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2014.12 産業ピックアップ

消費増税しのぎ じわり浮上−非製造に人手不足の影

 日本経済研究センターでは、委託研修制度の一環として産業調査班を設け、産業レベルからの景気判断や経済分析に取り組んでいます。いくつかの業種をピックアップ、景気の断面を探ります。

 停滞していた景気に明るさが点在し始めた。新車や衣料品には持ち直しの兆しが見え、食品スーパー、工作機械、航空などは上り調子だ。リード役の自動車は円安で収益が上振れ、部品にも恩恵が及ぶ。増税をしのぎ景気はじわり浮上に向かい始めている。

 半面、人手不足の影が非製造業に現れている。建設、運輸は担い手が高齢化、人材確保に頭を痛める。大手スーパーやコンビニが出店を見送る一因にも建設・小売業界の人手不足がありそうだ。介護職員の不足の傍らで家族が仕事をやめる介護離職も増えている。人手不足が事業拡大や景気回復に水を差す恐れもある。

 更新履歴 
・日銀短観ポイント説明会で産業ピックアップの分析を紹介しました(2014/12/16)
   当日の配布資料、日銀短観14年12月調査に関するレポートは
   こちら をご覧ください。

・以下のリポートを公表しました (2014/12/12)
   自動車: 円安進展も海外生産は拡大――国内市場に明るさ点在
   機械: 外需堅調、円安で収益増やす――個性で競争力磨く企業も
   運輸: 航空、外国人とLCCで賑わい――陸運は付加サービスに活路
   建設・不動産: 非住宅建築、受注は十分――オフィス賃料は一段と上昇へ 
   小売: 節約志向強める消費者――大手に出店見送りの動き
   介護・福祉: 介護市場、着実に拡大――現場と家族にはきしみも
   円安効果の明暗を探る《産業連関表分析》: コスト増が90年代比約2倍に――足元は原油安が救い

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産業ピックアップ リポート


概要   産業調査班
自動車: 円安進展も海外生産は拡大――国内市場に明るさ点在江連謙太郎(足利銀行より派遣)
大手8社は増益基調を維持。円安で一段の収益上振れもあり得る。しかし、輸出台数は今後も増えそうにない。最大の輸出先、北米などで生産能力の増強が進むからだ。国内市場は夏場に底打ち、商用車・輸入車などが堅調で、明るさが点在している。リコール問題は事態の収拾に手間取るようだと、北米でのシェア低下などにつながる恐れもある。
機械: 外需堅調、円安で収益増やす――個性で競争力磨く企業も後藤広樹(秋田銀行より派遣)
消費増税で鈍化していた機械受注は、内需が下げ止まりの兆し。外需は大型の化学プラントや米中向けなどが堅調だ。米国の製造業回帰が日本からの工作機械輸出の追い風になっている。他の加工型産業と同様、海外現地生産が拡大し、円安でも輸出数量の伸びは限定的だ。代わりに輸出単価引き上げを収益増につなげている。全体としてはなお収益率が海外に見劣りするが、個性で競争力を磨く企業もある。
運輸: 航空、外国人とLCCで賑わい――陸運は付加サービスに活路田原昌(東日本銀行より派遣)
消費増税後も旅客需要は堅調だ。特に外国人観光客の増加と格安航空会社(LCC)の参入で、航空は国内線・国際線の客数が足並みを揃えて増加、賑わいを見せている。一方、貨物は増税の反動減に加え、夏の天候不順などの影響で、輸送量が伸び悩んだ。慢性的な人手不足が続くなか、宅配など自動車系貨物は人件費などの上昇から値上げに踏み切る。陸運大手は、大都市や空港近くに大型物流施設を建設、多様な物流サービス提供で活路を開こうとしている。
建設・不動産: 非住宅建築、受注は十分――オフィス賃料は一段と上昇へ瀬戸佐智子(横浜銀行より派遣)
オフィス・店舗など非住宅の建築着工は足元で足踏みの様相。だが、建設大手は十分な受注を抱え、悲観の色はない。むしろ関心は人手不足を前提に、先行きの工事を安定的に確保・消化することに移っている。不動産はオフィスの空室率が順調に低下、来年にかけ一段の賃料上昇が見込めそうだ。
小売: 節約志向強める消費者――大手に出店見送りの動き石村誠一(東邦銀行より派遣)
消費増税後の戻りはまだら模様だ。駆け込みが大きかった業態では、反動も長引いている。節約志向を強めた消費者は、割高な外食を敬遠。内食ニーズに応える食品スーパーは堅調だ。業績が下振れした総合スーパーやコンビニでは建設費の高騰もあり、出店見送りの動きが出ている。
介護・福祉: 介護市場、着実に拡大――現場と家族にはきしみも山岸和広(八十二銀行より派遣)
介護関連企業の業績は好調だ。銀行も成長産業として融資拡大を図っている。一方、現場では人手不足が依然として深刻。介護を理由にした家族の「介護離職」も増えている。財政負担を下げるための介護報酬抑制や、カネのかかる施設よりも在宅で介護をという国の方針が結果として、家族の負担を高める方向に働いている可能性がある。
円安効果の明暗を探る: コスト増が90年代比約2倍に――足元は原油安が救い田原健吾・田原昌
円安は歓迎で、円高は敬遠。そんな単純な図式が当てはまらなくなっている。海外現地生産の進展で円安でも輸出数量は伸びにくくなった。一方、資源だけでなく電子計算機などの加工品でも輸入が増えている。円安による恩恵と負担はどう変わったのか、産業連関表で試算した。輸出金額の押し上げ効果はそれほど変わらない一方、輸入品の値上がりによるコスト増は95年比2倍近くに膨らんでいる。足元の原油安がエネルギー多消費型産業を中心に救いになりそうだ。


※本リポートは年2回(不定期)の公表です。
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