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医療

新型コロナワクチン、変異株への有効性

九州大学教授 馬場園明

2021/07/14

新型コロナワクチン、変異株への有効性

 菅義偉首相は7月8日、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない東京都に対して4度目の緊急事態宣言を発令すると発表した。【1】 期間は7月12日~8月22日まで。東京都で新規感染者数が増加する背景には、「新たな変異株、デルタ株の影響がある」(菅首相)という。

 インドで2020年10月に発見されたデルタ株は新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を構成する452番目のアミノ酸基が「L(ロイシン)」から「R(アルギニン)」に変異したものである。新型コロナワクチンのデルタ株に対する予防効果はどれくらい見込めるのかーー。本稿では最新の臨床研究を紹介する。

 まずカナダの研究グループが2020年12月から2021年5月にかけて新型コロナウイルスの従来株と変異株(アルファ株、ベータ株 / ガンマ株、デルタ株)の感染者と従来株、変異株いずれにも感染しなかった非感染者を比較した研究調査を紹介する。【2】 表1の3行目と12行目に有症状者と重症者(入院・死亡)の感染者、非感染者の平均年齢がある。

 これをみると、重症者(入院・死亡)の平均年齢は、①従来株の感染者(69.8歳)②ベータ / ガンマ株の感染者(62.6歳)③アルファ株の感染者(60.5歳)④デルタ株の感染者(55.6歳)⑤非感染者(43.1歳)――の順になっており、デルタ株は比較的若い世代で重症化しやすいことが分かる。(表1)

 次に新型コロナワクチンの従来株と変異株に対する感染予防確率と重症化予防確率をみる。デルタ株に対する感染予防確率はファイザー製(1回接種後14日以上)=56%、モデルナ製(同)=72%、アストラゼネカ製(同)=67%だった。また、重症化予防確率はファイザー製(1回接種後14日以上)=78 %、モデルナ製(同)=96%、アストラゼネカ製(同)=88%だった。(表2)

 また、英スコットランド全域を対象に2021年4月1日~6月6日の新規感染者に対するワクチンの有効性を分析した研究調査を紹介する。【3】 同調査では、ワクチン接種者を「1回接種後28日未満」「1回接種後28日以上」「2回接種後13日未満」「2回接種後14日以上」に分類し、ウイルスの感染率を比較し、予防確率を計算している。

 デルタ株の感染予防確率は、ファイザー製ワクチンを「1回接種後28日未満」は12%、「1回接種後28日以上」は30%だった。一方、「2回接種後13日未満」は66%、「2回接種後14日以上」は79%に上昇した。新型コロナワクチンを2回接種することのデルタ株に対する有効性は明らかである。(表3)

 そして、デルタ株有症状者の重症化予防確率は、ファイザー製ワクチンを「1回接種後28日未満」は18%、「1回接種後28日以上」は33%だった。一方、「2回接種後13日未満」は84%、「2回接種後14日以上」は83%に上昇した。いずれも全対象者の感染予防確率と同様の傾向を示した。(表4)

 日本国内で新型コロナワクチンを1回以上接種した人は65歳以上人口の75.8%、2回接種した人は65歳以上人口の45.7%を占める。【4】 本稿で紹介した研究結果が日本人にも該当するかどうかは検証する必要があるが、新型コロナワクチンを2回接種すれば、一定の重症化予防効果が期待できることは間違いない。

 新型コロナウイルスの新規感染者数が高止まりする現状においては、医療機関が入院患者を受け入れられなくなる医療崩壊を防ぐことが最優先課題である。そして、重症化を防ぐという点で新型コロナワクチンは有効だ。今後は比較的若い世代の変異株流行を踏まえて、新型コロナワクチンの65歳未満への普及をどう図っていくかが課題になる。

 

 ばばぞの・あきら 1959年鹿児島県生まれ。九州大学医学部卒。米ペンシルバニア大学大学院、岡山大学医学部講師、九州大学健康科学センター助教授を経て、九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座教授。岡山大博士(医学)。

 

【1】内閣官房、新型コロナウイルス感染症対策、2021年7月8日

【2】Nasreen S, et al, Effectiveness of COVID-19 vaccines against variants of concern, Canada

【3】Sheikh A,  “SARS-CoV-2 Delta VOC in Scotland: demographics, risk of hospital admission, and vaccine effectiveness” The Lancet. 2021-06-14.

【4】日本経済新聞、チャートで見る日本の接種状況 コロナワクチン、2021年7月13日

 

(写真:AFP/アフロ)

 

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