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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【67】 2012年7月発行

道路整備財源調達に伴う厚生損失を考慮した高速道路料金の効率的水準道路整備財源調達に伴う厚生損失を考慮した高速道路料金の効率的水準
森杉 壽芳   河野 達仁

わが国の高速道路料金水準は、近年まで道路整備の債務返済に見合うように決定されてきた。しかしながら、その整備財源は、燃料税をはじめ利用料金以外の財源からも調達可能である。このとき、最適課税理論に従えば、複数の整備財源調達手段の全ての限界費用が等しくなるような料金が厚生最大化の観点から効率的である。そこで本研究は、わが国の高速道路を対象にして効率的料金水準を最適課税理論に基づいて推計する。具体的には、財源調達に伴う厚生損失(死荷重)を考慮した効率的高速道料金算定の公式を導出し、その公式をいくつかの高速道路路線に適用する。その結果、財源調達の限界費用の絶対値として1.2を想定すると、1キロ(メートル)あたりの効率的料金は、阪神高速道で19円、常磐道では10円、東北道と湖西道では13円、広島呉道で3円、アクアラインや西瀬戸自動車道では20円強と推計される。すなわち、以上の料金水準ではいずれの路線も建設費の償還ができておらず、燃料税収等の料金収入以外の財源も併せて償還に充てることが効率的であることを示す。 .

新しい最適所得税理論と日本の所得税制新しい最適所得税理論と日本の所得税制
データの概要データの概要
國枝 繁樹

本稿は高額所得者の所得分布を新たに推計し、最近の我が国における課税所得の弾力性に関する実証結果を用いて、最適な最高限界税率を導出した。2003年の「高額納税者番付」によると、パレート分布の係数(α)は2.1と推計された。溝口(1987)と比較すると、最近の米国ほどではないが、日本において最上位数千−数万人の高額所得者への所得集中が進んだ可能性を示唆する。他方、最近の実証研究では、課税所得の弾力性は0.051−0.28の範囲で推計されている。その結果、我が国の最適な最高限界税率は、最も能力の高い個人に付される社会厚生上のウエイトが相当大きくない限りは現行水準より高く、高額所得者への課税強化は支持される。また、課税所得の弾力性は源泉徴収・年末調整制度や給与所得控除に影響されている。 .

子会社役員などへの親会社ストック・オプション付与と親子会社関係子会社役員等への親会社ストック・オプション付与と親子会社関係
データの概要データの概要
墨 昌芳  竹口 圭輔  武智 一貴

日本の企業にとって、親会社が子会社を擁してグループ経営を行うことは重要な経営形態である。本稿では、2001年の商法改正以後可能となった、子会社役員などを対象とした親会社ストック・オプションの付与とグループ経営との関係について分析する。具体的には、親会社ストック・オプションの子会社役員などに対する付与の決定要因を推定した結果、同オプションは親子会社の利害不一致が大きくなるほど、親会社の子会社への売上依存度が強くなるほど付与される傾向にある点が明らかになった。また、過去に付与したことのある企業は再び付与する傾向に加え、先行研究と同様、子会社に対するモニタリング費用・親会社におけるキャッシュ制約の問題への対処としても、同オプションの付与が行われる点が確認された。 .

戦後日本の男子大学進学率の分析―供給側の制約の影響を中心に戦後日本の男子大学進学率の分析―供給側の制約の影響を中心に
戦後日本の男子大学進学率の分析―供給側の制約の影響を中心に <訂正>戦後日本の男子大学進学率の分析―供給側の制約の影響を中心に <訂正>
馬場 浩也

本稿は、1966年から2008年における日本の男子4年制大学進学率の規定要因を分析し、以下を明らかにした。(1) 進学率の増減は、進学適齢期の男子若年人口の増減による合格難易度の変動と、出生率の変動による家計の教育費負担率の変動という2つの要因によってほぼ完全に規定されてきた。(2)戦後日本における進学率の大幅な上昇は主に入学定員数の増加による進学難度の低下によるものであり、特に90年代以降その傾向が顕著である。(3)教育投資理論による予測とは逆に、大卒男子生涯所得、大卒高卒の生涯所得比率、内部収益率などの教育投資報酬と進学率との間には強い負の相関がある。(4) 大学教育費の増加に対応して、大学進学のために家計が子供の数を減らしたことが近年の出生率低下の一因となった可能性がある。 .

個人住民税の課税ベース拡大による地方税改革について個人住民税の課税ベース拡大による地方税改革について
データの概要データの概要
八塩 裕之

本稿は、個人住民税(所得割)の課税ベース拡大による地方税改革を検討する。日本の個人住民税は近年「フラット化」の改革が行われたが、所得控除による課税ベースの侵食が残された結果、次のような問題が起きている。第1に、住民に対して徹底されるべき公共財負担の「応益性」が欠如していることである。第2に、課税ベースの侵食による自治体間の税収偏在が大きいことである。低所得者の税負担に関する応能性への配慮から個人住民税の課税ベースを狭くすることは逆に、様々な問題を引き起こす原因となっている。地方財政理論に基づくと、応能性への配慮は国が行い、地方税制は応益性を担うことになる。こうした役割分担を税制に導入した場合に、どのような効果がもたらされるかをシミュレーション分析によって明らかにする。 .

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