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2016.3 (地域分析) 産業ピックアップ

生き残る地域の条件 サービス産業の「引力」がカギに

 企業はどこに立地し、人はどこに移りそして住むのか。本報告書全体を貫いているのはこの問いだ。「消滅」が危惧される自治体がある一方で、人が集まる都市があり、製造業が衰える中にあっても工場が増える地域がある。そこには、なんらかの法則性が作用しているはずだ。
 人口と産業の「集積の力学」を直近のデータで整理した上で(第1〜2章)、マクロの中期予測を地域に投影し産業構造の変化とともに47都道府県がどう変わるのか予測を試みた(第3章)。最後に@高齢者の移住、A製造業の立地、B好対照をなす2都市(福岡と北九州)のケーススタディから、人と企業に選ばれる地域の条件を考える(第4〜9章)。
人口減とともに地方では生活を支えるサービス業が撤退する「消える産業」の可能性も分析した。
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産業調査報告  ※第1-9章一般公開(2016年5月30日) NEW!

 
全文
はじめに・目次・執筆者一覧   
第1章 人口で健闘した経済圏は―都市の盛衰、成長産業が左右
 
高野 哲彰、今井 亮平
折井 聡、山田 浩司
人口を増やした地域の共通項を探ると、上位に来る都市は電機から自動車の集積地へ変化、足元では福岡市や仙台市などブロック拠点都市が優位に立つ。従来、都市に流れ込むのは進学や就職で移動する若年層(15〜24歳)が多かったが、中堅層(25〜39歳)も都市に集まる。背景には周辺部の人口減や都市部の雇用機会・利便性がある。
第2章 人口減進み「消える産業」も―「密度」が握るサービス業の命運
 
高野 哲彰、内山 翔
原 政樹、田中 啓亮
人がいればそこに産業が集まるという人口→産業の関係と、産業(働き口)があるから人が集まる産業→人口の関係がある。小規模の経済圏ほど、製造業雇用の増加が人口増に結びつき、逆に人口減が進むとサービス産業の雇用が加速度的に失われる。人口の「密度効果」がサービス業の命運を握っている。
第3章 2030年都道府県予測―地域間格差が拡大
 
高野 哲彰、篠崎 智明
打田 匡人、河井 信典
産業別中期見通しを、各地域の産業分布に反映、人口見通しも織り込み、2015〜30年の都道府県予測を試みた。同期間の成長率は、1位が沖縄県、2位が東京都、3位が愛知県だ。人口が集積するか、核となる製造業が立地する県が伸びる。成長率が下位の県は、産業構造が非製造業に偏っており、人口減の影響が色濃い。規模の大きい県が伸び、小さい県が停滞し、格差が拡大する。
第4章 「地方で介護」を問う@―シニア移住、「近郊型」が有力
 
打田匡人、篠崎智明
河井信典
日本創成会議が提唱する、相対的に医療介護施設が確保しやすい地方への移住が現実的か、検証した。地域ブロックを越えた高齢者の移動が少なく、高齢になるほど家族との距離が近い大都市近郊への移動が多い。創成会議が推奨する遠隔の候補地は、家族との近さや街としての賑わいという点で、移住先としての条件を欠く。
第5章 「地方で介護」を問うA―東京圏、既存ストック活かせ
 
河井 信典、打田 匡人
篠崎 智明
東京圏内での高齢化対応は可能か。創成会議が移住を訴える前提となっている首都圏での介護施設不足は、傾向的な施設の増設を見込んでいない点で不自然だ。空きが目立つUR(都市再生機構)の団地や、今後廃校が増える学校を施設に転用すれば、東京圏での充足は十分可能だ。
第6章 製造業はどこへ@―「交通立地」で新たな集積
 
山田 浩司、折井 聡
今井 亮平
近年製造業の立地が分散傾向にある1つの要因として、開通した幹線道路の周辺に工場の立地が増えている点に注目した。好例が、大阪と名古屋の間をつなぐ新名神高速道に沿う滋賀県甲賀市と、北関東自動車道のそばにある栃木県鹿沼市や群馬県伊勢崎市だ。ともに、既存の幹線道路を横につなぐことで、圏域の潜在力が開花、工場や物流企業の立地が増えた。
第7章 製造業はどこへA―工場誘致「圏域の力」で明暗
 
折井 聡、今井 亮平
山田 浩司
近年増えた電機産業の撤退事例に注目、その後を追った。ソニー撤退後も人口を増やした岐阜県美濃加茂市や、シャープ不振でも意外に堅調な三重県亀山市。これらの「克服型」はともに有力な経済圏の一角に位置し、域内に雇用の受け皿があった。逆に、秋田県にかほ市や長野県伊那市では、それぞれTDKやNEC撤退後、周辺に頼る他の集積がないため衰退を止められなかった。
第8章 福岡・北九州「二都物語」@―なぜ賑わう 西の都・福岡の活力
 
田中 啓亮 、原 政樹
内山 翔
福岡には「女性が女性を呼ぶ」循環が働いている。女性の働き手が多いサービス産業が多数立地、女性を顧客とする小売店や個人サービスが増え、その賑わいに引き寄せられさらに女性が流入する。福岡市は、(1)アジアとの結び付きが強い九州の活力を間接的に吸い上げている、(2)起業が多く開業率が高い―点も経済の推進力になっている。
第9章 福岡・北九州「二都物語」A―製造業の新集積目指す北九州
 
原 政樹、田中 啓亮
内山 翔
2004年からの10年間で、北九州経済圏は製造業雇用で全国有数の伸びを示した。自動車産業は愛知、神奈川に次ぐ第3極となり、一般機械の事業所も増えた。北九州は福岡に対しては人口の出し手だが、九州他県に対しては受け手で、製造業では「引力」を保っている。東九州自動車道の全面開通で物流面の優位性が高まり、ものづくり都市として一層の成長を遂げる潜在力を秘める。
<2030年都道府県予測>47都道府県の姿
<参考資料>経済圏一覧・経済圏別人口増加率・消滅可能性産業
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