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中期経済予測 ( 第48回/ 2021-2035年度 )

米国経済の行方を読む
バイデン財政、経済の振れを拡大

ゼロ金利、早めの軌道修正も

猿山 純夫
  首席研究員
宮﨑 孝史
  副主任研究員

2021/06/15

 バイデン大統領は米国再建に向けた3つの計画を打ち出した。増税で財源を得ながら、政府支出を大幅に拡大する。市場が懸念する景気過熱や、物価や金融政策の局面変化につながる可能性はあるか、中期的な米国経済のパスを点検した。

<<ポイント>>
  1. バイデン大統領は、コロナ対策(Rescue Plan)、インフラ拡充と雇用創出(Jobs Plan)、教育や育児環境などの改善(Families Plan)の3計画を打ち出した。総額は10年間で5.4兆㌦。うち2兆㌦(米GDPの約10%)は目先の2年間に集中する。法人税率引き上げなどにより、10年間で2.5兆㌦の増収を見込む。
  2. 米議会予算局(CBO)の見通しを基に、成長軌道を試算すると、財政出動と同額のマクロ効果を想定する場合、21年のGDPギャップ(マクロの需給関係)は4%の需要超に振れる。コロナ対策の効果が一巡する23年には、同ギャップはほぼゼロに戻り、景気の振れが大きくなる。
  3. 需給のタイト化から個人消費デフレータの上昇率で測ったインフレ率は2%超えが続く可能性が強まる。FRB(米連邦準備理事会)は23年末までの緩和維持を掲げるが、政策金利は2~6%へ利上げ圧力を受ける。緩和を続ければ一層の景気上振れを助長する恐れもあり、ゼロ金利は早めの軌道修正を迫られる可能性がある。

 

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