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短期経済予測
(2022年7-9月期~2024年1-3月期)
海外次第の景気回復持続、米労働市場が鍵
─最大のリスクである米欧景気後退の確率を新たに試算、現状は30%─
2022/09/08
【ポイント】
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- 日本経済研究センターでは、8月15日公表の予測(「景気は「戦後最大級の難局」で薄氷の回復―米欧が景気後退ならわが国への波及避けられず―」、以下SA191)を改訂した。本改訂版(SA191R)は、9月8日に公表された2022年4~6月期の国内総生産(GDP)の2次速報値(2次QE)などを踏まえたものである。
- 4~6月期実質GDP(2次QE)は前期比年率+3.5%と、1次速報の前期比年率+2.2%から上方修正された。需要項目別にみると、GDPの上方修正の主因となった民間企業設備投資は前期比+2.0%と1次速報の+1.4%から大きめの上方修正となった。
- SA191Rでは、海外経済成長率の見通しをSA191から不変とした。海外の国・地域についても4~6月期GDPが改定・公表されたことなどを反映したものの、各国・地域の修正幅が大きくなかったためである。具体的には、海外経済成長率の見通しは2022年が前年比+3.1%、2023年は同+2.5%としている。
- 4~6月期実質GDP(2次速報)の改定幅は幾分大きめとなったが、海外経済成長率の見通しを不変としたことから、国内経済の見通しはSA191から大きくは変更していない。すなわち、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵略、グローバルな物価高騰・景気減速などの逆風の中でも、わが国の景気は個人消費や設備投資などの内需主導で回復していくとみている。実質GDP成長率は、2022年度が前年比+1.7%、2023年度は同+1.3%と予測している。
- 先行きの不確実性は異例に高く、景気下振れのリスクがきわめて大きい。主なリスク要因は海外、とりわけ、米国に起因している。米国景気が軟着陸できるかは労働市場における効率性の回復が失業率の悪化をどの程度抑制するかに依存している。
- 失業率の動向に着目したFRBの既存研究等を参考に、米欧などの主要国が全体として景気後退する確率を新たに算出した。具体的には、便宜的に景気後退を1年間で失業率が1%ポイント以上悪化した場合として、米欧など主要国の経済規模で加重平均した失業率やインフレ率などを用いて試算すると、70年代以降、局面変化をかなり正確に予見でき、現時点での米欧主要国の1年後の景気後退確率は30%程度となった。
- 先行き米欧経済が景気後退した場合には、輸出の停滞などを通じてわが国の景気後退入りもほぼ確実であるため、今後も海外経済の動向を注意深くみていく必要がある。
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