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Discussion Paper 92 2006.6

景気循環と産業別雇用変動




飯塚信夫・日本経済研究センター主任研究員

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概要

 1990 年代以降の景気循環局面において生じた(1)平均的にみるとほぼゼロないしマイナスという構造的な伸び率の低下(2)経済変動に対する感応度の高まり、という雇用変動の2つの特徴について、最もカバレッジの広い雇用指標である『労働力調査』の就業者数を用い、産業別の変動を重視しながら、第1 次石油ショックから近年までのデータを用いて分析した。
 雇用の伸び率低下、経済変動に対する感応度の高まり、産業別付加価値ウエートと就業者数ウエートの関係、労働分配率の変動についてファクトファインディングを行った。それを踏まえ、産業別のパネルデータを用いた雇用調整関数を推計したところ、マクロデータを用いた推計では明確に現れていた1990 年代の2つの特徴が、パネルデータを用いると表れないという結果となった。さらに、労働分配率の調整過程を推計に織り込むと、雇用伸び率トレンドの低下はさほど大きなものではなかった可能性も伺えた。
 分析結果を踏まえると、長期間にわたる景気回復によって労働分配率の高止まりが修正され、それが企業の雇用過剰感を解消、結果として雇用が緩やかな増加トレンドに戻った、ということが近年の雇用回復の姿ととらえることができる。
 一方、1990 年代の雇用減少の主役が製造業であったこと、その製造業が米中の堅調な景気と割安な円高で息を吹き返し、雇用を増やす余力が出てきたことが、近年の雇用の本格回復の背景にある点には留意が必要である。アジア諸国との競争や米国経済の先行き不透明感を踏まえると、海外経済に依存した雇用回復が持続的かどうかには疑問が残る。
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