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2016.12 金融研究

2016年度金融研究班報告@-1:長短金利操作付きQQEの検証
新政策導入も、国債購入期限は「17年夏」で変わらず―国債、ETF、為替関連の損失が財務の健全性を脅かす恐れ―

報告@-1:長短金利操作付きQQEの検証
新政策導入も、国債購入期限は「17年夏」で変わらず―国債、ETF、為替関連の損失が財務の健全性を脅かす恐れ―

左三川郁子、橋えり子、齋藤哲、白石翠、野村あすか、柏尾康寿、<監修>金融研究班 総主査:岩田一政
 
日本銀行は2016年9月、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策を導入し、金融政策の操作対象を「量」から「金利」にシフトした。量的拡大に限界が迫る一方、2%の物価安定目標は未達である。日銀は短期決戦から持久戦へとレジーム・チェンジを図ったが、国債買い入れの限界は17年夏にも訪れる。今後は、日銀が保有している国債や上場投資信託(ETF)、外国為替関連の損失が財務の健全性を脅かす恐れがある。日銀の損失は財政コストとして、納税者に跳ね返ってくる。

16年度上半期決算は剰余金が2,002億円の赤字に
(資料)日本銀行『財務諸表等』各事業年度版

〈要旨〉
○ 日銀は2016年9月、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策を導入し、金融政策の操作対象を「量」から「金利」にシフトした。量的拡大に限界が迫る一方、2%の物価安定目標は未達で、日銀は持久戦へとレジーム・チェンジを図ったとみられる。短期金利だけでなく、長期金利も操作し始めたことで、長期金利はひとまず下げ止まった。11月には米大統領選後の国内金利の上昇を受け、初めて「指し値オペ」を実施した。応札はなかったが、日銀が考える「金利の上限」が市場に示された形となった。

○ 日銀が過去に購入した、比較的高い金利の国債が次々と償還を迎え、低金利の国債に買い替えられている。「池の中のくじら」となった日銀は大規模な国債買い入れを続けているが、供給(国債の新規発行と金融機関の売却可能額)が限られるため、17年夏にも買い入れの限界にぶつかる。最近ではETF市場でも日銀が最大のプレーヤーとなっており、「官製相場」との批判も聞こえてくる。ETFの保有が増えると、日銀は株価下落で引当金を積む必要がある。このとき保有国債に関連する損失や外貨建て資産の為替差損が膨らむと、日銀の資本を毀損しかねない。一部の企業ではすでに日銀が事実上の筆頭株主となっている。このことが株主によるコーポレートガバナンス機能を弱め、いわゆる「ゾンビ企業」の存続につながるリスクがある点にも留意する必要があろう。

○ 日銀は物価目標達成後の出口に備えるため、法定準備金や引当金を積み増している。日銀が今のペースでマネタリーベースを拡大し続けると、出口で発生する利払い負担(超過準備に対する付利の支払い)は、経常利益と自己資本を合計した金額を超える可能性もある。2016年4〜9月期決算では、企業の最終損益にあたる当期剰余金が中間期としては4年ぶりの赤字に転落した。将来、日銀に発生する損失や債務超過のリスクに、日銀と政府は今のうちに備える必要がある。日銀の損失は財政コストとして、納税者に跳ね返ってくる。財政の持続可能性を高めるためには、国債管理政策を含めた財政運営の再検討も必要だ。財政当局がアクティブ、金融当局がパッシブに行動するフィスカル・ドミナンスの状況に陥ると、通貨に対する信認が低下し、ハイパーインフレにつながる可能性がある。カナダではかつて、中央銀行による国債の直接引き受けがデフレ脱却につながった時期がある。しかし、その後はインフレに悩まされ、インフレ目標の採用に踏み切った。
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