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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【52】 2005年10月発行

地球温暖化防止のための国内制度設計の評価―GTAP-Eモデルによるシミュレーション分析地球温暖化防止のための国内制度設計の評価―GTAP-Eモデルによるシミュレーション分析
岡川梓   濱崎博

京都議定書が発効したことによって、わが国は1990年比6%の削減達成義務を負うこととなった。これを受けて、2004年11月に公表された『環境税の具体案』では、現行の削減対策によって2010年における日本の排出量は減少するという前提で目標達成のための温暖化対策制度が設計されている。  本論文では、2010年の予想排出量を見直した上で制度を再提案し、GTAP-Eモデルによるシミュレーション分析によって評価を行った。分析の結果、『環境税の具体案』では海外からの排出枠購入の費用として約1000億円の追加負担の可能性がある。また温暖化対策制度導入に反対している産業の観点に立てば、エネルギー多消費産業から労働集約産業への税収移転となる制度よりも、無償配布方式の排出権取引制度が望ましい。.

いくら補助すべきか?新型特養の入居費いくら補助すべきか?新型特養の入居費
使用データの概要使用データの概要
岸田研作   谷垣靜子

従来型の特別養護老人ホーム(以下、特養)はほとんどが大部屋であり、住環境の改善が求められていた。新型特養は全室個室であるが、ホテルコストを追加的に負担しなければならない。本稿の目的は、低所得者世帯に対する新型特養の入居費の適切な補助額を明らかにすることである。対象は、特養へ入居申請中の219の要介護者を含む同居世帯。調査法は、主介護者に対する訪問対面調査。入居希望時期を尋ねることで予約的な申込み者を排除し、仮想質問法を用いて新型特養の入居選択関数を推定した。適切な補助額は、低所得世帯が標準世帯と同じ入居選択確率を達成するのに必要な額とした。仮想質問の理解度のチェックも行った。最終的に推定対象となった標本数は174であった。介護保険料の第2段階世帯に対する補助額の点推定値は3万5894円で現行の補助額よりも1万7594円高かったが、有意差はなかった。第1段階世帯は標本数が少なく、信頼性のある補助額が得られなかった。.

企業間信用と金融機関借入は代替的か―中小企業個票データによる実証企業間信用と金融機関借入は代替的か―中小企業個票データによる実証
使用データの概要使用データの概要
植杉威一郎

中小企業の資金繰り手段として重要な位置を占める企業間信用と、金融機関などからの借入金が代替的かどうかを検証する。Meltzer (1960)をはじめとする先行研究の多くは、金融環境の悪化に伴う借入金減少が企業間信用増加によって代替されるかのみに注目していた。今回は、企業間信用に生じる負の影響を借入金が代替するかを含めた両者の相互関係を検証する。中小企業に関する個票データを用いた分析の結果、@中小企業金融においては、金融機関側の与信態度が厳しくなると、借入金と共に、供与される企業間信用の減少幅が拡大することが多い、A売上高減少などによって企業間信用が減少すると、金融機関からの借入金も同時に減少幅を拡大する傾向にある、ことが分かった。企業間信用と金融機関借入金の間に有意な代替関係が観察できないという今回の実証結果は、実体面・金融面で大きな負のショックが起きる場合に、手段が限られている中小企業の資金繰りが深刻な制約を受ける可能性を示唆する。 .

特許ライセンスの契約形態の決定要因―企業規模と特許の藪特許ライセンスの契約形態の決定要因―企業規模と特許の藪
大西宏一郎   岡田羊祐

本稿では、特許庁が2002年度に実施した承認統計である『知的財産活動調査』の個票データを利用して、日本の製造業における片務的ライセンスおよび双務的ライセンス(クロスライセンスおよびパテントプール)の決定要因を定量的に分析した。分析結果によれば、(i)従業員規模が大きい企業ほど、他社にライセンスする特許件数が少なくなる傾向にあった。また、(ii)特許侵害への警告件数が多い、または製品化に必要となる関連特許の技術分野が広い産業で、クロスライセンスやパテントプール契約の対象となる特許件数が増加するという結果を得た。(ii)の結果は、「特許の藪」(patent thicket)の議論と整合的である。すなわち、特許権の保護範囲が抵触しやすい、あるいは特許が企業間で分散して所有されやすい産業で双務的ライセンス活動が活発になるのである。.

女性雇用と企業業績女性雇用と企業業績
児玉直美   小滝一彦   高橋陽子

女性雇用が企業利益に与える影響について、企業レベルのマイクロデータを用いて分析したところ、クロスセクションデータによる回帰分析では正の相関、パネルデータを用いた固定効果推定では無相関となった。この結果は、女性労働者は労働市場において差別されているという「差別仮説」と整合的でない。むしろ、「企業固有の要因」が女性労働者を増やし、かつ企業業績も高める可能性を示唆している。この「企業固有要因」を企業内の人事・労務管理と想定し具体的に探索した。すると、「(育児後等の)再雇用制度の存在」、「小さな男女勤続年数格差」などの男女均等活用型の人事・労務管理が、女性比率も高め、かつ企業業績も高めていることが示された。.

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