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毎週初めに日本経済研究センターの、愛宕伸康主任研究員ら、景気および金融証券マーケットのウオッチャーが、焦点、勘どころを解説します。

2013/12/24 短観に見る土建国家復活(?)の図

主任研究員 愛宕伸康
 愛宕伸康
【注目度は低いが調べると面白い短観の業種別動向―土建国家復活か!―】

 土木建設関連業種の業況回復が著しい。2000年代に入って公共事業が削減されるなど、長らく低空飛行を続けてきた土木建設関連業種の業況判断DIが、リーマン・ショック後の景気対策やアベノミクスの登場で勢いよく上昇している。先般発表された12月短観の業況判断DI(全規模)の業種別トップ10を列挙してみよう。

 1位「自動車」(DI:26)、2位「木材・木製品」(25)、3位「鉱業・採石業・砂利採取業」(24)、4位「通信」(23)、5位「物品賃貸」(22)、6位「窯業・土石製品」(21)、7位「建設」(20)、8位「情報サービス」(16)、9位「不動産」(15)、10位「石油・石炭製品」(14)である。なんと土木建設に関連すると思われる業種が6業種も入っている。

 この6業種、リーマン・ショック前、例えば2007年12月短観では次のような順位だった。今回2位の「木材・木製品」が30位で最下位(DI:▲36)、3位の「鉱業・採石業・砂利採取業」が18位(1)、5位の「物品賃貸」が13位(12)、6位の「窯業・土石製品」が25位(▲13)、7位の「建設」が27位(▲17)、9位の「不動産」が11位(13)である(下表)。
 愛宕伸康
 2007年12月短観から今回まで、6年間の改善幅で見ると回復ペースの差は歴然だ。「全業種」が2から8へ6ポイントの小幅改善だったのに対して、「木材・木製品」が61ポイント改善の改善幅ダントツ1位。これに、「建設」(改善幅:37ポイント)、「窯業・土石製品」(34ポイント)、「鉱業・採石業・砂利採取業」(23ポイント)の4業種が、他業種を引き離して改善幅トップ4である。

 これがすべて東日本大震災の復興需要によるものであれば何も言うまい。そうでないところに今回の景気回復の危うさがある。下のグラフは「建設」の設備投資額(含む土地投資額、除くソフトウエア投資額)を、製造業および非製造業と比較したものである。いずれも12年度までは実績値、13年度は12月短観の計数が昨年と同じように修正されると仮定して実績値を推計している。
 愛宕伸康
 このグラフから、建設業の設備投資がミニバブルと呼ばれた2007、08年度のレベルをすでに超えているのが見て取れる。12年度と13年度の前年比は、製造業が0.8%、▲1.1%、非製造業が7.6%、4.6%であるのに対して、「建設」は37.8%、27.5%だ。ちなみに「木材・木製品」は60.8%、37.5%である。実質金利の低下が公共事業の増加と相まって土木建設関連の設備投資を押し上げている。

【どのGDPが真の姿か―当局は確報をベースに政策を考えるべきでは―】

 先週の拙稿で、12年度のGDP確報で、公共投資を表す公的固定資本形成が実質GDP成長率に対する寄与度ベースで0.6%ポイントも下方修正されたことを紹介した。速報で使用する受注・着工段階の「建設総合統計」と、確報で使用する国・地方の決算の値が大きく異なったことがその背景なのだが、それにしても下振れた公共投資はいったいどこに消えたのか。

 大方の見立てどおり、「受注・着工段階では相当支出されているはずの公共投資が、人手・資材不足などから実はそれほど進捗しておらず、結果的に国と地方の決算に計上されなかった」ということなら、その分13年度決算に繰り越されるはずである。したがって、また来年の12月になれば13年度GDPの確報化で今度は0.6%分上方改訂されるのか。

 話はそれほど単純ではないだろうが、仮にそうだとすれば、現在ESPフォーキャストで2.6%と見込まれている13年度実質成長率は、確報で3%を超える高成長になる。しかも、その半分が公共需要による押し上げという計算だ。上で見た土木関連業種の業況改善もうなずける。しかし・・・。

 消費増税前の駆け込みが発生する13年度の成長率を公共需要によってさらに押し上げ、その反動に備えるため税収増を13年度補正予算に費やし、市場はすでに14年度補正予算をにらむ。「こんなことをしていては・・・」という気持ち悪さとは裏腹に、景気回復や株高の心地良さに紛れて「名目GDPの2倍以上の政府債務」が普通になってしまった市場や国民が居るのである。

*今回で2013年のJCERアングル―月曜10時便は終わりです。ご愛読、誠にありがとうございました。読者の皆様からのコメントに励まされた1年でした。心より感謝いたします。次号は1月14日になります。新年も引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

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