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小峰隆夫の地域から見る日本経済

2013年4月19日 地域別人口推計で見るこれからの地域―持続可能な雇用機会の拡大を

日本経済研究センター研究顧問 小峰隆夫
 国立社会保障・人口問題研究所は2012年1月に日本の将来推計人口を発表しているのだが、本年3月これを地域別に細分化した「日本の地域別将来推計人口(推計は2040年まで)」を発表した。この推計は、これからの日本の地域が直面することになる課題を浮き彫りにしている。

過疎化の進展とコンパクト化の要請

 まず人口減少について考えよう。日本全体の人口は、2005年以降減少過程に入っており、今後も減少が続く。2010年に比べて2025年には5.8%、2040年には16.2%総人口は減少する(死亡・出生中位、以下同じ)。

 全国で減るのだから、地域別に見ても人口が減るのは当然だ。今回の推計によると、2015年から2020年には46都道府県(例外は沖縄だけ)で人口が減少するが、2020年から2025年には全ての都道府県の人口が減少する。市町村別にみても同じである。2015年から2020年には全1683自治体のうち90.3%が人口減少となるが、2025年から2030年にはこれが96.7%、2035年から2040年では98.4%となる。日本の全地域が人口減少を前提として地域の経済社会を考えていかなければならないということである。

 問題は、この人口減少度合いには地域差が大きいことだ。都道府県別に、2040年の人口が2010年に比べてどの程度減少するかを見ると、東京は6.5%程度なのだが、秋田県は実に35.5%、青森県は32.1%も減る。この結果、最も人口が少ない鳥取県の場合、2040年の人口は44.1万人となる。これは現在の東京都葛飾区くらいの人口である。

 市町村別に見ても同じである。2010年と2040年を比較すると、この間に人口が4〜6割も減る自治体が全体の22%、2〜4割減少が46.6%となる。簡単に言えば、約半数の自治体は人口が半分以下になるということだ。

 要するに過疎化が著しく進展するということだ。このことは経済的にも大きな問題を引き起こすだろう。まず、人口が減るから自治体の財政基盤が弱体化する。一方で、住民サービスを提供するための行政コストは上昇する。規模の経済性が働かなくなるからだ。こうした問題点を小さくするためには、出来るだけ住民を集約させて、サービスを効率化させるという、いわゆる「コンパクト化」が必要となる。

2040年以降、高齢化進展するも高齢者数は減少

 次に、高齢化について考える。日本全体で高齢化が進展することは良く知られている。2010年で23.0%だった高齢者比率は、2040年には36.1%に上昇する。当然、高齢者の数も増え、2010年で2900万人だった高齢者数は、2040年には3900万人となる。

 ただし、この高齢者比率の変化と高齢者の絶対数の変化は必ずしもパラレルに進行するわけではない。現に、日本全体では、2040年までは高齢化比率が上昇し、高齢者の絶対数も増加するのだが、その後は、2050年には高齢者比率はさらに38.8%へと上昇していくものの、高齢者の絶対数は3800万人へと逆に減少する。高齢者の数は減るが、全体の人口減の方が大きいため、高齢者比率は上昇するのである。

 この区別が重要なのは、高齢者向けの医療・介護などの需要は、高齢化比率ではなく、高齢者の絶対数に応じて変化するからだ。しばしば、「高齢化の進展によって、今後医療・介護需要は増え続ける」と言われたりするが、これは2040年までは正しいのだが、その後は間違いだということになる。

 同じことが地域ではより鮮明に起きる。まず、高齢化比率は全都道府県で一貫して上昇する。2010年時点で最も高齢化比率が高いのは秋田県(29.6%)だが、同県の2040年の同比率は実に43.8%となる。まさに超高齢地域である。しかし、高齢者の絶対数という点では地域によってかなりの差が出る。すなわち、高齢者の絶対数は、2020年までは全都道府県で増加するのだが、その後は減少する県が現れる。

 この点について、今回の報告書に面白い図が掲載されているので紹介しよう(図1)。この図は、縦軸に2040年時点での高齢化比率、横軸に2010年から2040年にかけての高齢者の増加度合いを示したものだ。明らかに逆相関がある。つまり、高齢化率の高いところよりも、低いところの方が高齢者の増加率が高いということである。



 さらに、高齢化率の高い地域はおおむね地方部であり、低いところは大都市周辺部である。地方からは65歳以下の人々が流出するので高齢化比率が高くなるのだ(大都市周辺部は逆)。つまり、これからは主に大都市周辺部で高齢者が増えることになるのであり、医療・介護などの需要も大都市周辺部で増加することになるわけだ。

 こうした地域別の人口推計を基礎に、地域別の医療・介護需要の将来展望を計算することが出来る。私が主査を務めた当センターの「地域から考える成長戦略」研究分科会報告(2013年3月)に収録されている「人口オーナス下の地域再生:要介護者推計を中心に」(小峰隆夫、松崎いずみ)では、センター独自の地域別人口推計に基づいて、都道府県別の要介護者数の推計を行い、2010年から2040年にかけては三大都市圏で要介護者が大幅に増加するという姿を明らかにしている(図2)。



人口オーナスを通じた悪循環の懸念

 最後に「人口オーナス」についてみよう。人口オーナスとは人口に占める働く人の割合が低下する現象を指している。ここでは、これを人口に占める生産年齢人口(15〜64歳)の比率で見ることにする。日本全体の生産年齢比率は、2010年の63.8%から2040年には53.9%へと低下する。働き盛りの人が相対的に少なくなるので、これによって日本の成長力は低下することが懸念されている。

 人口オーナスは地域にとっても大きな問題となる。人口移動がある分だけ日本全体よりも事態は深刻かもしれない。というのは、発展性の低い地域から、発展性の高い地域に人口が移動すると、それによって発展性の低い地域の人口オーナスの度合いはさらに強くなり、ますます地域の成長が制約されることになるからである。

 今回の推計でも、生産年齢人口の比率は、すべての都道府県で低下し、大都市圏地域が高く、地方部が低いという傾向は同じである。悪循環は続いているということだ。

 こうした人口オーナスの悪循環を避けるには、地域で持続的な雇用機会を拡大し、人口の流出を避ける必要がある。それが「地域から成長戦略」であり、それを検討したのが前述の「地域から考える成長戦略」研究分科会だったのである。

(2013年4月19日)

(日本経済研究センター 研究顧問)
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◇日本経済研究センターの「地域から考える成長戦略」研究分科会は、最終報告「地域振興の主役は地域、成否のカギは人材」と題する報告書をまとめました。

◇13年度「地域とアジアの架け橋研究会」参加メンバーを募集します。詳細はこちら

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