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日本経済研究

「日本経済研究」は日本有数の学術論文誌です。年に2,3回発行しています。論文は公募しており、レフェリーの厳正な審査などを経たうえで掲載となります。

【70】 2014年3月発行

中国経済成長の動学的非効率性について―その原因と厚生損失中国経済成長の動学的非効率性について―その原因と厚生損失
顧  濤

本稿は、中国経済の高成長の陰で生じてきた過剰資本蓄積の原因と、それに伴う厚生損失を定量的に明らかにする。まず、中国の高成長と共に家計部門に対する資本所得・労働所得の過少支払いが生じていたこと、それが企業部門に大量の内部留保を生み出し、過剰な資本投資がもたらされた可能性を指摘する。Abel et al.(1989)の基準を応用した結果、中国経済は1990年代以降に動学的に非効率な成長経路に陥っている点が示された。次に、シンプルな成長モデルを展開し、労働所得が極度に過少に支払われると、経済は黄金律を上回る水準の過剰資本蓄積の成長経路に陥りうることを明らかにする。この結果は資本所得の過少支払いの有無には依存せず、本稿が初めて示した新たな理論的知見である。最後に、上記のモデルを用いた数値分析により、90年代以降の中国経済において、家計が年率およそ1%から4%程度の極めて大きな同値消費の低下に相当する厚生費用を負担した点を示す。.

建て替え問題による区分所有建物の資産価値下落に関する実証分析建て替え問題による区分所有建物の資産価値下落に関する実証分析
山崎 福寿  定行 泰甫

老朽化した区分所有建物の建て替えが難航している今日の現状は、区分所有者間の合意形成に多大なコストが生じていることを示唆している。一般的に、区分所有者の多い建物ほど、利害調整が困難である。本稿は、区分所有建物および賃貸専用マンションの家賃、価格データを用いて、建て替えの問題に伴う費用の推計を行った。その結果、区分所有建物の資産価値は、賃貸専用マンションと比較して、区分所有者が増加するほど低く、築年数に伴って減価するスピードも速くなることが分かった。これは、合意形成上の無視できない費用が生じていることを示しており、建て替えの問題に関する一層の研究蓄積と、早急な解決策が望まれる。。.

私立中高一貫校の入学時学力と大学進学実績―サンデーショックを用いた分析私立中高一貫校の入学時学力と大学進学実績―サンデーショックを用いた分析
近藤 絢子

中高一貫校における、中学入学時の偏差値と大学合格実績の関係をみることにより、名門進学校の高い合格実績のうち、どの程度が生徒の入学前の学力の差によるものなのかを検証する。進学実績の良い学校は受験生に人気が出て入試偏差値が高くなる、という逆因果に対処するため、入試偏差値を外生的に変動させる操作変数として「サンデーショック」を用いる。サンデーショックとは、2月1日が日曜日の年に、通常2月1日に入試を行っていた東京・神奈川のミッション・スクールが受験日をずらすために女子の併願パターンが変わり、入試の難易度が変動する現象である。学校固定効果もコントロールした固定効果操作変数法による推定結果では、中学入学時の偏差値は大学合格実績に有意な説明力を持たないことが分かった。この結果から、間接的にではあるが、中学入学後の学校によるインプットの貢献が相対的に大きいことが示唆される。.

希望労働時間の国際比較―仮想質問による労働供給弾性値の計測希望労働時間の国際比較―仮想質問による労働供給弾性値の計測
補論_希望労働時間の国際比較補論_希望労働時間の国際比較
データ概要_希望労働時間の国際比較データ概要_希望労働時間の国際比較
黒田 祥子  山本 勲

本稿は、日本・英国・ドイツの労働者を対象にしたアンケート調査をもとに、3カ国の労働者の余暇に対する選好に違いがあるかを検証したものである。分析の結果、3カ国の労働者の労働時間を比べると、実労働時間だけでなく希望労働時間も日本人の方が英国人やドイツ人よりも有意に長いことが分かった。次に、労働供給の代替弾性値と所得弾性値を比較した結果、日本人は、英国人やドイツ人に比べて、賃金や所得の変動に対して希望労働時間を弾力的に変化させる度合いが小さいことが示された。最後に、労働者の希望労働時間が職場や企業環境の影響を受けるかどうかを検証したところ、長時間労働が評価されるような職場や企業で働く労働者ほど、実労働時間だけでなく希望労働時間も長くなっていることが分かった。つまり、他国の労働者に比べて日本人は賃金や所得変動によって労働時間を変化させる度合いは低いものの、それは必ずしも今後も変わらない日本人に固有の選好・国民性を反映したものではないと考えられる。これらの結果は、企業における人的資源管理の方法・職場風土を改善することにより、日本人の長時間労働も将来的に変化しうることを示唆している。.

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