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金融研究

2016年度金融研究報告
狭まる金融政策の選択肢

2017年3月31日発表

金融研究班

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◆2016年度金融研報告「狭まる金融政策の選択肢」を公表しました

 金融研究班は2016年度も日本銀行の金融政策に注目した。2013年4月の量的・質的金融緩和(QQE)政策以降、黒田東彦総裁の下で日銀が打ち出してきた一連の「QQEシリーズ」は、16年9月にそれまでの「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に刷新された。マイナス金利政策が8カ月という短命に終わっただけでなく、マネタリーベースの「量」を重視する金融政策運営から、「金利」を重視するものへと、レジーム・チェンジが図られた。
 日銀は現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下でも、当座預金(政策金利残高)の金利をマイナスに据え置いたままである。にもかかわらず、マイナス金利政策と呼ばなくなったのはなぜか。政策運営の軸足を「量」から「金利」に移すことになった背景に何があったのか。
 かつて、短期金利は中央銀行が操作するが、長期金利は市場で決まるというのが中央銀行界の常識だった。しかし、日銀は今回、短期金利に加えて長期金利も操作すると宣言した。「名目の金利がゼロ%以下に下がることはない」というそれまでの常識を打ち破ったマイナス金利政策に続いて、イールドカーブ・コントロール(YCC)もまた、バブル崩壊後の日本の「非伝統的な」金融史に残る、重大な出来事となるに違いない。
 量の拡大にコミットすれば、金利をコントロールすることはできない。他方で、金利にコミットしながら量をコントロールすることもまた、不可能である。長期金利を0%に誘導しようとすれば、長期国債の購入量は後から(内生的に)決まるからである。長期金利を一定に維持する政策は、物価変動に対する財政政策の役割を高めることになる。将来の通貨発行益を減らすヘリコプターマネーや財政余剰の先行きに注目するFTPL(物価水準の財政理論)が浮上する所以である。
 日銀は本当に10年物国債の利回りを長期間0%に維持できるのか。量から金利にシフトしたことで、国債買い入れの限界は遠のいたと言えるのか。現行の金融政策に代わる、あるいは補完する政策手段は他に考えられないのか――私たちは自問を繰り返しながら、あるときは歴史を紐解き、あるときは海外の事例に当たることで答えを求めた。例年のことだが、データに基づく丁寧な分析をできる限り心がけたつもりである。
 短期決戦型から持久戦へと態勢を立て直した日銀の金融政策には、リスクや副作用が予想される。副作用はやがて、国民である私たちの身に降りかかるだろう。だからこそ、壮大な社会実験とも言われる異次元の金融政策について、効果とリスクの両面から検証し続けることの意義は大きいと考えている。

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