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ニュースコメント

6月短観、すさまじい景気の悪化と底割れ回避の将来期待

―ウィズ・コロナ時代なりのイノベーションを―

主査:稲葉 圭一郎
  主任研究員 (短期経済予測主査)

2020/07/01

【6月短観のポイント】


日本経済研究センターは、日本銀行が7月1日に公表した「全国企業短期経済観測調査」の2020年6月調査について、そのポイントを整理した。概要は以下の通り。

  • 新型コロナ・ウィルス感染症の拡大を受けて、「最近」に関する業況判断DI(全規模・全産業)は▲31%ポイント。前回調査対比の悪化幅は過去最大とすさまじかった。
  • 前回調査では「良い」超であった非製造業(全規模)は、今回、大幅な「悪い」超へ。景況感の水準という意味では製造業(全規模)の方がより悪い。特に「自動車」は深刻だ。
  • ほぼ全ての業種にて「先行き」景況感の大幅「悪い」超が続くもとで、事業計画は下方修正。失業者の増加は不可避な情勢であり、来年度の新卒採用は減少に転じる見通し。
  • しかしながら、企業部門における将来期待は決して底割れしていない。設備投資は前年度対比で横ばい圏内の動きに止まる見込みであるほか、物価先般に関する中長期的な見通しも底堅い。この間、緩和的な金融環境が維持されている。
  • 外出自粛が需要減に直結したほか、そのもとでの新しい行動様式はモノ・サービスの既存の供給体制とズレをきたしている模様。国内外で、コロナ行動様式が模索されるもとで、この「ズレ」は、当面、持続・拡大するだろう。内外需ともに、持ち直しは脆弱なものになる。
  • もっとも、上記の模索に伴って発生する新種の需要を取り込むことによって、コロナ禍は「創造的破壊」への奇貨になり得る。「明るい将来」期待を醸成し、ウィズ・コロナ時代なりのイノベーションを促していくことが重要だ。官民連携型のポリシー・ミックスが必要となる。

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