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中期経済予測 産業ピックアップ(標準シナリオ)

2035年、輸出産業は先細り-インバウンド消費は2.5倍に-

生産性の伸びは限定的、経済は停滞

 

2019/12/06

 第46回中期経済予測(標準シナリオ、2019年11月11日公表)に基づき、個別産業が2035年までにどのような姿になるか、見通しをまとめた。産業全体のサービス化が進行する中で、国内製造業の成長は精彩を欠く。労働生産性は、主要な製造業ですら大きく伸びることは期待できない。自動車産業は生産拠点の海外移転が続き、輸出の牽引役にも限界が表れる。機械産業は、製造業の海外進出、新興国の発展に伴う輸出は期待できるが、中国などの新興メーカーとの競争は激しくなるだろう。エレクトロニクス(情報通信機器や家電など)は輸入品に代替され、生き残りすら厳しい。輸出は全体的に先細る。明るい材料は訪日外国人が35年には19年の3000万人超から7000万人に達し、インバウンド消費が2.5倍以上の11兆円超になることだ。小売業や観光業を支える。しかし産業全体を俯瞰すると、生産性の高い製造業が縮小する一方で、比重の高まる医療・介護など非製造業の生産性の伸びは相対的に低く、全体として生産性の向上がほとんど見られない経済に陥る。2035年の日本経済は、生産性の低い部門の割合が高まり、経済全体が停滞する「ボーモルの病」に陥っている可能性が高い。

図 主要産業の労働生産性は停滞する(1人当たり実質国内生産額)

(資料)総務省『平成12-17-23年接続産業連関表』、『平成27年(2015年)産業連関表』、経済産業省『延長産業連関表』

各論(会員向け全文に収録)
(1)自動車:世界市場は新興国を中心に拡大も、国内市場は縮小へ
(2)機械:内需で苦戦、外需は産業用ロボットがカギ
(3)エレクトロニクス:デジタル化の波、壊れる産業の垣根
(4)素材:外需で競争激化、現地生産進み国内生産は失速
(5)建設:人口減少により、住宅・非住宅ともに市場規模大幅縮小
(6)訪日外国人:2035年に7000万人を達成
(7)運輸:外需頼みが鮮明に
(8)小売:ネット通販、2035年に販売シェア25%
(9)金融:収益悪化とデジタル化背景に、銀行再編が進む
(10)情報通信:5G、あらゆる産業にインパクト、6Gにらむ動きも
(11)産業連関予測:製造業は外需頼みへ、医療・福祉では大幅な雇用増

執筆 主任研究員・小林辰男、田原健吾、特任研究員・落合勝昭(学習院大学特別客員教授)
研究員 松尾朋紀、研究生 石井康広(横浜銀行)、浦郷忠右(阪急阪神ホールディングス)
津久井大介(東日本銀行)、根本涼(日本経済新聞社)

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