「日経・経済図書文化賞」50回記念特集
1958年に創設された「日経・経済図書文化賞」は、2007年で50回を迎えました。同賞の半世紀にわたる歴史を振り返りつつ、今後一層重要となる役割を担うために、日本経済新聞社と当センター共催で行った記念イベントの概要をご紹介します(役職等は2007年11月当時)。
日経・経済図書文化賞の論壇に果たした役割−−今後の発展へ向けて
審査委員座談会「経済学深化、政策に影響力」(2007年11月19日開催)
戦後日本に本格的に紹介された近代経済学は大きく発展・深化を遂げ、現実の経済政策にも強い影響力を持つようになりました。日経・経済図書文化賞 審査委員長の貝塚啓明、審査委員の八代尚宏、伊藤元重、深尾光洋の4氏が、時代ごとに受賞図書を振り返りながらその歩みを話しました。詳細はこちら
小島 明「期待される触媒機能の深化」(寄稿)
日経・経済図書文化賞は、良き経済論争と経済学研究を生む重要な触媒として機能してきました。その機能は半世紀の歴史を経て定着したといえます。今後は分野をまたぐ共同研究も奨励する必要があり、そこにおいても同賞は重要な触媒機能を期待されています。全文はこちら
記念シンポジウム 日本経済−過去・いま・未来(2007年11月6日開催)
1:基調講演 「グローバル経済の展望と日本:改革続け生産性向上を」
- ビル・エモット英エコノミスト誌前編集長が、国際信用市場の危機、具体的には信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の表面化した2007年8月9日を世界経済の転換点と指摘しました。「世界経済は今後1-2年は困難になるかもしれないが、これは必要な調整過程だった」とし、日本経済の見通しについては、「グローバル経済の調整は、今後1−2年は日本経済に対して逆風となる。日本政府は短期的には、増税など消費にマイナスとなる政策を避け、最低賃金を上げるといった消費を喚起する政策をとるべきである」と述べました。詳細はこちら

2:パネル討論 第1部 「日本経済の成長と課題:活力ある経済、市場を軸に」
- 猪木武徳、大竹文雄、香西泰の各氏が、日本経済を論議(モデレーターは小島明会長)。日本経済が長期低迷した1990年代について、猪木氏は「先行きはよくないという予想を変えられるパワフルな先導力が、政治にも研究者にもマスコミにもなかった」と指摘。また、日本経済の今後について、大竹氏は、基本は市場に委ねながら「どのように市場を設計していくかが今後の国家の役割」と語り、香西氏は人口減少で財政が危機にある中で、どのように成長を確保していくかが課題だと述べました。
人口減少や格差問題に対応するためには、技術革新や人材の質の向上(教育)が大事だとの点で意見が一致しました。詳細はこちら
3:パネル討論 第2部 「日本企業の進化と挑戦:激変生き抜く経営を模索」
- 今井賢一、伊丹敬之、香西泰の各氏が、日本的経営の功罪や、21世紀の企業経営について討論(モデレーターは西岡幸一氏)。今井氏は1980年代に日本企業が絶頂期を迎えたのは、「リーン(筋肉質の)プロダクションの仕組みを作り出したことが大きい」と強調しました。90年代の経営について、伊丹氏は「日本的経営の功罪は、功が7、罪が3だと思う」と述べ、日本企業の「人本主義」はこれからも基本的に捨てるべきではないとの考えを示しました。香西氏はグローバル化を見据え市場主義経済の基本ルールに立ち返った経営スタイルが求められると主張しました。詳細はこちら

金森久雄「長期課題見すえ骨太議論を」(寄稿)
戦後60年余、日本経済は多くの論争を通して今日に至っています。「成長率論争」「八幡・富士製鉄の大型合併論争」「為替レート論争」などいくつかを取り上げ、日本経済の針路に関する骨太の議論がいまこそ必要であると指摘しています。詳細はこちら
金森久雄「戦後の経済論争」
日経・経済図書文化賞の50年は、戦後日本経済の歩みと重なります。
日本の政策論争の主役の1人である金森久雄が、経済史を彩った経済論争とその意義を語ります。
香西 泰「私の愛した経済論文」
「高度成長の時代」で第24回(1981年度)の日経・経済図書文化賞を受賞し、日本を代表するエコノミストの1人として活躍している香西泰が、自らの記憶に残る日本経済についてのレポートを紹介します。
50回記念パーティー開く(2007年11月5日)
日本経済研究センターは日本経済新聞社と共催で、「日経・経済図書文化賞」の50回を記念するパーティーを、11月5日東京大手町のアーバンネット大手町ビルで開きました。一橋大学名誉教授の篠原三代平氏や日本学士院会員の小宮隆太郎氏などの歴代受賞者をはじめ、出席者は90名を超えました。
■日経・経済図書文化賞受賞図書一覧 −日本経済とともに(年表)
■ データでみる日経・経済図書文化賞
第50回の節目を迎えた今回、受賞図書270冊と受賞者333人(団体を含む)の傾向を分析しました。詳しくはこちら