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Discussion Paper 143 2015.3

対内直接投資の決定要因
―日本の対内直接投資残高倍増は可能か―


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服部哲也・日本経済研究センター特任研究員/拓殖大学政経学部教授 、舘祐太・日本経済研究センター研究本部研究員

全文/Discussion Paper No.143全文/Discussion Paper No.143

要 旨

 対内直接投資が投資受入国に与えるプラスの効果が広く認識されるようになり、日本の対内直接投資をどう増加させるかが政策課題であると考えられるようになってきた。政府も、2020年までに日本の対内直接投資残高を倍増させ、35兆円へ到達させることを目標に掲げている。 海外直接投資は大別すると、販路獲得を求め投資国に生産拠点を設立する水平的直接投資と、生産工程を新興国などに移す垂直的直接投資に分けられる。多国籍企業の行動を、設計などの知識サービスを生み出す本社を中心に説明する知識資本モデルは、経済規模、輸送費用、要素賦存量などにより、均衡において、企業が水平的直接投資と垂直的直接投資をどのように選択するのかを理論的に説明する。そこで、2005〜2012年において、日本への海外直接投資が多いOECD上位16ヵ国及び日本について、知識資本モデルに基づいて、対内直接投資の決定要因についての推計を行ったところ、同モデルが想定する符号条件とすべて一致し、概ね有意であるとの推計結果を得た。
 得られた推計結果を基に、2020年までに日本の対内直接投資残高を35兆円へ倍増させることが可能であるのか、シミュレーションを行ったところ、従来のトレンドを延長したベースラインでは同目標に届かないが、2020年にかけて、スイス並みに投資コストを削減し、専門技術・管理者比率を引き上げることにより、達成可能であることが分かった。
 そのためには、何が求められるのか、日本とスイスの投資指標の各項目を比較するとともに、専門技術・管理者比率と労働、教育、技術に関する15の指標との順位統計量を求めて検討を加えたところ、解雇規制や経営大学院の質といった労働市場や教育制度について、日本の改善余地が大きいことが確認された。
 したがって、2020年までに日本の対内直接投資残高を倍増するという目標を達成するには、日本の労働市場、教育制度についての改革をさらに推し進めることが必要である。また、これらの改革を推進させることは、同時に、国内・国外を問わない企業の新規参入を促進し、日本全体の収益性を高めることにつながるだろう。
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