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中期経済予測 ( 第45回(標準シナリオ)中期経済予測 / 2018-2030年度 )

内需を支える投資へ転換を

「経済消耗戦」で海外環境は厳しさを増す

主査:前田 佐恵子
  主任研究員
落合 勝昭
  特任研究員
蓮見 亮
  特任研究員
田中 顕
  副主任研究員
佐藤 千尋 研究生(参議院事務局より派遣)
   
本田 幸久 研究生(日本経済新聞社より派遣)
   
山下 翔悟 研究生(アフラックより派遣)
   

2018/11/06

 足元の日本経済は、海外景気の好調などに支えられ、景気拡大を続けている。ただし、その持続性は疑問視されており、中期的な経済見通しは慎重にみる必要がある。
 力強い成長へと至らない要因のひとつとして、世界経済が冷え込むという外部要因がある。一部の国で保護主義的な政策が掲げられており、すでに短期的な影響も出つつあるが、さらに世界的な経済消耗戦にいたらしめるリスクがある。
 国内に目を向けると、高齢化や新しい技術の普及が進むにつれ、消費や投資の内容は変化している。特に医療や介護をはじめ人的サービスの需要が増えるため、人口が減少する中で生産性を劇的に引き上げられなければ、こうした需要拡大に応えることができない。そのためには、情報通信技術やロボティクスを中心とした新技術により、労働集約型の産業体質を変える必要がある。足元では、企業の収益拡大から省力化投資などの国内設備投資も上向いているが、収益の伸びと比べれば緩やかである。中長期的な成長が見込めないと考え、新技術や人的資本への投資に歯止めがかかるようになれば、人手不足で収縮していく経済状況から脱却することはできないだろう。
 今後、厳しい海外経済の環境が見込まれる中、国内の構造変化に対応した投資や人材の活用策が求められる。国内の需給バランスを整えることに注力することが、経済活性化へ向かう道となるだろう。

<予測のポイント(標準シナリオ)>


・成長力: 潜在成長率は、2020年代後半には0%台半ばに低下
・物価: 消費者物価上昇率は2020年代後半に1%に近づく
・労働: 雇用者報酬の伸びは1%程度、失業率は2%台で推移
・財政収支: 緩やかな改善にとどまり、2030年までに赤字を解消せず
・経常収支: 対GDP比1%台まで緩やかに低下
・産業: 製造業は内需先細りで外需頼みへ、医療・福祉では大幅な雇用増

中期予測は、来年3月に改革努力を織り込んだ「改革シナリオ」を公表する予定です。その際、今回公表する「標準シナリオ」については、本年12月に公表される国民所得統計の年次推計値などを踏まえ改定版を併せて公表する予定です。

 

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