界の金融市場に動揺が広がっている。これについては3人とも、自国経済の影響は小さいと見ている。ソムプラウィン氏は株安について「タイで株式投資をしているのは全国民の1割に過ぎず、米国に連動して株価が下落しても消費など経済へのインパクトは限定的だ」と分析。インドネシアのジュオロ氏は「米国発のリスクに対して政府は素早く対応できる準備ができており、今回の株安の影響が及んでも持ちこたえられる」と話した。

 このほか、中国が「一帯一路」構想により東南アジアに経済的な影響力を強めようとしていることについては、「マレーシアには向こう10年間で7000億から8000億リンギの資金が入ってくるとされる。中国の影響力は強まるだろうが、過度に依存しないよう、ガバナンスをきちんとすることが大切だ」(ワン・スハイミ氏)、「大勢の中国企業や中国人がインドネシアに押し寄せると、中国に対する感情的な問題も生じる可能性がある」(ジュオロ氏)といった発言があった。

■今後もセミナーを定期的に開催

 日本経済研究センターは2016年4月、アジアのエコノミストを対象にしたアンケート調査「JCER/日経 アジア・コンセンサス」を開始し、これまで合計8回実施してきた。対象国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの東南アジア諸国連合(ASEAN)5カ国にインドを加えた6カ国で、回答しているアジア在住のエコノミストは約30人にのぼる。今回のセミナーはこのうち3氏を招いて開催したもので、3氏はセミナー以外でも、当センターの研究員や日本のエコノミストとの意見交換会に出席。アジアや日本が抱える問題などについて、幅広く議論した。当センターは会員企業にアジアで活躍するエコノミストから直接、最新の情報を聞く機会を提供するため、今後も年に1回の割合で同様のセミナーを開催していく。

主任研究員 湯浅健司


印刷用PDFはこちら

※ご参考:ウマール・ジュオロ氏(インドネシア)資料ワン・スハイミ氏(マレーシア)資料ソムプラウィン・マンプラサート氏(タイ)資料JCER NET メンバー限定

【ウマール・ジュオロ】=CIDES (情報開発研究所)会長(インドネシア)
インドネシア・バンドン工科大学を卒業後、フィリピン大学や米ボストン大学に留学。帰国後はハビビ元大統領の経済分野のアシスタントや中央銀行の監査委員会委員長などを歴任。現在はHSBCインドネシアのコミッショナー、シンガポール国立大学アジア競争力研究所シニアフェローも兼務。

【ワン・スハイミ】=ケナンガ・インベストメントバンク経済部長(マレーシア)
マレーシア国際イスラム大学経済学部を卒業後、経済系メディアの記者、証券会社での株式アナリストやマクロ経済調査などを経て、2006年にケナンガ・インベストメントバンクに入行。

【ソムプラウィン・マンプラサート】=アユタヤ銀行調査部門長兼チーフ・エコノミスト(タイ)
タイ・チュラロンコン大学を卒業後、英ウォーリック大、米メリーランド大カレッジパーク校に留学。タイ国家改革委員会の特別スタッフ、チュラロンコン大学経済学部準教授などを経て2016年から現職。専門はマクロ経済学、産業連関分析。

※関連リポートのご案内
【JCER/日経 アジア・コンセンサス】第8回調査(〜2019年)「インド、7%成長に回復へ〜ASEANも好調維持―18年に相次ぐ選挙、「政治リスク」に関心」 17年12月25日発表

△このページのトップへ