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医療

新型コロナワクチン、副反応の危険性

九州大学教授 馬場園明

2021/01/13

新型コロナワクチン、副反応の危険性

 新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、日本政府は1月7日、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県を対象に再び緊急事態宣言を発令した。期間は1月8日から2月7日までの1カ月間。重症者は徐々に増えており、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を備えた病床はひっ迫している。

 中国・武漢市で新型コロナウイルスの最初の症例が発見されてから1年余り。パンデミックの第一波が収まるかと思うと、第二波が到来。第二波が収まらないまま、第三波が到来。ヨーロッパなどでは従来種より感染力が強い変異種も発見され、新型コロナが収束する兆しは見えない。

 新型コロナ対策の切り札とされているのが、新型コロナに対する抗体をつくるワクチンの開発だった。これまでアメリカ、ドイツの製薬会社がワクチンの開発に成功。イギリスは2020年12月8日から、アメリカは12月14日から米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンの接種を始めている。

 アメリカは米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンに加えて、米製薬会社モデルナが単独開発したワクチンも12月8日、緊急使用を許可した。いずれもmRNAという種類のワクチンで、これまでの生ワクチンや不活化ワクチンとは製造方法が異なる。

 生ワクチンは、ウイルスの毒性を弱めたものが原材料。不活化ワクチンは、ウイルスの感染能力を失わせたものが原材料。いずれもワクチンの製造にウイルスそのものが必要になる。一方、mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝子から免疫効果を誘導する遺伝子配列を探し、その遺伝子配列をもとにワクチン用遺伝子を設計し、ワクチンを生産する。

 米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンと、米モデルナが開発したワクチンを比較すると、接種回数はいずれも2回だが、接種の間隔が異なる。治験方法は、どちらもワクチン群とプラセボ(偽薬)群をくじ引き同様に割り振る無作為化比較対照試験を採用しており、2つの治験結果は単純比較できる。【1】【2】(表1)

 

 

 ワクチン群とプラセボ群の新型コロナ発生率は、両ワクチンともほぼ変わらなかった。したがって、ワクチン群の発生率をプラセボ群の発生率で割った相対危険度、予防効果も同等だった。ワクチン間の相対危険度、予防効果に差はなく、いずれも重篤な副反応(副作用)はなかったとされる。

 ワクチン間の大きな違いは、ワクチンを凍結して保存する冷凍保存温度と、人体に投与する前に解凍して冷蔵庫で保存できる期間の違いである。これはワクチンの加工方法の違いによるものと考えられるが、ワクチンに関する情報が限られている現状では、その優劣を判断することはできない。

 新型コロナのワクチン接種で先行するイギリスでは、ワクチン接種の優先順位が決められている。【3】(表2)この優先順位は、ワクチンの接種によって恩恵が大きい順番とされているが、言い換えれば、ワクチン接種の優先順位は新型コロナのリスクが高い順番とも言える。

 

 

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料によれば、2020年1~4月、同年6~8月のいずれの期間においても年齢が高いほど、重症化、死亡のリスクが高くなっている。(表3)このため、日本におけるワクチン接種についてもイギリスと同様の優先順位を付ける可能性が高い。

 

 

 一般にワクチン接種の優先順位は経済学的な観点から決められる。重症者発生率や死亡率が高いグループへのワクチン接種は、新型コロナに感染した場合の医療費や本人、家族の間接費用のコスト削減効果が大きくなる。このため、高齢者や医療従事者、基礎疾患がある人の優先順位は必然的に高くなる。

 もっとも、日本国内の重症者発生率は、ワクチン接種が先行して始まったイギリスやアメリカに比べてかなり低い。仮に新型コロナに感染しても重症化リスクが小さい基礎疾患のない若年者にとってワクチンを接種する直接的なメリットは明らかになっていない。

 そして、最大の問題は、ワクチン接種にどのような副反応(副作用)が存在し、どれだけのリスクがあるか現時点では分からないことだろう。米ファイザーと独ビオンテック、米モデルナの両ワクチンの治験でも、疼痛、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛の症状は多数報告された。

 イギリスやアメリカではワクチン接種後、強いアレルギー反応であるアナフィラキシ―ショックが発生したとの報道もあるが、これは生命にかかわる問題である。アナフィラキシ―ショックの既往症がある人にはワクチンを接種しないとの指示も出ているが、アナフィラキシーショックは完全に予見できず、一定数の発生は避けられない。

 アナフィラキシーショックのほかにも、抗体依存性感染増強 (ADE) が発生する可能性が指摘されている。これは、ウイルス粒子とある抗体が結合すると、宿主細胞への侵入が促進され、ワクチン接種をきっかけに、より重篤な症状が引き起こされる現象である。

 新型コロナの感染拡大により、医療の現場は疲弊し、多くの国民が経済的に困窮している。しかしながら、ワクチンの効果がどれだけ持続するのか、その普及が集団免疫を形成できるのかは明確でない。政府はワクチン接種で発生した障害を補償するとの報道もあるが、健康や生命が損なわれれば、取り返しはつかないだろう。

 日経メディカルOnlineと日経バイオテクが2020年11月20日~12月2日に実施した新型コロナワクチンに関するアンケート調査によれば、医師6830人のうち2019人(29.6%)が「早期にワクチン接種を受けたくない」と回答。このうち1441人は回答理由に「安全性が十分に検証されていないから」を挙げている。

 日本政府は、新型コロナワクチンをすぐに国民に接種することはせず、独自の治験で安全性を確認してから導入する。1月中には治験を終え、2月にも国民への接種を始める計画だが、mRNAワクチンは人類にとって全く新しいワクチンであり、これまで想定しなかった、新しい副反応(副作用)が起きる可能性も考慮しなければならない。

 日本薬剤疫学会、日本疫学会、日本臨床疫学会、日本ワクチン学会は昨年11月、新型コロナワクチンの国内承認にあたり、ワクチン被接種者全員を登録、追跡する医療情報システムの構築とワクチン接種の効用、副反応(副作用)の情報共有を提言した。こうした提言を真摯に受け止めてこそ、政府は新型コロナワクチンに責任を持つと言えるだろう。【6】

 

 ばばぞの・あきら 1959年鹿児島県生まれ。九州大学医学部卒。米ペンシルバニア大学大学院、岡山大学医学部講師、九州大学健康科学センター助教授を経て、九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座教授。岡山大博士(医学)。

 

【1】Polack FP, et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med, 2020. doi: 10.1056/NEJMoa2034577

【2】FDA. Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting: Moderna COVID-19 Vaccine.

【3】UK Government, Department of Health and Social Care, Priority groups for coronavirus (COVID-19) vaccination: advice from the JCVI, 2 December 2020,

【4】厚生労働省、第11回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料(京都大学西浦教授提出資料)、2020年10月22日

【5】日経バイオテク、新型コロナワクチン、早く打ちたい医師や業界関係者はどの程度いる?、2020年12月11日

【6】一般社団法人日本薬剤疫学会、一般社団法人日本疫学会、一般社団法人日本臨床疫学会、日本ワクチン学会、新型コロナウイルスワクチンの安全性確保に関する4学会共同声明、2020年11月

 

(写真:AFP/アフロ)

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