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ニュースコメント

6月短観、外部環境悪化もコロナ禍からの内需回復で踏みとどまる

―今後、内需腰折れや米国景気後退のリスクに注意―

上野 陽一
  主任研究員
高野 哲彰
  副主任研究員
阿部 眞子
  研究員

2022/07/01

【ポイント】
  • 日本銀行が本日公表した「全国企業短期経済観測調査」(2022年6月調査)では、大企業・非製造業の業況判断DI(「最近」)が、前回(2022年3月調査)から2四半期ぶりに改善した一方、大企業・製造業は2四半期連続の悪化となった。非製造業では、まん延防止等重点措置が全面解除された3月後半以降の個人消費の持ち直しが景況感の押し上げに寄与したとみられるが、製造業では、ロシア・ウクライナ情勢を受けた資源価格・食糧価格の高騰や中国・上海の都市封鎖などによるサプライチェーン混乱の影響が大きい。
  • 大企業・製造業の業況判断DI(「先行き」)は、上海の都市封鎖の解除を受けて、半導体など部品の調達難が緩和していくとの期待から、最近から小幅に改善した。ただし、部品調達難の解消までには、まだまだ時間がかかる蓋然性が高い。
  • ロシア・ウクライナ情勢を受けた資源価格・食糧価格の高騰は、幅広い業種で仕入価格判断DIの上昇をもたらしている。水準をみても、リーマン・ショック前の2008年を上回り、非製造業では既往ピークとなっているほか、製造業では1979年~1980年に発生した第二次石油危機以来の水準にまで上昇している。
  • 事業計画(全規模)について、2022年度の売上高・経常利益をみると、製造業は、円安の進行が売上高・経常利益の押し上げに作用するものの、資源価格高騰によるコスト上昇の影響が大きく、増収・減益となる見通し。一方、非製造業は、同様に仕入価格の上昇が重石となるものの、個人消費のコロナ禍からの持ち直しが続くとの期待から、増収・小幅増益となっている。
  • 2022年度の設備投資額(全規模、ソフトウェア・研究開発を含み、土地投資額を除く)は、製造業・非製造業ともに前年比二桁増と大幅に増加する見通し。例年、6月調査は強めの内容となる傾向にあるものの、統計開始以来で最も高い伸びとなっている。
  • 今回の日銀短観で確認されたように、コロナ禍からの内需回復はわが国の景気を今後も下支えすると考えられるものの、資源価格の高騰が続き、海外への巨額の所得移転が求められる状況が変わらないなかで、世界経済のエンジンである米国経済が大きく減速するリスクもある。資源価格高騰がわが国の内需へ与える影響の大きさや米国をはじめとする海外経済の動向を、これまで以上に注意してみていく必要がある。

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