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ニュースコメント

6月短観、第3回緊急事態宣言下でも続いた景況感の「レ」の字型回復

―21年度設備投資、反転攻勢へ―

稲葉 圭一郎
  主任研究員 (短期経済予測主査)

2021/07/01

【6月短観のポイント】


日本経済研究センターは、日本銀行が7月1日に公表した「全国企業短期経済観測調査」の2021年6月調査について、そのポイントを整理した。概要は以下の通り。

  • 回答時点を示す「最近」についての業況判断DI(全規模・全産業)は▲3%ポイントと前回調査から改善。第3回緊急事態宣言下でも景況感は「レ」の字での改善が続いた。「先行き」に関する業況判断DI(全規模・全産業)は▲5%ポイントと「最近」に比べて小幅な悪化。先行き警戒感は残っている。
  • 今回調査では製造業が「良い」超へ転化した。今回調査で「悪い」超となった製造業(大企業)は「繊維」と「造船・重機等」だけ。中国や米国を中心とする海外経済の持ち直しを受けて輸出・国内生産が順調に回復していることが背景にあると考えられる。景況感の改善幅も、製造業の方が大きい。改善が目立ったのは半導体関連、機械類、および(木材の価格高騰・品薄と整合的に)「木材・木製品」だ。
  • 雇用人員判断DI(全規模・全産業)は▲14%ポイントの「不足」超。「不足」超幅は前回調査対比で拡大した。非製造業の「不足」超は前回調査から小幅縮小(人手余りの方向)して▲18%ポイント。一方、前回調査で「不足」超に転じた製造業については、今回調査では▲7%ポイント。前回調査に比べて拡大した(人手不足の方向)。
  • 緩和的な金融環境が維持されているほか、物価全般に関する中長期的な見通しも底堅い。企業部門における将来期待は保たれてきた。このことが、21年度、設備投資におけるわが国企業の反転攻勢の基盤となっている。GDP統計と定義が近い「ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額(除く土地投資額)」の計画値(全規模・全産業)は20年度対比で9.3%。わが国企業は設備投資において反転攻勢をかける計画だ。

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