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Discussion Paper 137 2012.4

実質値下げが招く「デフレの罠」
―原価・人件費抑制と売り上げ低迷の悪循環に―




愛宕伸康・日本経済研究センター研究本部主任研究員(短期経済予測主査)

全文/Discussion Paper No.137全文/Discussion Paper No.137

要 旨

 わが国が陥っている「デフレの罠」の背景については、金融政策の有効性や長期的な需要不足、「負の生産性ショック」といった供給側から見た構造問題など、マクロ的な観点から多くの研究がなされてきた。しかし、そもそも価格を設定しているのは企業であり、その価格設定行動を丁寧に分析することが、長期デフレの原因を解明する上で極めて重要である。

 本稿では、名目(表面)価格を据え置くという企業行動が、「品質調整」という物価指数を作成する際の統計処理を通じて、物価指数の緩やかで安定的な下落を引き起こしていると考える。企業は、国内市場が伸び悩むなかで、製品性能の向上に伴うコスト増を名目価格に転嫁できないため(「実質値下げ」)、生産性の引き上げによってそれを吸収せざるを得ず、原価低減・人件費抑制姿勢を緩めることができない。それが所得環境の悪化、ひいては売り上げ低迷という形で再び企業に跳ね返り、ますます名目価格引き上げを困難にしている。これが「デフレの罠」の基本的なメカニズムである。

 こうした企業行動は、全要素生産性の分析からも確認できる。すなわち、全要素生産性を分配面から分解すると、2000年代入り後、生産性を向上させて価格を抑制する傾向が強まっているほか、円高局面では、収益や賃金の減少を通じてデフレ圧力が強まっている姿が浮き彫りとなった。
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