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日本経済研究センター Japan Center Economic Research

最終更新日:2010年5月6日
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読むゼミ

「少子化解消への官民の対応
  ―抜本改革迫られる育児・仕事の両立支援策」
 (2010年4月21日開催)

小渕 優子・衆議院議員(前少子化担当相)
草刈 隆郎・日本郵船取締役相談役
前田 正子・横浜市国際交流協会理事長(元横浜市副市長)
宇南山 卓・日本経済研究センター特別研究員、神戸大学大学院経済研究科准教授
コーディネーター)小林辰男・日本経済研究センター主任研究員

少子化への恒久対策、避けられない財源論
―子ども手当だけでなく、子育て環境の整備を

【講演要旨】
  日本経済研究センターが2009年度取り組んだ「若手研究者による政策提言プロジェクト」の成果を巡り、政策当局者も交えて議論していただくシンポジウムの第2弾として、中長期的に経済成長基盤を揺るがす問題である「少子化対策」を取り上げた。 女性が安心して育児、仕事を両立できる環境について小渕優子・前少子化担当相は「早急に手を打つ必要がある。(企業や社会の)意識改革が一番重要」と述べた。草刈隆郎・日本郵船相談役は「(巨額な)子ども手当の仕組みについて見直すべきだ」と提言した。前田正子・元横浜市副市長は収入や仕事が安定しないワーキング・プア状況にある若者の生活を安定させることも重要な少子化対策になると主張した。 冒頭、当センター特別研究員である宇南山卓(神戸大学大学院経済研究科准教授)が、プロジェクトでの提言である「少子高齢化への政策対応、女性就業支援策の改革」の問題意識について導入報告。その後の議論では、少子化対策は党派や官民の立場を超えて取り組むべき最重要課題であることで意見が一致した。

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左から 小林辰男、小渕優子氏、草刈隆郎氏、前田正子氏、宇南山卓


都市部の働く女性の結婚促進を

宇南山 少子化とは1人の女性が産む平均的な子供の数が減っているという事実を指すが、その最大の原因は結婚する女性が減少していることにある。日本では婚姻外で生まれる子供は少ないため、結婚の減少はそのまま子供数の減少につながる。少子化対策で最初にすべきことは結婚を促進することになる。
 これまでの少子化対策は結婚した女性が何人、子供を産むかに焦点を当ててきた。しかし独身者に結婚をどのようにしてもらうかを考える必要がある。1人の女性が何人の子供を産むかを示す合計特殊出生率は1970年2.13人から2005年には1.26人にまで大きく減少しているが、その大部分は、結婚する女性の数の減少に起因している。主体的に結婚しないことを選択する傾向は、特に「都市部に住む大卒以上のフルタイムで働く女性」に顕著に見られる。女性の大学進学率の急上昇、それに伴う男女間の賃金格差の縮小がその背景にはあり、都市部に住む高学歴の女性にとって、結婚することの「採算」が合わなくなった、すなわち独身の方が少なくとも経済的には豊かな生活を送ることができる可能性が生じたことが挙げられる。
 政府の結婚促進策に重要なことは、結婚が「合理的な選択」になるようにすることだ。対策の一つに既婚者への補助金があり、子ども手当はこの枠組みに該当する。9割以上のカップルが結婚すると子供をもうけるため、手当は結婚への補助金になり結婚促進策となりうる。だが月額2万6000円(現在は1万3000円)という金額は、人生のキャリアと天秤にかけるほどか疑問で、大きな効果は見込めない。財政上の観点からは、これ以上の金額を結婚促進に費やすのも現実的とは言えない。
 結婚後も女性がフルタイムでワーク・ライフバランスを保ちながら働くことができる環境整備が重要。(出産・育児により)結婚後に離職する割合を引き下げることが、(働く女性の)結婚促進に最も有効な手立てになると考える。
 少子化問題への政策提言として「保育所の整備」を考えている。従来の提言との違いは、保育所整備状況の評価にある。よく利用される「待機児童数」は女性が実際に結婚・出産した結果であり、それだけで保育所問題を適切に表し切れているとは言いがたい。これから結婚する女性にとってより参考にできる指標とすべく、未婚女性の潜在的な保育所への需要を反映させた「潜在的保育所定員率(保育所定員/25〜34歳女性の人口)」という新たな概念で保育所の現状を評価してみた。結果、都市部の保育所数がより深刻に不足していることが分かった。都市部で大量に保育所を新設することが具体的な提言の内容となる。都市部の潜在的定員率(16.20%)を全国平均(23.20%)に引き上げるという仮定で試算すれば、都市部だけで28万人の保育所の定員増、5600億円の追加経費が必要となるが、都市部の未婚率が約3.5%低下し、出生数は21万人増、合計特殊出生率1.62まで回復すると考えられる。

難しい企業・社会の意識改革

小林 行政や企業における経験を踏まえ、少子化問題を克服する難しさは?

小渕優子・衆議院議員(前少子化担当相)
小渕 20年来、国は少子化政策を行ってきていたが、出生率が下げ止まらない状況は続いている。今後は子育て支援のみならず、個人的な問題として敬遠されてきた結婚支援も重要なポイントになってくる。現在の非婚化が、若者の経済的不安定にも起因しているとすると、若者支援から対策をスタートするなど、総合的に解決策を練っていく必要がある。政府としてすべきことは大きく分けて3つあると考える。
 第1に経済的支援。少子化担当相在任中には、子供を授かってから出産するまでは財布を持たずにできる体制を作りたいと考え、妊婦検診の無料化や出産・育児一時金の拡充の実現に力を入れた。国公立大学の入学金が30年前と比較して実に16倍になるなど、子育てにお金がかかる。国が経済的に支援する必要はある。
 第2に保育所問題に代表される環境の整備。待機児童の減少のみならず、個々に抱える事情が異なる母親のさまざまニーズに応え、安心して働けるように保育所サービスを拡充・充実していかなければならない。
 第3に一番難しい問題だが、意識の改革が挙げられる。09年、育児・介護休業法が改正され、男性でも育児休暇を取得しやすい法的環境は整った。しかし男性の育児休業を企業がどう考えるか、職場内でどう受け止められるか、個々の意識次第である。これからは社会全体で、子供を育てていく意識を持たないといけない。男女共同参画社会基本法施行10年が経過し、女性の生き方の幅が広がった割に、男性の生き方の幅は広がってこない。意識改革は今後の大きな課題となる。
 少子化問題には大変な危機感を抱いている。第1次ベビーブームによって生み出された、71〜74年生まれの第2次ベビーブーマーが4年後には40歳代に入る。今後、出産適齢期の女性は減少する一方であり、少子化はますます加速する恐れがある。国民1人ひとりが少子化問題に危機感を持つ必要がある。

女性活用が企業に大きなメリット

草刈隆郎・日本郵船取締役相談役
草刈 少子化問題には、少子高齢化による社会保障の崩壊、また労働力人口激減⇒成長停滞⇒国民生活の低落という2つの大きなデメリットがある。経営者の立場からは、特に後者のデメリットに対して、女性活用による労働力人口の確保が大きなテーマとなる。今後は「女性パワー全開」実現企業が勝ち残ると、強く確信している。
 自身の経験を振り返ると、日本郵船入社当時は男性が総合職、女性が一般職と画然とした待遇差があり、女性は「お茶汲み・コピー取り」といった補助労働を行う存在と認識されていた。ところが70年代後半に業務が急拡大すると、男性社員は目前の仕事に追われ先行きを考える余裕がなくなり、優秀な女性社員は業務内容・待遇に意欲を喪失して退職。社員全体のモラルが低下する状況に陥った。そうした事態に直面したことで、83年に企業の競争力維持・向上すべく、業務改革運動が始まった。人事部課長の立場にあり、業務効率化の一環として、OA機器の利用促進とともに女性社員の業務の高度化に取り組んだ。日本郵船の女性活用の始まりだ。その後も、01年の職種統合を経て、今日ではすべて総合職採用、採用総数の30〜40%は女性となっている。海運というと男性の職場というイメージが強いが、女性船員の採用など無差別配置も始め、09年には女性初の執行役員も誕生した。各部門で女性は欠かせない存在になっている。女性が働きやすい環境を作るための制度も充実させ、育児休暇では女性は100%取得、02年には郵船チャイルドケア(企業内保育所)を設立、職場復帰支援プログラム、在宅保育利用サービスなど各種育児関係の制度も導入している。

若者の生活安定も不可欠

前田正子・横浜市国際交流協会理事長(元横浜市副市長)
前田 横浜副市長として03年からの1期4年間、自治体・地域社会の最前線で少子化問題に取り組んだ。待機児童の数をゼロに、子育てのしやすい街づくりをするという目標の下、医療・教育・福祉・子供関係を担当した。最前線に立つと、少子化問題といっても取り組むべき問題があまりにも幅広いことが見えてくる。4年間で認可保育所を116カ所増、約1万人の定員増を行ったが、待機児童は増加の一途であった。保育所は一部の問題を解決するに過ぎない。横浜市では毎年3万人ほどの子供が生まれるが、出産する母親の7〜8割が出産前に横浜市に引っ越してきて地縁・血縁のないところで出産・子育てを始めている。
 毎年、就学前児童の母親にアンケート調査を実施しているが、09年3月の調査では、育児負担に不安がある世帯が約7割、虐待の恐れがある世帯が約2割、一時保護を受けた児童は約800人との結果が出ている。母親が安心して子育てできるような支援や、子供の置かれているさまざま状況に対応した網羅的な対策が必要となるなど、新しい社会的ニーズが出現している。母子保健など医療関係は衛生局、育児相談は福祉局と縦割りであった組織を、子ども青少年局へと一本化して、人々のライフステージや抱えている問題ごとに網羅的に対応できるような体制作りに努めた。今日、家族・地域社会のケア機能が低下し、市役所がその役割を担うようになってきていることも、こうした社会的ニーズの多様化に寄与していると考えられる。
 とりわけ危機感を抱いているのが、職がない若者が増えていることである。横浜市では、15〜34歳の若者のうち約1割がニート・フリーターであり、20〜30代の男性の生活保護受給者の比率が増えてきている。これは、少子化の解消や結婚促進の前に、解決しなければならない問題である。こうした人々には、単なる経済的支援にとどまらず、生活を組み立てられる力をつける職業訓練などの援助も必要である。政策全般に言えることだが、現金給付だけではなく、現物給付も合わせてバランスと政策の優先順位付けは大切だ。

一層の社会進出で発言力が増大へ

小林 日本社会における女性の活用、少子化対策は、「総論賛成・各論反対」といった言葉が当てはまるのではないか。

小渕 社会進出する女性の数が少ないことが最大の理由であると考えられる。一般に意思決定の場における女性割合が30%以上ないと、女性の意見が受け入れられるのは難しいと言われている。国会議員の女性比率は概ね10%で推移してきた。いつの時代も女性の国会議員は少数派であり、女性関連の施策に関しては、党派の枠組みを超えて結束して臨んできた。その結果、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律 (通称DV防止法)」の成立などの成果も上げてきたが、もっと女性の数が増えると政策立案の幅が広がってくる。

前田 やはり一定の数の女性がいないと女性の活用は進まない。市役所では男女同権が保証されていることもあり、女性の志望者が多い。もともと市役所は保健師や保育士など女性を多く採用しており、最近の採用は、大卒職員でみると女性6割・男性4割の比率で女性が多数派になっており、40歳代以上のベテラン世代と若い世代の性別構成はまったく異なるものになっている。こうした組織構成では、職場で男女を選ぶ余裕はなく、女性が率先して仕事を引っ張らないと仕事が回らなくなる。女性職員の増加は、「管理職になりたがらない女性」という問題を引き起こしたが、市では管理職と出産・育児の両立を奨励することで対処している。育児休業が仕事上の問題となることも当然あるが、育児休業に伴う仕事の整理・引継は女性にとって社会人としての一つのステップアップとしてとらえていかないといけない。

草刈 少子高齢化に伴う労働力人口減少の問題の解決策として、@高齢者、A外国人労働者、B女性――とその活用が取り上げられてきた。中でも、企業にとっては女性を中核労働者として一層活用していくことが今後の課題となる。現在の日本の女性労働者の年齢別構成を見ると、出産が多い年代で女性就業者の数が減る「M字カーブ」に加え、30歳代に入ると女性の正規社員の割合が大きく減り、中核労働者として確保できていない。欧米諸国のように「M字カーブ」の平準化に努めるとともに、正社員として女性が出産後も働き続けられるような環境の整備が必要である。
 日本郵船にて女性活用を進めたときは、社内では業務改革の一環として実施したこともあり、大きな弊害はなかった。社外的には海運は男性の職場というイメージが定着していたため、女性の活躍の場があることをきちんとPRして、世間に浸透させる必要があった。早くから女性の活用を進め、男女が全く同じ評価制度の適用を受けるようになった。現在、特に若い世代の社員の間では、上司が男性か女性かによる意識の違いは見受けられない。半面、女性活用の動きが始まる前のベテラン女性社員は、いまだ仕事においても遠慮する面もあり、その点は課題として残っている。

宇南山卓・日本経済研究センター特別研究員、神戸大学大学院経済研究科准教授
宇南山 経済学者の立場から、女性の職場での活用を進めることには、大きく2つの効果が期待できる。第1に年金加入者の増加による年金財政の改善である。現在、退職者と現役世代の人数のバランスが取れていないことが年金財政へ悪影響を及ぼしているが、女性が働き出すことにより年金加入者が増えれば、問題は緩和の方向に向かう。第2に、女性の活用に伴う労働力人口の増加により、規模の経済が働くようになることが挙げられる。

少子化政策、バランス、仕組みの再考を

小林 安定的な経済成長と日本企業の終身雇用の前提の中では、社会保障は主に高齢者を対象として使用される言葉であった。しかし、昨今その前提が崩れ、子供や若者も社会保障の対象として議論され始めてきている。そうした状況で民主党の子ども手当を始めとする少子化対策についてどう考えるか。

小渕 子ども手当など新たな施策を除くと、現在、家庭・子供に割り当てられる国の予算は年間約1.6兆円程度であり、世界から日本を見ると、その額は少ない部類に入る。私の任期中に消費税率の引き上げ・社会保障への目的税化を議論してきた自民党内で、私は「(そのうちの)1%を子供たちに」をキャッチフレーズとして主張してきた。子供を対象にした手当は恒久的な予算として組むべきであり、安定財源である消費税が適している。買い物の都度、消費税1%見合いが子供関連で使われると意識することにより、国民1人ひとりが子供について考えるようになるといった副次的な効果も期待できる。消費税の1%、約2兆円の予算の枠組みの中で、幼稚園・保育園の無償化、中学生以下の医療費無料化を実現した上で、余った予算を児童手当の拡充に使える。
 それに対して、民主党政権は満額支給で5兆6000億円にも及ぶ現金給付の子ども手当を決定した。経済的支援は必要だが、すべてが現金支給というのはいかにもアンバランスな印象が否めない。現金支給で子供1人月額2万6000円は巨額すぎるのではないか。半分は現金支給、半分は保育園等の整備予算に回すなどの工夫をしてもいいのではないか。誰に対しても支給するのではなく、所得制限もしっかり議論しないといけない。
 予算の優先順位を考えると、巨額の現金支給が保育所等の整備といった現物支給の予算が削減される可能性もある。仮に、他の予算を削減しないと子ども手当の財源は赤字国債になる。これでは将来世代にツケが回り、少子化対策として、とてもプラスとは言えない。政策として重要なのは、現金支給とともに環境整備など現物支給も合わせて行いバランスを取ることだ。お金を配るだけで解決するというのは、政治の怠慢と言わざるを得ない。

草刈 高齢者関係社会保障費が60兆円を超える半面、児童関係社会保障費はまだ数兆円という極端な対比がある中で、子供に使うお金という意味では5.6兆円の予算水準自体は決して過大とは言えない。ただ現在の制度設計では、子ども手当の使途が限定されず、子供を育てるサポートにならない可能性がある。看過できない問題だ。例えば、「保育教育目的限定利用券」などの形で、子ども手当がその目的に適った支出につながるようにすることが望ましい。杉並区では「杉並子育て応援券」(一時保育、子育て講座、親子参加行事などの有料の子育て支援サービスに利用できる券を、就学前の子供がいる家庭に発行し、サービスを利用しやすくすることで、地域の子育てを支援するもの)を配給しているが、そうした制度も参考に工夫をすべきだ。加えて、財政健全化を考えるならば、所得制限もより真剣に検討すべきであろう。

前田 横浜市子ども青少年局項目別予算を見ると、子ども手当が半額支給される10年の「現金給付」は791億円と09年予算の320億円から大幅に増加している。他方、依然として待機児童の問題を抱える「保育関係」は594億円(09年)→648億円(10年)、ニートやフリーター対策を含む「青少年関係」は8億円(09年)→9億円(10年)に留まっている。子ども手当は国費で市の負担ではないとはいえ「現金給付」の伸びは突出している。11年以降、子ども手当が満額支給になった場合、そのアンバランスさはさらに助長される。
 政権の立場からは現金給付はPRにもなるのだろうが、子供たちが健全に育つための環境作りのための現物給付も必要不可欠だ。子供が健全に成長し、大人になり仕事を見つけ、結婚して子供を保育園に行かせる段階にたどりつくまでに、人生上のさまざまなハードルが存在する。公的なケアは社会と若者の実情に合わせてきめ細かく行わなければならない。

宇南山 ポイントは3点あると考える。1点目は、少子化対策と子ども・子育て支援はきちんと区別する必要があるということだ。子ども手当はあくまで子育て支援であり、民主党政権は少子化対策を目的としてその経路を明示し政策を打ち出していない。少子化対策の点からは評価はできない。2点目は、少子化問題につながる非婚化の対象は、比較的学歴が低い男性と高学歴の女性という2つのパターンに分けられるが、その対策はしっかり区別しなければならない。子ども手当を少子化対策に含めるにしても、まとめて現金給付すれば問題が解決するということにはならない。最後に、制度設計は問題解決に最も役立つ部分に基本を置くべきだ。現在、マイノリティーへのケアばかりが取り上げられている。そうした活動は当然重要であり、取り組みには敬意を表すが、やはり問題の中心はどういったこと、人々なのかを明確に把握する必要がある。基本の制度設計はメインの人や問題を対象にして、そこから漏れる部分をどうケアするか、という2段構えで対処すべきである。弱者の視点のみから制度設計がなされていることが、現在の政策がいびつな印象を与える理由になっていると考える。

継続的な政策立案に消費税論議不可避

小林 少子化問題は中長期的に日本を揺るがす問題。解決への提言は。

宇南山 少子化問題の原因である「結婚とは何か」を解明することが重要になる。個人の結婚へのインセンティブのメカニズムを明らかにした上で、政策立案していく必要がある。

前田 自治体での経験から、高齢者への社会保障費を子供へ回す案は、現実的に難しい。例えば、2000年に652億円で始まった横浜市の介護保険の特別会計は、今年度1915億円に至り、毎年100億円規模で膨らんでいる。高齢化が進む中、高齢者関係の予算を削って子供に回すというのは至難だ。消費税率引き上げといった財源論は避けては通れない。増税をしても安心して子供を育て働くことができる環境作りを行っていくことを常に意識していかなければならない。

小渕 子供に関する政策は継続性が何よりも大切である。政権交代が中長期的に見て、国にマイナスに作用することはあってはならない。財源論のように国民の痛みを伴うことがらであっても、そうした政策の持続可能性を念頭に置いて、政治家は責任を果たすべきであり、有権者の方々も冷静に判断をしていただきたい。
 また少子化問題を語るときに、女性支援など「女性」という言葉が多く使われるが、「男性」の問題でもある。女性が社会に出て行く一方で、男性が家庭に入る場面も出てくる。男女それぞれの生活の幅を広げていくこと、かつ、そうした多様な価値観を認めることができる社会を構築することが、中長期的な視点から重要になる。

草刈 少子化問題の解決には企業が相当部分の責任を果たさなければならないと自覚している。男女共同でよい社会を目指せるような制度作りを企業内でも今後促進していく必要がある。
 政策面では、政策基礎をしっかり築いて取り組んでいってほしい。例えば、ニート・フリーター問題は少子化への影響が少なからずあるとはいえ、政策実行の中では、少子化問題とは線引きをしっかりして議論すべきだ。選挙の都度に、バラマキを行うのでは国民の感覚が麻痺しかねない。子ども手当にしても、例えば第2子、第3子で給付額を変更するなど、諸外国で類似の政策事例を見習うべきだ、きちんとした政策の基礎を築いた上で、工夫を凝らしていくことが重要になる。

−おぶち ゆうこ−
1996年成城大学経済学部卒、東京放送入社。2000年衆議院議員初当選。文部科学大臣政務官、内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画等)を歴任。06年早稲田大学大学院公共経営研究科修了

−くさかり たかお−
1964年慶応義塾大学経済学部卒、日本郵船入社。99年代表取締役及び社長、2004年代表取締役会長を経て09年から現職。04年日本経済団体連合会副会長、07年内閣府規制改革会議議長

−まえだ まさこ−
1982年早稲田大学卒、松下政経塾入塾。米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院経営学修士、慶応義塾大学商学部商学博士。2003年横浜市副市長就任、教育・医療・福祉を担当07年から現職。09年地域主権戦略会議委員

−うなやま たかし−
1997年東京大学経済学部卒、2002年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶応義塾大学総合政策学部専任講師、京都大学経済研究所講師、神戸大学大学院経済学研究科助教授を経て、07年から現職

印刷用PDFファイル

セミナー資料 草刈氏
セミナー資料 前田氏
セミナー資料 宇南山氏


日本経済研究センターでは少子高齢化問題を取り上げ、2009年11月末に提言をまとめました。 宇南山氏の 「少子高齢化への政策対応、女性就業支援策の改革」報告はこちら
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