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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【68】 2013年1月発行

起業家資本と地域の経済成長起業家資本と地域の経済成長
川上 淳之

開業企業数の対人口比率で測る「起業家資本」が地域の生産性を高めることを提示している「起業家資本理論」と、開業初期段階にある企業の高い成長力を説明する「産業発展理論」の2つの仮説を、2000年と2005年の2期間にわたる都道府県レベルのパネルデータを用いて明らかにした。操作変数を含むランダム効果モデルの推定結果からは、ハイテク産業、ICT産業の「起業家資本」が有意に地域の生産性を高めていることが実証された。また、「起業家資本」が地域の生産性に与える効果は開業後4年目以降大きくなり、「産業発展理論」の示す、開業初期段階の企業の高い成長力が地域の経済的パフォーマンスを高めることが明らかにされた。.

消費者の知識と信念の更新―オーガニック・ラベルのコンジョイント分析消費者の知識と信念の更新―オーガニック・ラベルのコンジョイント分析
データ概要データ概要
村上 佳世  丸山 達也  林 健太  行本 雅

本研究では、りんごの有機JASラベルに対する消費者の信念を取り上げ、インターネット調査を利用したコンジョイント分析を行う。それにより、消費者の信念の更新における認知プロセスが、受け取った情報の理解と、理解した情報を用いた信念の更新の2段階からなり、その双方が事前の知識水準に依存するという仮説を検証する。主要な結論は以下の通りである。第1に、消費者は有機JASの目的を食品安全と誤解している。したがって、消費者の選択がゆがんでいる可能性がある。第2に、そのようなゆがみを解消するため、有機JASの本来の目的に関する情報を消費者に提示する際、その情報が心理的コンフリクトを起こしやすい形で提示されるかどうかによって、信念の変化の仕方は大きく異なった。第3に、消費者の事前の知識水準によって信念の更新の仕方が異なる。ゆえに、消費者の信念の更新における認知プロセスに関する上述の仮説と整合的な結果が得られた。.

ごみ収集における外部委託の促進要因―外部委託の進捗段階に応じた促進要因の変化ごみ収集における外部委託の促進要因―外部委託の進捗段階に応じた促進要因の変化
岩田 憲治

一般廃棄物(ごみ)の収集業務は、外部委託が最も進んでいる行政分野であるといわれ、外部委託の問題点を浮き彫りにしやすい。本稿はごみ収集を対象として、外部委託によるコスト削減効果と促進要因を確かめ、外部委託の進捗段階に応じて、その要因が変化する点を明らかにした。まず、ごみ収集の費用は外部委託が直営処理より安いことを確認した。さらに、収集費用に及ぼす要因を検討して、委託率の影響が最も大きいことを示した。その上で、自治体がごみ収集を外部に委託する要因は一様でなく、外部委託の進捗段階に応じて変化することを示した。委託率が低い自治体の促進要因は、近隣自治体の委託率の高さであり、自治体職員の効率化意識も促進要因である。逆に、市民意識が低い場合には外部委託を抑制する要因になる。外部委託が進んだ自治体では、財政のひっ迫、および市民意識が促進要因になる一方、近隣自治体の委託率は影響しない。.

所得補助と非所得補助が出生率に与える効果の比較―市別データを用いた分析所得補助と非所得補助が出生率に与える効果の比較―市別データを用いた分析
宮本 由紀  荒渡 良

本稿では、まず市別のデータを用いて子育て支援政策を所得補助と非所得補助の2つに分類し、所得補助と非所得補助の2つが出生率に与える影響について分析した。その上で、所得補助と非所得補助が出生率に与える効果の大きさを比較し、出生率をより効率的に上昇させるためにはどちらの費用をより増加させればよいのかを検討した。分析を行った結果以下の2点が明らかになった。第1に、所得補助と非所得補助は出生率に対してプラスの効果を持つ。つまり所得補助、非所得補助どちらも出生率を上げる効果がある。第2に、所得補助と非所得補助の出生率に対する効果の大きさは、各市における子供1人当たり非所得補助のサイズ及び女性の賃金の水準に依存して、所得補助の効果の方が大きい市もあれば、非所得補助の効果の方が大きい市もある。以上から、子育て支援政策は全国一律に政策を行うよりは、予算をそれぞれの地方自治体に配分し、地方自治体が地域にあった政策を行う方が出生率に対する効果が大きいと言える。.

パソコンスキルの習得は、母子世帯の母親にとって本当に有用かパソコンスキルの習得は、母子世帯の母親にとって本当に有用か
データ概要データ概要
周 燕飛

本研究は、近年、母子世帯の母親の間で人気があるパソコンスキルの習得が、実際にどの程度賃金上昇に貢献しているのかについて、実証分析を行った。OLSを用いた推定結果からは、母子家庭の母親に全般的なパソコンスキルがあった場合、2007年時点で6.8%の賃金上昇効果があるが、これは01年時点の15.5%に比べ大幅に低下した。もっとも、OLSによる推定には、一般労働者の場合における先行研究で知られているように、内生性の問題が存在する可能性がある。そこで、観察不可能な個人の能力要因の影響を統計的に除去したIV(操作変数)モデルを推定した結果、パソコンスキルの賃金上昇効果は確認できなかった。一方、パソコンスキルを持つ母親は、母子世帯になる前後に転職・再就職をする割合が高いこともわかった。つまり、直接的に賃金に影響するか否かにかかわらず、パソコンスキルの習得は、母親の転職や就職活動を活発化させ、母子家庭の母親を中長期的に良い職業キャリアへと導く可能性がある。.

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