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ニュースコメント

9月短観、景況感回復は足踏みも、収益・設備投資計画は堅調

―財・労働市場はタイト化持続―

稲葉 圭一郎
  主任研究員 (短期経済予測主査)

2021/10/01

【9月短観のポイント】


日本経済研究センターは、日本銀行が10月1日に公表した「全国企業短期経済観測調査」の2021年9月調査について、そのポイントを整理した。概要は以下の通り。

  • 回答時点を示す「最近」についての業況判断DI(全規模・全産業)は▲2%ポイント(以下、%ポイント省略)と前回6月調査からごく小幅の改善。これまで続いてきた「レ」の字での景況感改善は足踏み。「先行き」に関する業況判断DI(全規模・全産業)は▲5と「最近」に比べて小幅な悪化。先行き警戒感は残っている。
  • 足踏みの主因は、第4回緊急事態宣言を受けて、非製造業の景況感が横ばいとなったこと。製造業は小幅改善。もっとも、製造業の中でも、自動車の景況感は、部品調達難に起因して大型減産が実施されるもとで、「悪い」超へ転化した。
  • こうした中でも事業計画は堅調だ。21年度の売上高、経常利益、および設備投資(含む土地投資額)の計画値は前年比伸び率で、それぞれ3.2%、15%、および7.9%。
  • 金融市場において緩和的な環境が維持されていることとは対照的に、他の市場では需給タイト化が進展している。インフレリスクがくすぶり始めている。
  • 財市場の需給について、大企業・製造業の「国内での製商品・サービス需給判断DI」をみると▲2となっており、供給過剰がほぼ払拭されている。これに整合的に、製商品在庫水準判断DIも3と異例の低水準に到達している。この間、資源・資材の調達に関連して、大企業・製造業の仕入価格判断DIをみると37と一段と強含んでいる。
  • 労働需給のタイト化も進んでいる。全規模・全産業の雇用人員判断DIは▲17と、前回対比で「不足」超幅が拡大した。製造業・非製造業いずれも同様だ。

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