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インド国際経済関係研究所と共同政策提言

「新興国 グローバルガバナンスの枠組みの核に」
ラジブ・クマール・インド国際経済関係研究所所長


ラジブ・クマール・インド国際経済関係研究所所長  
 20カ国・地域(G20)が首脳会議の場所に、景気後退でもっとも手痛い打撃を受けたピッツバーグのような都市を選んだことは「世界経済の回復には協調した行動が依然重要である」とのメッセージを示すことになる。これがまさに、G20の存在意義なのである。

 G20は、世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の決着や気候変動問題に関するコンセンサスづくりへの貢献も期待されている。世界的な改革を目指すうえで最も重要な枠組みだ。だからこそ、その役割や制度に疑問が生じるのは当然だ。

 世界経済に回復の兆しが見え始めた今、改革への圧力は大幅に弱まり、G20はこの枠組みを続けていく意義付けを見いだすのに苦労するだろう。世界には主要8カ国(G8)をはじめ、「G8プラス新興5カ国」、さらにはG30やG77などといった非公式なグループも存在する。ピッツバーグに集う指導者たちは世界の政治・経済情勢が大きく変わるなかで、G20の役割を考えていかねばならない。

G8プラス5カ国が軸

 だが我々にはすでに国連という、国際問題について合意形成を目指す公式な制度的機構がある。G20の存続は、この枠組みを新たなグローバルガバナンスの中心に置くことが認められるかどうかにかかっている。

日米と主要新興国の名目GDP"

 それにはまず、G20がG8に取って代わり、G8プラス新興5カ国もまた、G20の下に組み込まなければならない。だが、G8とG20は明らかに目的がすれ違っており、両立は難しい。今後取り得る最善の道はG8プラス新興5カ国を強化して「G13」として制度化し、世界的な課題に取り組むための中核的なグループにまとめ上げることだ。

 その場合、G20を直ちに解体し、G8もいずれも役割を終えさせることが有効な手段となる。秩序ある方法で有力新興国をグローバルガバナンスの中核に参加させることができるためだ。経済や戦略面での国際均衡をどう取っていくのかという、世界が直面する課題に対応していくうえでも必要なプロセスとなる。

 しかし、新しいグローバルガバナンスの体制を実効あるものにするには、現在のルールの大枠を変えなければならない。現行の枠組みでは「持てる者」(主要国)と「持たざる者」(新興国)の分断が固定化され、全13カ国による集団的な意思決定が難しいからだ。

貿易促進へ日印協力を

 いずれにせよ、主要経済国として台頭し、世界での生産や貿易などのシェアが増え続けると予想される中国やインド、南アフリカ、ブラジルなどを除外したG8はもはや適切な枠組みとはいえない。有力新興国が秩序ある変化を遂げられるよう、グローバルガバナンスの枠組みの中に組み込んでいく必要がある。

 グローバルガバナンスの中核がどんな構成や性格になろうと、日本とインドは重要な役割を担う。両国は、金融危機の再発防止を目指す金融セクター改革でも協力が可能だ。WTOの有力メンバーとして、ドーハ・ラウンドを妥結へと導くこともできる。食糧安全保障に対する不安を払しょくして、多国間の貿易秩序に農業を組み入れる合意にも道を開くことができる。

 日本とインドがやるべきことは、台頭しつつある新たなグローバルガバナンス体制の改善を進めることだけではない。国連の場において政治・経済問題についての公式なシステム改革を呼びかけ、国連安全保障理事会の拡大に向けても共同の努力を続けるべきだ。

 これらの課題に取り組むことで、日本は変化する世界経済の勢力バランスに応じた新しいグローバルガバナンスの仕組みを構築していく先駆者となれる。国際社会からの信頼も勝ち取ることもできる。

−−Rajiv・Kumar(ラジブ・クマール氏)−−
 1951年生まれ。82年英オックスフォード大学博士号取得。アジア開発銀行エコノミスト、印財務省経済顧問、印産業連盟チーフエコノミストなどを経て2006年からインド国際経済関係研究所所長

※9月22日付日本経済新聞朝刊・特集面記事より引用。PDFファイルはこちら

日本経済研究センター・小島明特別顧問の提言「日本は新興国と先進国の橋渡し役 担え」はこちら
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