一覧へ戻る
短期経済予測
(2022年1-3月期~2024年1-3月期)
ウクライナ侵攻があおるスタグフレーション・リスク
─戦争長期化なら23年度マイナス成長に─
2022/03/11
日本経済研究センターでは、2月16日公表の予測(22年度、好発進もスタグフレーションのリスクあり―ウィズコロナに向けて新たな行動様式や社会規範の構築を―」、以下SA189)を改訂した。本改訂版(SA189R)は、9日に公表された21年10-12月期の国内総生産(GDP)の2次速報値(2次QE)や最近の経済の動きなどを踏まえたものである。
【ポイント】
-
- わが国景気は民間消費の反動増に主導されて22年度央にかけて改善するも、その後は伸び悩む。21年度の実質GDP成長率の予測値は2.6%とSA189対比で-0.1ポイント。これは2次QEによる計数変更を織り込んだ微調整である。
- 22年度の実質GDP成長率の予測値は2.1%とSA189対比で-0.5ポイント。ゲタの効果を除くと0.4ポイントの下方修正である。ロシアによるウクライナ侵攻に伴って急上昇している鉱物・食糧資源価格の動向や西欧・ロシア経済の下振れを勘案した結果である。要因別には、民間消費:-0.2ポイント、設備投資:-0.2ポイント、在庫投資:+0.1%、および純輸出:-0.1ポイントである。
- 22年度の企業物価指数の前年比伸び率の予測値は9%。この予測値と21年10-12月期の財務省『四半期別法人企業統計』を踏まえて、企業収益予測を改訂した結果、経常利益の予測値は、前年比で21年度:30.1%、22年度:-31.9%、23年度:-3.2%。22年度減益幅の大幅拡大は設備投資の前年比伸び率を抑制する(SA189:3.9%→SA189R:2.3%)。
- 22年度の消費者物価指数の前年比伸び率の予測値は1.4%(GoToトラベル実施を仮定)。エネルギー価格による上押しは1.1%である。これは、消費者の間で家計防衛意識を高めるもとで、ペントアップ需要の発生を抑える。民間消費の前年比伸び率も下方修正である(SA189:3.4%→SA189R:2.9%)。
- リスク分析は下振れ優勢である。戦争の長期化や対ロシア制裁の継続・強化によって鉱物・食糧資源価格が高止まりとなる場合、23年度はマイナス成長となる。まさにスタグフレーションだ。
バックナンバー
- 2023/11/28
-
【説明会】第196回 四半期経済予測
内需伸びるも低成長にとどまる日本経済
—金融政策が転機を迎える中で世界経済は減速—2023年10-12月期~2026年1-3月期
- 2023/11/16
-
第196回<速報>内需伸びるも低成長にとどまる日本経済
―金融政策が転機を迎える中で世界経済は減速
2023年10-12月期~2026年1-3月期
- 2023/09/08
-
海外経済が堅調に推移する中、景気改善続く
―中国経済の下振れやグローバルな株価調整のリスクに注意
短期予測班2023年7-9月期~2025年1-3月期
- 2023/08/29
-
【web説明会】第195回 四半期経済予測
わが国経済、今年度2%成長に
—米欧の根強い物価高が招く海外経済の下振れに注意—2023年7-9月期~2025年1-3月期
- 2023/08/15
-
第195回<速報>わが国経済、今年度2%成長に
―米欧の根強い物価高が招く海外経済の下振れに注意
短期予測班2023年7-9月期~2025年1-3月期