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深尾光洋の金融経済を読み解く

2012年4月6日 2022年の日本経済

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日本経済研究センター参与 深尾光洋
 前回のこのコラムでは、財政バランスの将来予測を行ったが、財政赤字の深刻さについてイメージが沸かない読者もあると思われる。そこで、以下ではテレビドラマのシナリオ風に、10年後の日本が財政破綻に陥る過程を描いてみた。

2022年7月
無駄な歳出を削減することで「増税なき財政再建は可能」であると主張する野党XX党が、消費税増税は必要だと主張する与党に衆議院選挙に圧勝して政権を取る。これで民主党の野田政権が党の分裂、総選挙実施と引き替えに消費税率の5%から10%への引き上げに成功して以来、消費税増税は3度目の失敗になる。
日本の経常収支が3年連続の赤字を記録する。ニュース番組の著名エコノミストは、高齢化が進む中で貯蓄率が低下しており、財政赤字が続く限り黒字転換は見込めないと説明する。

2022年9月
円安、国債価格下落、株価下落のトリプル安が東京市場を襲う。1ドル100円台の円安は輸出企業にとってプラスだが、株安は長期国債金利が3%台に乗ったことが嫌気されたためと解説された。政府は長期金利上昇を恐れて、急激な円安を抑制するドル売り介入を続けているため、外貨準備はピークの半分以下の 6000億ドルにまで減少している。
政権内部には、増税による財政再建が必要だとする勢力があったが、わずか2カ月前の選挙公約を反故に出来ないとの意見が大勢で、翌年度の予算編成方針でも増税は見送られた。

2022年10月
ホワイトハウスを訪問した日本の首相に対して、懸案の社会保障改革を成功させた米大統領が「日本の財政状況に対する懸念を表明した」との、米財務省筋のリークが報道される。円相場は1ドル130円台まで下落し、長期国債金利は4%に達した。

2022年11月
財務大臣は金利負担が大きい長期国債の発行額を削減し、低利で発行できる2−3年満期の国債を大幅に増発すると表明。さらに、日銀に対して長期国債の買いオペを増額することで長期金利の上昇を抑えるように要望した。これに対して日銀総裁は、巨額の財政赤字が長期金利上昇の原因であると指摘し、日銀と政府の対立が際立っていることが報道される。

2022年12月
財政赤字が一般会計歳出の7割を超える予算案が公表される。年末の一般政府グロス債務は300%に達したことが報道される。米国の大手格付け機関は、日本国債をBBB−にまで格下げし、さらに近い将来の格下げを示唆した。国債金利は5%に上昇した。地方銀行数行が、国債価格の暴落による損失で、公的資金の注入を申請したと報道された。日本のメガバンクの海外支店が、外貨資金調達難に直面していると報道される。

2023年3月
外貨預金ブームが拡大し、ドル預金と金の延べ棒が人気を集める。金利の上昇で住宅ローンはあまり伸びていないが、預金を取り崩して不動産を購入する動きが 活発化する。国債金利は7%台にのり、円相場は1ドル180円台の円安となる。消費者物価上昇率も3%台に乗り、日銀は短期市場金利を2%へと引き上げた。

2023年4月
日銀の政策決定会合で、財務大臣と経済財政担当大臣が出席して金利引き上げに反対したものの、日銀は市場金利を2%から3%に引き上げることを決定した。しかし市場は、金利引き上げ幅が小さすぎると判断して、インフレの加速懸念を強め、長期金利は8%に上昇した。

2023年5月
大手格付け機関のうち1社は、日本国債をBB+に格下げし、国債はジャンク債となった。長期金利が10%に近づく中で、政府は長期国債の発行を全面停止し、2年以下の短期国債を集中発行することを決定した。

2023年6月
G20緊急サミットで日本問題の集中討議が行われた。サミット後の共同声明で、日本は3年以内にプライマリーバランスを黒字化すること、そのために消費税を3年間毎年5%引き上げ、25%にすることが約束された。

2023年11月
大混乱の国会で、消費税引き上げ法案が成立した。しかし長期金利は20%に近づき、短期金利も8%台に上昇した。為替相場は1ドル250円まで下落し、消費税率引き上げ前の駆け込み需要でインフレ率は10%台に上昇した。IMFとOECDは共同で日本に緊急ミッションを送り、所得税率の大幅引き上げ、相続税の課税強化、年金支給開始年齢の70歳への引き上げを勧告した。また、金融政策については、早急に実質金利をプラスにするために、短期金利を15%以上にするように勧告した。

2023年12月
日銀は、翌年度のインフレ率が20%台に乗る可能性を示唆し、短期市場金利を18%に引き上げた。
翌年度の予算案で、政府債務の利払い負担が税収を上回る見通しであることが報道されると、国債金利は30%台に上昇した。
全メガバンクが、国債価格の暴落でBIS自己資本比率が維持できないと表明し、政府に対して20兆円の資本注入を求めた。
両替商や銀行ではドル現金が飛ぶように売れ、外貨の現金が航空貨物で大量に輸入されていることが報道された。
政府は、国債の市中消化難に直面し、日銀に対して政府の資金繰り支援を要請した。日銀側がこれを拒否すると、政府は財務大臣に対して日銀に対する命令権を付与する日銀法改正案を準備した。これに対して、日銀総裁は辞任を表明した。

2024年3月
改正日銀法で、財務大臣は日銀に対して5%の金利で無制限に政府に対して資金供給することを命ずることが出来ると規定された。
年金のインフレスライドのタイムラグから、生活に困窮する高齢者が急増していることが報道される。
インフレ反対のデモが拡大し、繁華街で放火事件が発生する。自殺の増加で、JR各線のダイヤが乱れる日が増加していると報道される。

2026年5月
日本の物価は、日銀総裁の辞任以後10倍に上昇し、政府債務のGDP比率は40%まで低下した。新たに政権を取ったYY党は、日銀法を再改正して日銀の独立性を再確立すること、憲法を改正することによりGDP比3%を超える財政赤字を禁止し、政府のグロス債務をGDP比60%以下にすることを公約していた。

(2012年4月6日)

(日本経済研究センター 理事・参与)




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