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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【61】 2009年7月発行

第61号のポイント第61号のポイント
『日本経済研究』編集委員会

『日本経済研究』の読みどころをやさしく紹介。

小売電力入札における応札意思決定と自由化の競争促進効果小売電力入札における応札意思決定と自由化の競争促進効果
使用データの概要使用データの概要
高木 真吾  細江 宣裕

 電力自由化は、規制緩和によって競争を引き起こし、これを通じて電力産業を効率化させることを目指してきた。一連の自由化施策のうち、本稿では小売部門の自由化が電気料金に与えた影響を、官公庁の入札データを用いて計測する。入札案件の内容に応じて収益性が異なることや、応札すること自体に一定の費用がかかることを考えると、電力会社が応札するか否かについて内生的に意思決定を行っている可能性が高い。実際の推定においては、この点に注意しながら検証する必要がある。本研究では、2005 年度に供給開始される入札案件約500 件の落札情報を用いて電気料金を推定し、自由化による競争促進効果を計測した。その結果、入札において競争があった場合には、とくに競争の激しい負荷率が中程度ないし特別高圧供給の入札案件で電気料金の引き下げ効果が大きく、平均的には0.45 円/kWh 程度、電気料金が統計的に有意に低下することがわかった。.

高額所得者データを用いた危険選好の分析高額所得者データを用いた危険選好の分析
使用データの概要使用データの概要
竹中 慎二/日本経済研究センター研究本部研究員

 本論文は高額所得者の個票データを分析し、資産水準の変化が相対的危険回避度と家計の資産保有に与える影響を推定する。分析では、アンケート調査を用いて各個人の相対的危険回避度(RRA)を理論に忠実な方法で推定した。続いて、遺産・贈与を操作変数として資産の内生性を考慮した上で、資産水準とRRA、資産水準と危険資産比率との関係を推定した。推定結果によると(1)RRA は資産の増加によって逓減し、(2)リスクの高い金融資産の保有比率はRRA に依存するが資産規模に直接影響されるかは明確でない。以上より、RRA の逓減を通じて危険金融資産比率が高まるという変化が資産増加により引き起こされると推定された。また、消費の慎重度(prudence measure)が高いと危険金融資産比率が低く、RRA が自営業への従事に有意な影響を及ぼすことが判明したが、自営業や遺産動機が危険資産比率を高める効果は確認されなかった。加えて、一般的なサンプルを同様に分析した結果、RRA 低下による危険金融資産比率の高まりは推定されるが、資産のRRA に対する影響は有意でない。.

役員株式保有が企業犯罪に及ぼす影響役員株式保有が企業犯罪に及ぼす影響
データの概要データの概要
渡部 領介  泉田 成美

 本論文は平成16 年度のデータを用いて、日本企業における企業犯罪の発生と所有権構造の関係を実証的に分析している。その結果、役員持株比率の増加が企業犯罪を抑止する効果を持つと同時に、大株主による株式保有比率の増加もまた企業犯罪を抑止する効果を持っていることが確認された。この結果は、企業犯罪の問題を分析するのに際して、経営者の犯罪行為に対するインセンティブの問題に加えて、大株主による犯罪行為へのモニタリングの存在が重要な役割を果たしていることを示唆している。.

日本企業におけるガバナンス構造と経営効率日本企業におけるガバナンス構造と経営効率
野田 知彦  市橋  勝

 本稿では、2001-2004 年度の企業のパネルデータを用いて、経営者や労働組合の有無、教育訓練制度を考慮に入れて企業の経営効率に対する銀行、株式所有、役員の効果を分析する。分析の結果、銀行依存度や労働組合の経営効率に与える影響が、経営者の出自、属性によって異なることが明らかになった。銀行に対する依存度が高く、資本市場からのプレッシャーが弱く、また労働組合があり、経営者が内部出身者というような従来考えられてきた典型的な日本型の企業では、そのような性質を持たない企業に比べて経営効率が低くなる傾向があるということが確認された。そしてその背後には、非創業者型企業、特に内部昇進型企業では雇用調整が行いにくいという特質があると考えられる。.

出産育児一時金は出生率を引き上げるか――健康保険組合パネルデータを用いた実証分析出産育児一時金は出生率を引き上げるか――健康保険組合パネルデータを用いた実証分析
データの概要データの概要
田中 隆一  河野 敏鑑

 本稿の目的は、出産育児一時金が出生率に対しどのような効果を持つのかを、日本の健康保険組合パネルデータを用いて実証的に明らかにしようとするものである。日本の総人口の約4 分の1 は、健康保険組合に被保険者または被扶養者として加入しているが、健康保険組合の半数以上は、被保険者の配偶者の出産に対して、法定の出産育児一時金に上乗せして、独自に出産育児一時金の付加給付を行っている。本稿では、組合間および時間を通じた出産育児一時金付加給付額の変化を用い、組合ごとの個別効果を考慮した上で、付加給付額が組合の男性被保険者の妻(被扶養主婦)の粗出生率に与える効果を分析する。その結果、男性被保険者(夫)の給与が低い組合においては、10 万円の出産育児一時金付加給付は、男性被保険者の妻の粗出生率(被扶養主婦一人当たりの子供数)を0.017 ポイント上昇させること、またその効果は潜在的な付加給付額の内生性に対しても頑健であることが分かった。.

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