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毎週初めに日本経済研究センターの、愛宕伸康主任研究員ら、景気および金融証券マーケットのウオッチャーが、焦点、勘どころを解説します。

4月の消費者物価指数は前年比3%―「東大日次物価指数」から得られるヒント−−14年4月14日

主任研究員 愛宕伸康
 愛宕伸康
【年始の洞察「4月の消費者物価指数は前年比3%」】

 今年最初の月曜10時便(1月14日)で、「4月に消費税率が3%引き上げられ、課税対象品目の価格にそれがフル転嫁されると、―中略―4月の消費者物価指数(CPI)の前年比は、低かった前年の裏もあって3%という強い数字になる」と指摘した。その後、CPIは2月の実績まで(東京都区部は3月まで)公表されている。果たして4月は3%になるのか、改めて検証してみたい。

 まず、2月のCPIを確認すると、総合(ヘッドライン)は前年比1.5%、生鮮食品除く総合(コア)は同1.3%である。仮に3月も同じ指数水準になったと仮定すると、ヘッドラインは前年比1.3%、コアは1.0%となり、いずれも2月に比べ伸び率が縮小する。しかし、東京都区部の3月の結果を見ると、エネルギー価格や教養娯楽サービス(宿泊料や外国パック旅行など)が伸びて、2月より指数水準は切り上がっている。このことから、全国のCPIも3月の指数は2月を上回る可能性が高いと思われる。

 そこで、仮に3月の全国CPIの指数水準がヘッドライン、コアとも2月より上昇し、前年比伸び率が2月の1.5%、1.3%を維持したと考えよう。その場合の指数水準で4月も横這いだと仮定すると、前年比はそれぞれ1.2%と1.0%になる。これに消費税率引き上げ分(ヘッドライン1.8%、コア1.7%)を上乗せすれば、ヘッドラインは3.0%、コアは2.7%となり、ほぼ年始の読みどおりということになる。

 1月14日の月曜10時便では、続けて「仮に4月の前年比が3%になっても、5月以降CPIの指数水準が一定なら、14年度の前年比は2.3%にしかならない。しかし、瞬間的であろうと字ヅラは3%と日銀の見通し(14年度3.3%)にかなり近付く。当然、マスコミは日銀見通しに近付いたと書き立てるだろう」とも指摘した。案の定、最近そうした雰囲気になりつつある。肝心なのは、5月以降さらに前年比伸び率が拡大していくかどうかなのだが・・・。

【「東大日次物価指数」も4月消費者物価指数の前年比3%を示唆】

 ここにきて、4月のCPIが前年比3%台半ばにまで上昇するのではないか、との見方が出ている。その根拠になっているのが「東大日次物価指数」の足元の上昇だ。東大日次物価指数とは、東京大学の渡辺努教授らが作成している日次の物価指数で、全国のスーパー約300店舗で集めたPOS(販売時点情報管理)データを利用し、売れ筋商品を考慮した物価動向を、3日後という速さで公表している。対象とする品目で作成しなおしたCPIと比べてみると連動性が極めて高く(図表1)、速報性に優れていることから、CPIの先行指標として貴重な手がかりとなる。その消費増税分を除くベースの前年比が4月に入って大きく上昇しているのだ。
 愛宕伸康

 図表1の右図の青い折れ線グラフで、東大日次物価指数(消費税率引き上げによる影響を除くベース)の最近の動向を確認すると、前年比伸び率は3月下旬にかけて一旦マイナス幅を拡大させたものの、4月になって大きく跳ね上がっている。こうした動きは5日の日経新聞朝刊でも、「4月1日の物価は税抜きベースで前年比0.9%上昇」との見出しで紹介された。要因は大きく2つ考えられる。

 一つは特売の影響である。3月下旬にかけて、消費増税前の駆け込みを当て込んだ特売を仕掛けた店舗が多くうかがわれた。4月になってその反動が出た可能性がある。もう一つは、便乗値上げの可能性である。例えば、これまでのコストの増加分をこの機に乗じて転嫁したケースや、3%ちょうどではなく単純に端数を切り上げて価格設定したケースなどが考えられる。いずれにせよ、東大日次物価指数を見る限り、消費増税分以上の値上げが実施された可能性は高いように思われる。ただし、4月のCPIが前年比3%を大きく超えるほど値上げされたかどうかは、慎重に見ておいたほうが良い。

 まず、東大日次物価指数はスーパーで取り扱う商品が対象であるため、カバレッジはCPIの約17%と、決して高くない。したがって、CPIの先行指標として有用であることは間違いないが、それでCPIがすべて決まるわけではない。それ以外の品目の動きも、CPIを考える上では重要だ。図表2は、CPIのヘッドラインと、東大日次物価指数が対象とする品目を除いて作成したCPIの前年比を比較したものである。これを見ると、両者は概ね同じ動きをしている。
 愛宕伸康
 また、東大日次物価指数の振れが大きいことにも留意が必要だ。例えば、判明している4月1日から10日までの伸び率の平均値をとって指数を推計し、先行きもその水準で推移すると仮定した場合、4月の前年比は0.6%になる。これは上述したCPIの4月の前提(ヘッドライン1.2%、コア1.0%)よりやや低いが、もともと東大日次物価指数はCPIに比べて伸び率が低く出る傾向があるため、むしろ違和感はない。しかし、1日の指数水準に合わせて計算してみると、0.6%が1.2%に跳ね上がる。つまり、発射台の置き方次第で結論は大きく変わり得るということだ。

 昨年11月5日に日経センターで開催したセミナー「異次元金融緩和で物価は上昇していくのか」で、パネリストの1人として参加された日本スーパーマーケット協会専務理事、竹井信治氏の発言を思い出す。要約すれば、「商品には消費者がその水準を超えたら手を出さなくなるという『値ごろ帯』がある。消費増税分を上乗せした価格がその値ごろ帯を超えないよう、事前に値下げをする可能性が高い」とのことだった。おそらく小売の現場では、その消費増税後の「値ごろ帯」を巡って適正な販売価格を探る動きが続いているに違いない。東大日次物価指数は4月中にまだまだ大きく変動する可能性がある。

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