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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【50】 2004年9月発行

自動車検査制度が交通事故率に与える影響について自動車検査制度が交通事故率に与える影響について
斉藤都美

1973年10月、日本で軽自動車に新たに車検制度が導入された。この論文ではこの外生的なショックを利用することで車検制度が安全規制として有効に機能しているかどうかを検証する。交通事故モデルとdifference-in-differencesの2種類のモデルを用いて分析した結果、いずれのモデルによっても車検制度の導入が交通事故率を低下させたという仮説は棄却された。さらに、事故原因についての情報が得られる追加的なデータを導入することで、なぜこのような結果が得られたのかを検討した。その結果、全交通事故のうち整備不良によって発生する事故の割合は極めて低いことがその主な原因の一つとして挙げられることを確認した。Peltzmanタイプのoffsetting behaviorとpolicy ineffectivenessの仮説についても簡単な考察を加えたが、いずれも積極的には支持されなかった。 .

公営住宅における居住者便益と消費の非効率性公営住宅における居住者便益と消費の非効率性
森田学   中村良平

公営住宅には、住宅困窮世帯に対する住宅セーフティーネットとしての社会的役割があるとされている。しかしながら、公共部門が提供する住宅は、そこに住む世帯が望ましいと思うものと必ずしも一致しているとは言えず、その結果、世帯の消費選択に歪みをもたらし、資源配分の効率性を損なっている可能性もある。本稿では、公営住宅入居前・入居後の1対1対応のデータを用いて居住者便益の計測をおこなった。その結果、同質の民間住宅よりも低廉な家賃で提供される公営住宅への入居によって世帯の消費が変化し、大きな便益が発生していることが明らかとなった。他方、低額所得層世帯への所得再分配を住宅の直接供給でおこなうことで、効率性が損なわれていることも示された。 .

生活保護制度は就労意欲を阻害しているか―アメリカの公的扶助制度との比較生活保護制度は就労意欲を阻害しているか―アメリカの公的扶助制度との比較
玉田桂子   大竹文雄

本稿では、就労の観点から日本の生活保護制度とアメリカの公的扶助制度であるTANFを比較し、どのような自立支援策が生活保護世帯の稼働率の増加に寄与しているのかを分析した。生活保護制度とTANFを比較すると、TANFの方がより就労促進的な制度となっていることが示された。しかし、日本の稼働可能な世帯の稼働率とTANFの稼働率と比較すると日本の稼働率がより高い。また、クロスセクションデータを用いた自立支援策の稼働率への影響の分析では、能力開発講座の有無、求人情報提供、求人情報フェアの有無などの施策は稼働率に影響を与えないことが示された。これらの施策が稼働率に影響を与えない理由としては、被保護者自身が民間の求人情報誌等を利用して自ら求職活動をしている可能性が考えられる。ただし、データの限界から、これらの結果が見せかけのものである可能性は否定できない。本稿から導き出された分析結果から、働く意欲を持っている被保護者が就労できる環境作りが今後の生活保護制度の課題と言えるだろう。 .

公園維持管理事業における事務事業評価の有効性―市区パネルデータによる分析公園維持管理事業における事務事業評価の有効性―市区パネルデータによる分析
宮崎毅

景気低迷による歳入不足から、多くの自治体が歳出削減の切り札として事務事業評価を導入している。地方自治体の多くが事務事業評価導入の目的として執行の効率化を挙げている一方、ほとんどの研究者は事務事業評価が費用効率化に与える影響は小さいと主張している。事務事業評価が事業の効率化に有効なのかについては様々な議論があるが、今までのところ直観的な議論が多い。本稿では、「都市公園維持管理事業」を対象に事務事業評価が費用効率化に有効なのかを、1996年から2000年までの全国市区パネルデータを用いて計量的に検証する。パネル分析を行ったところ、行政評価を実施している市区の公園面積当り管理費用は他の市区と同じという結果が得られた。また、公園管理事業を評価している市区とそれ以外の市区及び、事務事業評価を導入している市区、試行段階の市区、その他の市区の面積当り費用を調べたところ、有意な差を認められなかった。 .

地方歳出における中位投票者仮説の再検証―都道府県別パネルデータによる推計地方歳出における中位投票者仮説の再検証―都道府県別パネルデータによる推計
高橋青天   宮本由紀

本稿では、Bergstrom and Goodman (1973) で用いられた中位投票者モデルを公共財の供給者である官僚行動も含めたモデルへと一般化したWyckoff (1988) のモデルをベースとし、日本の都道府県レベルにおいて、歳出総額では「中位投票者仮説」は観察されないが、地方政府が裁量権を持つ「土木費中の普通建設事業費」に関しては「中位投票者仮説」が成立していることを実証分析によって明らかにした。また、Bergstrom and Goodman のモデルを使い、都道府県レベルで「中位投票者仮説」を実証した土居(2000)やDoi (1999) の分析とは、以下諸点で異なっている。1)Bergstrom and Goodman (1973) での中位投票者モデル導出のための諸仮定が、実証分析に用いる都道府県別データに関して満たされているかどうかの確認を行った。2)Bergstrom and Goodman (1973) の「中位投票者仮説」に、公共財の供給者である官僚の行動を加味するより一般的なモデルを構築し実証分析を行った。3)通常は観察されない公共財の平均費用や地域選好を統計的に考慮するため、5期にわたってプールした都道府県別パネルデータを用いて分析した。 .

集積の経済と立地選択の変遷過程―関東圏市区レベルにおける加工組立5産業の事例研究1960〜2000年集積の経済と立地選択の変遷過程―関東圏市区レベルにおける加工組立5産業の事例研究1960〜2000年
山村英司

本稿では、産業発展プロセスにおける立地変化と生産システムの変化を明らかにすることを目的にしている。そのために、京浜工業地域を含む関東圏の市区レベルデータを利用して、1960〜2000年までの長期的な、事業所立地、分業構造、事業所規模の変化を同時に分析した。 推定結果から次のことが明らかになった。まず経済発展とともに都市のサービス化と郊外の宅地化によって、産業立地は都市から郊外へ、さらに地方へと分散し続けた。大都市の郊外に立地する企業が増えた結果、郊外に大規模かつ多様な集積が形成される。後にそうした郊外の大集積が都市化の経済を発揮し、部品加工や非標準的な製品の拠点になったのである。その一方で、標準的な組み立てなどを行う大規模な事業所が郊外の外延部に進出していった。 このように、関東圏の集積は都市化の経済が郊外においても観察されるようになると同時に、より外延部へのプロダクトサイクル的な立地移動をともなっていたのである。 .

海外直接投資と事業所閉鎖の実証分析―電機メーカー事業所データによる生存分析海外直接投資と事業所閉鎖の実証分析―電機メーカー事業所データによる生存分析
松浦寿幸

本稿では、上場電機メーカー213社の1023製造事業所のデータを用いて、事業所閉鎖の要因分析を行った。今回の分析の特徴は、事業所データと企業データを接続したデータセットを用いていることであり、海外生産の拡大や研究開発などの企業属性が、国内の事業所再配置戦略とどのように関連しているかを分析している点にある。また、事業所閉鎖に対する立地地域属性要因の影響も併せて検討している。分析の結果、(1)直接投資と事業所の閉鎖との関連について、アジア地域での生産活動の拡大が、国内の事業所閉鎖に大きな影響を与えていること、(2)ただし、中国進出は必ずしも同一企業の国内事業所の閉鎖とは結びついていないこと、(3)立地地域属性では、社会資本や地域開発制度などのハード面での施策は事業所継続・閉鎖との間に明確な関係はみられず、人的資本などのソフト面の環境整備が重要性をもっていること、などの点が明らかとなった。 .

対日M&A投資と日本の製造業企業の生産性対日M&A投資と日本の製造業企業の生産性
村上友佳子

対内直接投資の拡大は日本の重要な政策課題である。対日直接投資の大部分は買収や資本参加(M&A投資)を通じて行われている。対内M&A投資がホスト国の生産性に与える影響を分析するためには、生産性水準の単純比較ではなく、投資先企業の生産性が買収・資本参加によって顕著に上昇したか否かを調べる必要がある。 本論文は日本の製造業企業の統計を用いた実証分析により、以下のような結論を得た。第一に、日本企業に比べ外資系企業の方が、生産性をはじめ、労働生産性、売上高経常利益率、研究開発集約度等、経営効率を表す指標の平均値は有意に高い。第二に、企業の研究開発集約度や設立年数、規模などをコントロールした推計によっても、外資系企業のTFP水準、TFP成長率は高いことが明らかになった。第三に、対内M&Aの対象企業は買収後も効率性が高いが、日本企業に買収された企業は、雇用は増加しているが、経営効率は改善していない。 .

地方政府の徴税インセンティブ―徴収率の格差と地方交付税制度地方政府の徴税インセンティブ―徴収率の格差と地方交付税制度
西川雅史   横山彰

本稿の目的は、地方交付税制度における「貧困の罠」の有無を実証的に検証することである。地方交付税制度における「貧困の罠」とは、地方政府のうち地方交付税を受けている団体(交付団体)では、交付税を受けていない団体(不交付団体)と比べて課税インセンティブが低下するという仮説であり、広く一般に信じられているものである。山下(2001)の実証結果はこれを支持するかのようであり、田近・油井・佐藤(2001)はこの前提に基づいた地方交付税制度の改革を主張している。また,山下・赤井・佐藤(2002)は、費用最小化の視点から交付税制度の歪みを実証的に明らかにしているが,堀場・持田・深江(2002)、持田(2003)は,歳入最大化の視点からみる限り,地方交付税制度に「貧困の罠」が生じる余地のないことを指摘している。本稿では、制度的な背景を意識しつつ、地方政府の歳入最大化行動に「貧困の罠」が生じる余地が少ないことを実証的に検証した。 .

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