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大竹文雄の経済脳を鍛える

2017年12月14日 O型の人はなぜ献血するのか?

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日本経済研究センター研究顧問 大竹文雄

1.血液型性格判断
  血液型性格判断を信じている人は結構いるようだ。日本人の血液型の分布は、A型が約40%、O型が約30%、B型が約20%、AB型が約10%と適度にばらついているのも血液型性格判断や血液型占いを信じる人が多い理由の背景にあるだろう。ネットの情報によれば、各血液型の特徴は、つぎのとおりだ。A型は真面目で誠実で気配りができる反面、神経質で頑固だそうだ。O型は、行動力があり、大らかな反面、大雑把で自信家だという。B型は独創的で社交的な反面、好き嫌いが激しく衝動的ということになっている。そして、AB型は感受性が強く、クールな反面、面倒を嫌い打算的だという。

 多くの人が信じている血液型性格判断だが、学術的にはほとんどの研究が否定している。例えば、縄田(2014)は多くの先行研究が血液型と性格の間に関係がないことを紹介した上で、大阪大学が行った大規模な日米比較調査を用いて、68項目の性格や行動特性のうち65項目で統計的に有意な差がみられなかったことを報告している。しかも、統計的に有意な差があったものでも、血液型によって説明できる割合は最大で0.3%と非常に小さいという結果を示している。縄田氏は、同じデータで職業と血液型の関係もないこと、幸福感や利他性と血液型の関係もないことを分析し、インターネット上で発表している。

2.献血行動と血液型
 血液型と私たちの行動特性の間には、何の関係もないのだろうか。私たちは、大阪大学が行っているアンケート調査を用いて献血行動と血液型の関係を調べた(佐々木他(2017))。2017年の調査では、過去1年以内と過去数年以内の献血行動について質問をしている。アンケート回答者1311人のうち、過去1年以内に献血した人は約5.5%であり、数年以内に献血した人は約11.7%である。血液型別にみると、献血割合は次のようになる。過去1年以内に献血した人は、A型4.1%、B型4.3%、O型7.5%、AB型7.1%であり、O型の割合が一番高く、血液型間で献血者の比率が同じという帰無仮説は9.2%水準で棄却される。つまり、統計学的には、血液型によって献血割合は異なる可能性が高いということになる。数年以内に献血したことがあるという人の比率では、A型9.6%、B型9.4%、O型15.1%、AB型14.3%と同様の結果が得られる。この場合も献血率が血液型間で変わらないという帰無仮説は3.2%水準で棄却される。

 O型が献血しやすいという特性は、血液型によって回答者の属性が偏っていたのではないか、という疑問をもたれる方もいるだろう。私たちは、年齢、性別、収入、学歴、健康状態、性格特性などを統計的にコントロールした分析も行ったが、それでもO型の人は他の血液型の人よりも献血する傾向が高いことが示された。

 献血は、純粋に利他的な行動である。献血をする人は、献血以外にも利他性が高く、利他的行動をしている可能性が高いのではないだろうか。O型の人は利他的なのだろうか。このアンケートでは、骨髄バンクへの登録、脳死の場合の臓器提供を同意するサイン、金銭的な寄付額といった利他的行動についての客観指標と利他性、一般的信頼、互恵性、協調性などの性格特性についての主観的指標についても質問をしている。実は、それらの利他的行動や主観的指標については、血液型間による統計的な差は存在しない。ということは、O型の人が献血をするというのは、O型が他の血液型よりも利他性が高いという理由ではないと考えられる。

3.血液型と輸血
  では、なぜO型の人は献血するのだろうか。私たちは、献血の特性に注目した。血液型によって輸血ができる範囲が異なるという事実である。O型の血液型は、O型以外の血液型に輸血できるから、O型の人は利他性の程度が同じであっても、より多く社会貢献したいと考えるのではないだろうか。もし、そうなら、「O型の血液型は、O型以外の血液型に輸血できる」という知識をもった人にしか、血液型による献血比率の差は観察されないはずだ。逆に、この知識がない人の間には、血液型による献血率の差が観察されないと考えられる。

 回答者の74%は、「O型の血液型は、O型以外の血液型に輸血できる」という知識をもっている。この輸血可能性の知識をもっている人だけで、分析するとO型が献血する割合は回答者全体で分析したときよりも少し高まり、統計的にも差が見られる。一方、「O型の血液型は、O型以外の血液型に輸血できる」と思っていない人たちだけで分析すると、血液型間では献血率の差が見られなくなり、O型の人の献血率は他の血液型の人よりも高くなくなる 。(注)

  O型の人が他の血液型の人よりも献血する理由として、O型の血液が他の血液型よりも恒常的に不足しているとか、他の血液型の人よりも健康であるという可能性もある。しかし、各都道府県別に各血液型の在庫率や季節変動や健康状態をコントロールしても、O型の人が献血する割合が高いという結果は変わらない。

 医療現場では、血液型がわからない緊急事態や特定の血液型の血液が不足しているという状況ではない限り、O型の血液が他の血液型の輸血に使われることはないそうだ。しかし、O型の血液型が他の血液型よりも広範囲に輸血に使うことができるということを知っているから、O型の人が献血をしているというのは興味深い。

 私たちが社会に貢献したいという気持ちをもっていた場合、自分の社会貢献の効果がより大きければ、より多くの社会貢献をするという可能性があるということだ。医師、弁護士、芸能人などで、非常に所得が高い人が、ボランティアで医療行為、法律相談、チャリティー活動をすることがある。彼らは、その活動をしていなければ、より高い所得が得られたという意味で、ボランティアの機会費用が高い人たちである。そうした人たちは、利他性の程度が他の人と同じであれば、ボランティア活動をする比率が低くなるはずだ。しかし、医師、弁護士、芸能人たちは、彼らがボランティア活動をすることの社会的影響力が他の人たちよりも高いということを認識しているからこそ、積極的にボランティア活動をしているのではないだろうか。

 寄付やボランテイア活動を活発にするには、その活動が社会に役立っていることを人々に認識させることが効果的だと、O型の献血行動から言えそうだ。

参考文献
佐々木周作,船崎義文,黒川博文,大竹文雄(2017)「血液型と献血行動:純粋利他性理論の検証」行動経済学会第11回大会報告論文。
縄田健悟(2014)「血液型と性格の無関連性 ―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―」『心理学研究』85, 148-156.

(注)AB型の献血率もA型、B型に比べると高いが、それもO型の献血率が高いのと似た理由だと考えられる。それは、造血幹細胞移植後の患者に輸血をする場合、溶血反応等の輸血副作用等を低減させるために、移行期間には赤血球輸血はO型を使用し、血小板輸血はAB型を使用するという場合があるからだ。

(2017年12月14日)


(日本経済研究センター 研究顧問)


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