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Discussion Paper 144 2016.7

付加価値貿易から見た比較優位の変化


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服部哲也・日本経済研究センター特任研究員/拓殖大学政経学部教授 、下井直毅・多摩大学経営情報学部

全文/Discussion Paper No.144全文/Discussion Paper No.144

要 旨

 グローバル・バリュー・チェーンが構築されるようになると、各生産工程で生み出された付加価値が中間財として国境を越えて取引される度に輸出額が計上される二重計上の問題などが大きくなり、貿易統計による輸出総額を見ただけでは、国際的な生産工程間分業が進展する中での貿易の姿を正確に把握することができなくなっている。
 そこで、本論では、海外で需要される財・サービスの付加価値がどこで生み出されたのか、源泉となる国や産業に基づいて推計した輸出額である付加価値輸出を推計し、付加価値輸出を用いて顕示比較優位指数を求めることで、グローバル・バリュー・チェーンが構築される中での各国の産業別の比較優位の変化がどうなっているかを論考した。
 その結果、付加価値輸出で推計した顕示比較優位指数で見なければわからない以下の点が明らかになった。第一に、付加価値輸出で測定した顕示比較優位指数で見ると、日本の主要産業である輸送用機械については、2010年に韓国は既に日本を追い抜いている。第二に、電気機械について、付加価値輸出で計測した顕示比較優位指数で見ると、日本は比較優位を失いつつある一方で、韓国は依然として中国を上回っており、その差は縮小していない。第三に、付加価値輸出で測定した顕示比較優位指数で見ると、ビジネスサービスについて、日本は比較劣位にあるが、輸出総額で測定した顕示比較優位指数では比較劣位にあるドイツが、付加価値輸出で測定した顕示比較優位指数では、比較優位を持っている。
 さらに、付加価値貿易で見た比較優位とグローバル・バリュー・チェーンへの参加の程度の関係を見ると、製造業において、両者の正の相関が強まる中で、日本のグローバル・バリュー・チェーン参加指数は小さく、特に、グローバル・バリュー・チェーンの後方の生産工程への参加を意味する後方参加指数が小さいという課題が確認できる。

【関連情報】
※21日付日本経済新聞朝刊・経済教室面に服部研究員寄稿の「付加価値基準でみた貿易分析 日本、部品国際調達に遅れ サービスと製造業一体に」が掲載されました。
※筆者らが参加した「メガ・リージョナリズムの時代研究会」で、4月に開催したセミナー講演録はこちら
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