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深尾光洋の金融経済を読み解く

2010年4月30日 日銀当座預金への付利と短期金融市場

 2008年秋に日本銀行が導入した補完準備預金制度により、市場金利の下限が0.1%となっている。この制度は、日銀がオペをいくら増額しても市場金利が0.1%以下には低下しない原因となっている。

補完準備預金制度とは? 

 08年11月までは、日銀当座預金は無利子であった。しかし08年10月に補完当座預金制度が導入され、必要準備額を超える準備預金の保有(いわゆる超過準備額)に対して、日銀が利息を支払うことになった。具体的には、11月16日からの準備預金計算期間について、日銀当座預金の平均残高が必要準備額を上回る場合には、その上回った金額について、日銀が定める金利を支払っている。当初この制度は08年11月16日から09年4月15日までの準備預金計算期間で行う臨時の措置として導入されたが、その後延長され、本稿執筆時点でも実施中である。この金利は、制度導入の当初、日銀が誘導目標とする翌日物無担保コール金利(0.5%)から0.2%差し引いた水準(0.3%)と規定されていたが、08年12月に誘導目標が0.1%まで引き下げられたため、支払い金利も0.1%と同じ水準に設定されることになった。 

 縦軸に短期金利、横軸に当座預金残高をとると、その需要関数はほぼ直角双曲線のような形になると考えられる(図1)。金融機関は、法定準備額を下回るのは避けようとする。法定の準備額に当座預金の平均残高が不足すると過怠金を課されるうえ、資金繰りの失敗として面目を失墜するからである。このため日銀当座預金残高への需要は市場金利水準の如何にかかわらず法定準備額が下限になる。逆に、市場金利が低下して補完準備預金制度の金利に近づくと、金融機関にとっては、日銀当座預金に置いてあれば貸し倒れリスクなしで補完準備預金金利が得られるのに対し、市場で運用すれば多少なりとも貸出先金融機関の破綻リスクが存在するので、安全な日銀当座預金の需要はどんどん大きくなる。




超過準備額金利が市場金利の下限に 

 日銀は、オペにより当座預金残高を自由にコントロールできるため、この需要関数を使って短期市場金利を決定することが可能である。短期市場金利が誘導したい水準に来るように、当座預金の量を微調整・調節すればよい。一方、日銀が当座預金の残高を目標とする場合(量的緩和政策では、日銀当座預金の金額が目標になっていた)には、まず当座預金残高が目標額になるようにオペを行い、短期市場金利はマーケットで、例えば0.001 %というように決まる。 

 補完準備預金制度が導入される以前は、上の図の水平軸に平行な需要関数の下限となる水平線は存在せず、需要関数の右端は、限りなく水平軸に近づいていた。しかし補完準備預金制度の導入により、実質的に日銀が超過準備に支払う金利が市場金利の下限となった。 

 実際に、この需要関数の形状をデータで見てみよう。図2は、縦軸が翌日物コール金利、横軸は実際の準備預金額を法定準備預金額で割ったものである。法定準備額は、預金の平均残高によって毎月変動しているため、図では実際の準備預金額が法定準備額の何パーセントになるかという観点で図示してある。 




 楕円で囲った範囲以外の時点では、補完準備預金制度が導入される以前であり、日銀当座預金の金利はゼロであった。この期間については、グラフの形状は、直角双曲線と言うよりも直角そのものに近く、原点付近でわずかに原点から右上に位置している。補完準備預金制度が導入された以後は、市場金利の下限が超過準備の金利である0.1%となっていることが分かる。 
 
 景気回復のペースが遅い現在、かつての量的緩和並みの金融緩和を実現するためには、補完準備預金金利をゼロパーセントにまで引き下げる必要があるといえる。

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(日本経済研究センター理事長)


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