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中期経済予測 ( 第47回速報/ 2020-2035年度 )

コロナ危機のビフォー/アフター~債務の急拡大などで経済水準は2%低下~

感染長期化、国際摩擦の激化は、恐慌招く悪夢のシナリオ

小林 辰男
  政策研究室長兼主任研究員
猿山 純夫
  首席研究員
落合 勝昭
  特任研究員

2020/07/01

 6月19日に国内の経済活動の制限は全面的に解除された。しかしコロナウイルス感染拡大前の経済に戻れるのか?第47回中期経済予測では、コロナ危機の前後で成長軌道がどう変わるか、3月に公表した第46回予測(前回予測)と比較した。またコロナ感染が長期化したうえ、昨今の米国と中国の対立が政治経済面にわたり激化し、世界恐慌を招きかねない「悪夢のシナリオ」についても検討した。標準シナリオでも経済規模(実質GDP)は前回予測に比べて約2%下振れするが、悪夢のシナリオの場合、8%近く下振れし、29年度以降は恒常的にマイナス成長に陥る。コロナウイルスの世界的な第2波感染の拡大防止や治療薬・ワクチン開発に向けた国際協力体制の確立、政治経済摩擦の緩和・解消に向けた国際協調を早急に確立することが、世界恐慌を避け、景気対策の特効薬になる。

図 悪夢のシナリオになると29年度以降、マイナス成長へ

(資料)国民経済計算年次推計、四半期別GDP速報、20年以降の予測は当センター。

 

総論1.標準シナリオ――2035年度の実質GDP、前回予測より2.2%下振れ
総論2.悪夢のシナリオ――世界恐慌の恐れ
総論3.まとめ――悪夢のシナリオの回避、経済維持の絶対条件

各論は会員限定
各論1.マクロ経済――投資縮小で生産力低下、残る傷跡
(1)コロナ危機の震度を計測する
(2)標準シナリオ――デフレ経済へ、家計「負の貯蓄率」間近に
(3)リスクシナリオ――「危機」長引き「悪夢」へ
各論2.産業予測 ――DX関連の産業に比重
(1)コロナ後もインバウンド関連は伸び悩み
(2)生産は産業用機械・機器、雇用は医療・福祉が支える
(3)コロナ危機後の産業地図――DXで脱オフィス、建設が沈下

※今回の予測では、20年4月から当センターへ派遣された研究生が、予測に関連したテーマを研修の一環としてBOXで掘り下げています。
BOX
1.テレワークで雇用慣行に変化の可能性~定着にはジョブ型、成果主義が不可避
  伊禮琢人、末永弘樹、原澤大地
2.DX加速なら原油安の恩恵薄く~GDP押し上げ0.3ポイント縮小も
  藤原和也、松尾俊哉、山本大輔
3.宿泊業は5年後も経常赤字~沖縄では総生産7%減も
  小澤智彦、杉本直隆、田中哲矢
4.台湾のマスク供給、官民一体のデジタル活用が奏功
  有田勇一、竹内直也、中原鉄二
5.有事の病床確保へ布石を 「病院借り上げ」に期待
  飯田航平、小野公嗣、丸山大介


※第47回中期経済予測は、2020年10月下旬~12月にかけて個別産業が被る影響や標準シナリオが示す経済停滞から脱却する方策、悪夢のシナリオを避ける政策提言を公表していく予定です。2021年3月にDX時代に適合し、経済成長軌道を再び描けるようにする改革案も取り込んだ最終報告をまとめます。

※英文で総論の要旨(マクロ経済予測部分)を掲載しました。

 

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