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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【69】 2013年9月発行

介護職員が働き続けるには何が必要か介護職員が働き続けるには何が必要か
データ概要データ概要
岸田 研作  谷垣 靜子

介護労働者の離職を扱った先行研究では、離職者(または離職希望者)が他の介護現場に移動した(移動を希望している)のか、介護労働市場から退出した(退出を希望している)のかを識別できない。介護労働者が職場を辞めても別の介護現場に移っただけであれば、マンパワーの確保という点では問題がない。本稿では、介護労働者が「他の介護現場への移動を希望している」のか「介護労働市場からの退出を希望しているのか」を識別できる離職意思を従属変数とした回帰分析を行った。結果は、内部相対賃金が下がると、「他の介護現場へ移りたい」と回答する確率が上昇するものの、外部相対賃金は、離職意思に影響しなかった。このことは、介護分野で蓄積された人的資本の価値が他分野では低いため、労働条件がよい他分野の仕事に移ることが難しいこと、介護労働者の賃金を引き上げる政策は介護労働市場からの退出を減らす効果が期待できないことを示している。.

司法制度改革による民事訴訟誘発需要仮説の実証分析司法制度改革による民事訴訟誘発需要仮説の実証分析
データ概要データ概要
三好 祐輔  都築 治彦

日本では近年、司法に国民の意思を反映させるという理念の下に、さまざまな司法制度の改革が行われた。なかでも、急激な弁護士数の増加や弁護士報酬の改定は、民事訴訟の件数の増加や弁護士利用率の増加につながっている。本稿では、弁護士の訴訟に関わる割合の増加、弁護士数の増加などの要因がきっかけとなり、弁護士による誘発需要が引き起こされているかどうかについて、リスク回避度に着目したモデル分析を通して、都道府県データや弁護士アンケートに基づいたデータによる実証分析を行った。分析結果によれば、これまで弁護士は、潜在的な需要があるのにも関わらず積極的に需要を掘り起こそうとはしなかった。だが、近年の弁護士数の増加により、簡易裁判で扱う訴訟について弁護士が関与するようになり、さらに着手金を下げて代わりに成功報酬を高めるという形で誘発需要を喚起していることが分かった。.

日本企業による特許・ノウハウライセンスの決定要因日本企業による特許・ノウハウライセンスの決定要因
データ概要データ概要
西村 淳一  岡田 羊祐

特許・ノウハウの技術取引は、オープン・イノベーションを進める手段として急速にその重要性を高めつつある。本稿では、『企業活動基本調査』における国内・海外別、また特許・ノウハウ別の技術取引額データを利用して、日本企業のライセンス・インおよびライセンス・アウトの決定要因を考察する。とくに、補完的資産の規模や知識の受容能力などで測られる「組織能力」(organizational capability)の影響をコントロールしつつ、「利益逸失効果」(rent dissipation effect)の影響に注目した。固定効果パネル分析を用いた推計結果によると、組織能力が高まるほどライセンス・イン、ライセンス・アウトともに増大することが確認された。さらに、とくに特許取引については、国内・国外ともに技術取引における利益逸失効果が働いていることが示された。これは、市場競争圧力が高まるほど特許取引が活発になる傾向があることを示唆する。 ※本論文の著者である西村淳一氏に対して、公益財団法人公正取引協会から「宮澤健一記念賞」が授与されました。 .

福祉・経済政策と自殺率―都道府県レベルデータの分析福祉・経済政策と自殺率―都道府県レベルデータの分析
松林 哲也  上田 路子

日本では自殺者数が年間3万人を超える事態が10年以上続いている。自殺者数の増加は社会の健康状態や生活の質が悪化していることを示す一つの指標であり、対策が必要とされる重要な社会問題である。本稿は自殺の主な要因の一つが経済的苦境であることを踏まえ、政府の経済政策や福祉政策が自殺率とどのような関係にあるかを検証する。1982年から2006年までの47都道府県のパネルデータを用いた推定結果は経済政策及び福祉政策と自殺率との関係を強く示唆するものであった。公共投資や失業対策費の増大は、自殺率の低下を伴い、その影響は特に65歳以下の男性に強く認められた。また、生活保護費などの福祉政策を充実させることは、65歳以上人口の自殺率の低下と関係がある。このことは、各都道府県の人口構成に応じて異なった自殺対策が効果的である可能性を示唆している。.

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