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JCER 中国・アジアウォッチ

北朝鮮と東南アジア(中)
つまずいた北朝鮮の「南南協力」戦略−事件でマレーシアとの関係にしこり

2017年4月6日発表

李燦雨・特任研究員、 伊集院敦・首席研究員

概要

北朝鮮の金正男氏がマレーシアで殺害された事件で、両国政府は遺体を北朝鮮に引き渡すことなどで合意、北朝鮮に足止めされていたマレーシア国民も帰国した。これにより、世界の注目を集め、両国の非難合戦に発展した事件の真相解明は事実上、困難になったと見られている。外交関係上は交渉のヤマ場を越えた格好だが、事件は両国関係に大きなしこりを残す結果となった。金正恩政権はマレーシアを経済・技術協力の重要拠点と位置づけていただけに、対外戦略上も大きな打撃となる。

【ポイント】
@北朝鮮にとってマレーシアは発展途上国同士の経済・技術協力である「南南協力」の戦略上、重要なパートナー国だった。政権交代期は取引が低迷したが、金正恩政権2年目の13年から貿易が徐々に回復してきていた。

A北朝鮮国籍者へのノービザ渡航を認めていたマレーシアは北朝鮮にとって、単なる貿易相手ではなかった。外貨獲得のための労務輸出などが行われていたほか、非合法の工作を含め多角的な活動が展開されていた。

B両国は外交交渉を通じて一応の合意に達したが、ビザなし渡航を再開し、以前のような関係を取り戻すのは容易ではなさそうだ。事件によって北朝鮮が受けたダメージは大きい。

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(上)「揺れる「非同盟」の外交と経済関係−「南南協力」掲げるも制裁で貿易減少へ」(李燦雨、3月6日)
(中)「つまずいた北朝鮮の「南南協力」戦略−事件でマレーシアとの関係にしこり」(李燦雨、伊集院敦、4月6日)

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