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竹中平蔵のポリシー・スクール

2008年1月1日 地方分権の力学

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 政策決定は常に複雑なプロセスを経るが、とりわけ「権限を手放す」という内容の政策決定には困難が伴う。それを担当する立場の者にとって、自らの仕事がなくなることを意味するからだ。郵政民営化に担当官庁は強く抵抗したし、独立行政法人の民営化などに担当大臣が大反対している例も分かりやすいケースだ。

 典型的な事例として地方分権がある。分権を規定する地方自治法は国が決める法律であり、分権の在り方を決めるのも国の仕事だからだ。総論として地方分権には誰も反対しないが、各論になるとまったくと言ってよいほど事態は進展しなくなる。

 これまで地方の声を代表するものとして「地方6団体」が存在してきた。全国知事会、市長会、町村会、県議会議長会、市議会議長会、町村議会議長会で、各会長が集まり国と議論してきた。同組織は1993年の地方自治法改正により法律上、明確に位置づけられ、地方自治に影響を及ぼす事項に関し内閣または国会に意見書を提出できることなどが規定されている。

 ほかに地方の声を包括的に示す機関がないこともあり、しばしばこの仕組みが活用されてきた。経済財政諮問会議に6団体の会長が出席し、分権問題を話し合ったこともあった。関係大臣との会合が開かれたこともある。6団体の長と総務大臣との会合も年に数回は開かれている。地方にとっても国にとっても、重要な役割を果たしてきたと言ってよい。

 もっとも、包括的であるからこそ、なかなか難しい。知事会といっても、各知事の意見は大きく異なり、国との会合で会長が言うことが会の総体の意見かどうか分かりにくい場合もないわけではない。知事会の場合、事務局長が総務省の関係者ということもあり、「知事会の意見は総務省の意見」という声が聞かれることもある。

 各団体間の関係も微妙だ。例えば、自治体合併などが相次ぐ中で、町村の立場は大きく変化した。97年度末に2564あった町村は2006年度末には1044まで減少し、町村人口のウエートは10年間で22%から14%へ低下した。もともと財政力が強くない上に、全体としてのウエートが低下している町村の立場は、都道府県や大都市とは異なる場合が少なくない。一言で地方といっても、その中での調整は容易ではない。

 こうした問題を抱えながら、とにかく地方分権の在り方を議論しているのが現状だ。それに加え、何といっても最大の問題は、分権を議論する主体があくまで国であり、自らの権限縮小をもたらすような改革にはどうしても腰が引けることだ。官僚もさることながら、政治家も同様である。当たり前のことだが、地方自治法という法律は、国会で国会議員が決める。また地方への交付税や補助金配分などで、これまで国会の政治家は影響力を行使しようとしてきた。
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(日本経済研究センター特別顧問)

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