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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【60】 2009年1月発行

第60号のポイント第60号のポイント
『日本経済研究』編集委員会

 『日本経済研究』の読みどころをやさしく紹介。

排出権取引とCDM事業――供給独占への日本の対応排出権取引とCDM事業――供給独占への日本の対応
爲近 英恵  伴 金美

 京都議定書は、批准した附属書B締約国間排出権取引を導入しているが、大量のホットエアを所有するロシアが排出権を独占的に供給することが予想されている。本論文では、排出権取引を組み入れた応用一般均衡モデルを構築し、京都議定書による二酸化炭素排出量削減をシミュレートする。分析では、ロシアが排出権取引市場において価格支配力を持つと仮定し、それがロシアの排出権供給量と他の附属書B締約批准国の削減費用に及ぼす影響を分析する。その上で本論文では、日本が中国とCDM(Clean Development Mechanism:クリーン開発メカニズム)を実施することで、ロシアが吊り上げた排出権価格をどの程度低減できるかについて分析する。分析結果によれば、ロシアは排出権を独占的に供給する際、供給量はホットエアの41%となり、排出権価格は二酸化炭素トンあたり11.9ドルとなる。これに対し、日本は中国とのCDMにより排出権価格を1ドル低下させることができる。.

ギャンブルとしての財政赤字に関する一考察――“不確実性”のある成長率と長期金利の関係を中心にギャンブルとしての財政赤字に関する一考察――“不確実性”のある成長率と長期金利の関係を中心に
使用データの概要使用データの概要
小黒 一正

 人口減少・少子高齢化の進展により、日本の財政は深刻さを増している。こうした状況を踏まえ、政府・与党は、財政の持続可能性を維持する観点から、与党・諮問会議等を中心に歳出・歳入一体改革を推進・検討している。だが、公的債務残高(対GDP)の将来推移は、どの程度まで財政収支等を改善させるのかという財政再建努力のほか、経済動向による“成長率と金利の差”の影響も受ける。したがって、その推計には“不確実性”のある今後の金利と成長率の経路の評価が重要となる。  このため、本稿では、Ball, Elmendorf and Mankiw(1998)を参考に、成長率と長期金利の不確実性に注目し、先進6カ国の“The Deficit Gamble失敗確率”の推計を行った。その結果、以下の3点が明らかとなった。
@ 先進6カ国において、一部の国以外は「平均的」に“成長率>金利”であるものの、成長率と金利の関係の不確実性から、どの国も一定の“The Deficit Gamble失敗確率”が存在すること。
A 仮に現在の公的債務残高(対GDP)がゼロでも、1単位の財政赤字(対GDP)が膨張するリスク(“The Deficit Gamble失敗確率”)は、先進6カ国において日本が最も高いこと。
B 日本の“The Deficit Gamble失敗確率”の引き下げには「構造改革と経済財政の中期展望−2005年度改定」(経済財政諮問会議2006)でも触れられているように、プライマリー・バランス(対GDP)を一定レベルまで黒字化する必要があること。.

親の介護と子の市場労働親の介護と子の市場労働
使用データの概要使用データの概要
小原 美紀

 親の介護は子の市場労働を抑制するのだろうか。逆に、子の市場労働は親の介護を抑制するのだろうか。本論文は、日本における市場労働の決定と親に対する介護の決定を分析し、その相互関係を明らかにする。親に対する介護や親子の属性を詳細に調査した個票データを使用した分析の結果、まず、親から相続予定があるという情報が子の介護決定を説明するのに重要であることが分かる。この変数を捉えながら介護と市場労働の相互関係を分析すると、市場労働意志は介護意志を必ずしも抑制しないが、介護意欲は子の市場労働意欲を低下させることが示される。市場労働を継続しながら介護を行いたいと考える人のためにも、働きながら介護が行える市場介護サービスの充実が必要だといえよう。.

品揃えの多寡が店舗立地に与える影響について品揃えの多寡が店舗立地に与える影響について
小川 昭

 本稿では、線形都市モデルを用いて、品揃えが店舗の立地に及ぼす影響を考察した。具体的には、線形都市の一端に十分な品揃えがある店舗(商業集積)を想定し、参入店舗が線形都市のどちらかの端を選んでから同時に価格を決定するというモデルを用いた。ここでは各店舗の販売する商品の位置には不確実性があり、品揃えの多寡によってそれが変化すると仮定している。  参入店舗の品揃えが多いほど、商業集積のない側の端を選択するようになること、また、分散立地が均衡として生じる場合には、それが経済厚生の観点からも望ましいということが結果として得られた。 .

結婚の地域格差と結婚促進策結婚の地域格差と結婚促進策
北村 行伸  宮崎 毅

 結婚に関する研究では、地域特性に注意する必要があることが指摘されているが、日本では地域格差を考慮した結婚に関する研究は少ない。本稿では地域格差を考慮した上で、全国市町村データを用いて結婚に影響する要因を調べ、さらに過疎市町村における結婚促進政策が結婚に及ぼす効果を分析した。基礎的な分析と回帰分析から、次の結果が得られた。第1に、都市化の程度によって男女の結婚経験率は大きく異なるが、男性就業率は男性の結婚と正の相関を持ち、男女比は男性の結婚と負の相関を、女性の結婚と正の相関を持つ。第2に、結婚には、都市化の程度、男女比や就業状況などでは説明できない都道府県間格差があることが確認された。ただし、それが何の要因によるのかについては判明しなかった。第3に、過疎市町村における結婚促進策は、女性よりも男性の結婚に影響を及ぼすことが明らかとなった。.

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