日本経済研究センター経済予測班では、経済予測・分析の中で見えたトピックスに焦点を絞ったリポート、「経済百葉箱」を創刊します。経済はしばしば気象にたとえられますが、「百葉箱」はご存知のように、気温や湿度を正確に測定するための箱であり、「観測」の原点となる存在です。本リポートは随時掲載します。
2012年3月27日発表 上田翔一 、高久玲音 、<監修>短期予測班主査:愛宕 伸康
▼ ポイント ▼日本は『デフレの罠(デフレ均衡)』に陥っている可能性が高い。本稿でいう『デフレの罠』とは、「売上低迷」→「財・サービスの性能向上分を価格に転嫁しない企業行動(実質値下げ)」→「原価逓減・人件費抑制」→「厳しい所得環境」→「売上低迷」→・・・という悪循環のこと。わが国企業は、国内市場が伸び悩むなかで、投入する新製品の名目(表面)価格を据え置く傾向にある。消費者もそれを当然視しており、新製品に関して価格据え置きがある種の“呪縛”となって値上げを困難化させている。たとえ名目価格が横這いでも、性能向上に伴うコスト増が価格に反映されなければ、統計作成上は「実質値下げ」として物価指数を押し下げることになる。名目価格を据え置く結果、企業は性能向上に伴うコストの増分を生産性引き上げによって吸収せざるを得ない。そのため原価逓減・人件費抑制姿勢が緩むことはなく、所得環境改善の遅れ、売上の低迷という形で再び企業に跳ね返ってきている可能性が高い。こうした名目価格据え置きの“呪縛”は、単に金融緩和を強化するだけでは解けない。企業にとって問題の本質は売上の低迷であり、名目成長率を拡大させるための地に足の着いた議論をしなければ、いつまでも『デフレの罠』から抜け出すことはできない。.