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小林光のエコ買いな?

2014年2月28日 アジア各国で興隆するエコ消費者の力

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日本経済研究センター研究顧問 小林光
 2月6日、7日と札幌で、Greener Week 2013-2014(国際シンポジウム「エシカル購入国際シンポジウム in 札幌」、グリーン購入国際会議「IGPN札幌フォーラム」、グリーン購入全国フォーラム)が開かれた。外は寒波が襲い、雪まつりの雪像を雪かきしないとならない程であったが、会場には熱気が溢れていた。外交関係が悪いとされる中国や韓国の代表も参加、同志的な友情溢れる熱いプレゼンをしていたのが、印象的であった。

中国のグリーン購入額、8年で100倍に

 自信をもってプレゼンをしていた点で際立っていたのは、中国である。グリーン購入に関する全アジアでの状況は、2012年秋時点の調査が最新の状況を示すものであるが、既に中国は、グリーン購入の推進機関、グリーン購入に関する法律制度、政府のグリーン調達の実行、グリーンな製品などのデータベース、国レベルで流通する環境ラベル、リサイクルに関する法制度、政府におけるグリーン調達推進予算枠、政府のグリーン調達に関する支援措置などの整備が終了していた。グリーンな製品の売り上げ規模も十分に発展していると評価されていた。

 本年の報告では、中国のグリーン購入の歴史が、20周年を迎えたことを述べ、それ以来これまでの間の進歩を説明するものであった。2003年1月に始まったその年の実績は、グリーン購入額131億人民元であったのが、11年には1兆1300億人民元と約100倍に増加し、06年に明確化されたエコ製品としてのラベリング基準の下では、同年15のカテゴリーしかカバーしていなかったものが、今日では45のカテゴリー、1225社のサプライヤーが作る5万1000以上の製品をカバーするまでに拡大したことが報告された。購入金額ベースでも、政府の調達では、エコ製品の購入額が同種製品購入額に占める割合として63%に達したという。

 さらに重要なことは、中国は、グリーン購入の動きの国際化にも大きく力を尽くすようになっていることだ。具体的には、中国は、国連環境計画(UNEP)の進める国際持続可能な調達イニシアチブ(SPPI)の下にある6つのワーキンググループに熱心に参加している。その中には、第3作業部会のように、市場参入障壁の取り扱いとその革新に関する提案を議論する重要なものもある。このほか、同じUNEP主導であるが、ASEAN+3の枠組みの中で、日中韓の経験を域内各国が学び、グリーン購入と環境ラベリングを推進するプロジェクトにも中国は熱心に取り組んでいることが報告された。これらの多国間活動に加え、二国間、三国間の協力プロジェクト、例えば、ドイツの連邦環境省との協力などの案件にも多数加わっている由であった。

 中国からは、将来の展望についても発表があった。かねてから、消費側、需要側のイニシアチブをもって、経済を変えていこうと主張してきた論者として、一番、頼もしく感じた点はこれであった。

 具体的には、中国は、製品がグリーンであるか否かの基準の充実、炭素排出係数(製品生産に関する単位当たりの温暖化ガス排出量)の改善、グリーンなサプライチェーンの整備に対し、グリーン購入の仕組みを一層活用することを考えているとのことだ。グリーン購入が経済環境政策として戦略的な役割を担うことを期待するため、この仕組みの働き具合についてモニターしたり、評価したりするメカニズムも開発していくとのことであった。

 サプライチェーンへの関心は、貿易の国際化を踏まえると、関税と貿易に関する一般協定(GATT)や世界貿易機関(WTO)のルールでは避けられてきた。製造法に基づく製品の区別や貿易制限(いわゆるPPM規制)を呼び込むものであって、途上国などからの反発など国際的な議論を呼ぶことは想定される。しかし、強力なツールにもなる。中国がこうした点にも目を向けるようなことになったことに関し、論者としては、中国の成熟と自信を感じる。他方で、我が国の産業界も世界最大の市場のこうした動きに先取り的に対応できなければいけないという気も、ひしひしと感じた。



韓国でも7倍に拡大

 韓国からも詳細な報告があった。

 韓国は、2012年に開かれたリオ+20の国連会議において、グリーン経済をテーマとして取り上げるべきだとの主張を最も強硬に行った国である。韓国のプレゼンは、1992年のリオの地球サミットまでさかのぼって、韓国のグリーン購入の取り組みを説明した。韓国のエコラベルは、1993年に導入された。1994年に制定された環境技術発展法は、公的部門でのグリーン調達の推進を勧奨する規定を置き、さらに2004年の環境製品購入奨励法では、公的部門におけるグリーン購入を義務付けるに至った。世界で最初のエコラベル制度はドイツのブルーエンジェルで、1978年の導入。そして二番手の日本は、1989年の導入であるので、韓国の取り組みは、世界でもやはり早い部類に入ろう。そのような長い沿革を持つことに加え、韓国では2011年に、公共交通機関の利用やエコラベルのついた商品購入に対する割引やポイント加算を行うグリーン・クレディット制度やエコ・ストアー・パートナシップを導入するなど、幅広いステークホルダーの巻き込みに向け、新しいアイディアの実装が進んでいることも注目される。

 韓国のグリーン購入の現状を見てみよう。政府や政府関係機関に義務付けられるグリーン調達の対象は、エコラベル該当品、グッド・リサイクル・マーク該当品、及びその他の認証取得品であって環境部が認めるものである。これらのうち、エコラベル製品は、150カテゴリーの下で、1672社が製造・販売する約9800製品を数え、リサイクルに係わるものは、16カテゴリー、206社が製造・販売する約250製品となっている。これを売上高でみると、2004年にこれら製品の購入実績が2550億ウォンであったのが、2012年には1兆7270億ウォン(約1億7000万ドル)に達したとされる。

 韓国のシステムの特徴は、省庁の業務を請け負って実施する業者にもグリーン購入の義務付けが間接的に及ぶ点であり、各国が見習うべき点であるように思われる。政府調達が、頻度の高いものについては省庁を超えて一元化され、共通的な調達品では、環境性能の確保が容易であるのも韓国の利点である。

 他方で、韓国のグリーン購入の長い歴史・経験を踏まえて、至らない点に関する認識も明確なことも、韓国のプレゼンで印象に残った点である。例えば、グリーン購入をつかさどる職員の交替時期が必ずしも長くなく専門性が蓄積されないこと、韓国では特に様々に発達している他分野の調達基準(例えば、復員軍人の製造した製品、婦人が製造した製品などの調達基準)との連携不足があることなどが、報告されていた。

 中国の今後の方針は既に見た。では、韓国の展望は何だろう。

 韓国は、前述したようにグリーン経済、グリーン成長のプロモーターを任じている。このため、2012年のリオ+20で今後の重要作業とされたことの一つ、持続可能な消費と生産に関する各種プログラムの10年のフレームワークへの参画を最重要視している。さらに言えば、2014年4月以降、UNEPとの連携の下で、持続可能な消費と生産に関するプログラム事業のアジア代表ボードメンバーとして活動、持続可能な消費・生産に関する「原則」の形成、持続可能な消費と生産のコンセプトのサプライチェーンへの適用などに力を尽くすことを明確にしている。

アジアのエコ消費パワーの増強に向けて

 日中韓の政治的緊張感は強い。しかし日中韓台湾などの北東アジア市場が、互いの垣根を低くして大きな市場を形成することは、EUに遅れようとも、いつかは実現する間違いない趨勢である。その時に、単なるコスト削減競争が行われるのではなく、人類の福祉を増す上で必要なことが付加価値としてきちんと認められる市場の形成に成功することが、人類全体の運命を左右しかねない、と論者は強く思う。そうであれば、日本のサプライヤーは、今月初めに札幌でアジア各国から開陳された、今後の緑の市場の設計方針に対して、目を開き、関心を持ち、その実現を助けるような事業活動を行っていくべきであろう。企業だけでなく、政府側の積極対応も必要となろう。例えば、アジア新興市場の各国は、それぞれのグリーンな製品に関して連携、可能であればそれらの相互認証を進めることに熱心であったが、実現には、優良偽装を避けるための市場でのサンプリング調査や公開聴聞・資料請求などの仕組みが求められる。こうした仕組みは北東アジア共通的なものに整備することが不可欠であり、これに先鞭をつける、といったことが先導者としての日本政府の役割となろう。

 元気なアジアの姿を見て、日本が老大国になるのではなく、若さを分けてもらって元気になる。そうした可能性を見させて貰えたのが、寒い雪まつりのさなかに行われた国際グリーン購入ネットワークの総会に参加した一番の収穫であった。

*日本のグリーン購入の現状については本コラム「2013年11月22日 今こそ、グリーン購入!需要サイドの力を見せよう」を参照

(2014年2月28日)


(日本経済研究センター 研究顧問)

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